09/7/10 『十二夜』と鞴座ライブ

     

贅沢な一日。
今日はダブルヘッダー
第1ラウンドは道頓堀の松竹座で『十二夜』を観る。


劇場の前でばあばあ(義母)と待ち合わせる。
ヒロもばあばあも松竹座は何度も来ているが僕は初めて。
そう、初の歌舞伎、初の松竹座、初のNinagawaでした。
歌舞伎の劇場ってこんな感じなのか。
ちょっとした高級ホテルのロビーみたいだと思った。
宝塚大劇場もこんな感じなのだろうか。
4200円の3階席。
でも舞台全体が見渡せるし、段差があるので前の人が邪魔になることはない。
意外にも見やすい。
ただ花道はわずかしか見えない。
1階席の3分の1以下なのだから文句は言えない。
平日の11時開演だが客席はほぼ埋まっている。



幕が開く。
観ているはずの自分たちが舞台にいる。
おお、と歓声が上がる。
鏡だ!
やおら、満開のしだれ桜が照明に浮かび上がる。
子供たちの英国風古謡(讃美歌らしい)のコーラスが流れる。
桜の木の下で3人の少年が歌っている姿が見えてくる。
え? これは映画か?
と思っていると花道から左大臣が登場、歌舞伎の世界となる。

    http://www.youtube.com/watch?v=qYpyTgHG6DM
    



続けざまに舞台装置に圧倒される。
船が難破する場面。
菊之介の一人二役、早変わりに歓声が沸く。



登場人物が揃ってあらすじが見えてくる。
公家言葉も聞き慣れてくる。
物語の世界にじわじわと引き込まれていく。



幕間に近鉄で買ってきた弁当を食べる。
こういうのも歌舞伎の楽しみなのか。
僕は鰻弁当。
日本酒でもボトルに詰めて持ってくるんだった。



後半、笑いどころ満載。
81歳のばあばあがケラケラと大笑い。
ちょっと恥ずかしいが満足していることにこちらも満足。
独り言も多い。
翫雀(かんじゃく)はお父さんにそっくりやなあ」
恋心を打ち明ける場面ではタメ息をついたりする。
な、恥ずかしいやろ、とヒロが耳元で囁く。



シェークスピア喜劇だけに役のネーミングも面白い。
ヴィアオラが琵琶姫、オリヴィエが織笛、オーシーノが大篠左大臣
フェステが捨助、マライアが麻阿になる。
悪だくみをする麻阿を演じるのは眼鏡堂氏絶賛の亀治郎
確かにオイシイ役どころである。
ホフク前進には笑った。

      


ヒロはオリヴィエ(織笛姫)役の時蔵が腑に落ちなかったようだ。
「ちょっと歳とり過ぎの感じやわ。声もおばさんやし…。」とのこと。
亀治郎がオリヴィエやったらええのに、と言う。
でもまあ、マライア(麻阿)のがオイシイしね。
それに亀治郎がやったら菊之介のヴァイオラ(琵琶姫)とタイプが被るだろうなあ。


想像以上の舞台に大感激。
役者を見に行く、という気持ちが分かる気がした。
27日までやってる。
一人で来ようかな、なんて悪巧みを考えたりして。


…二人と別れてYTVへ移動する。
途中、心斎橋のエディー・バウアーに寄る。
2000円のクーポン券があるのでシャツでも買おう。
ポロシャツ3500円が2枚で5900円。
クーポン使えば2枚で3900円になる。
一枚でいいんだけどなあと思いつつ2枚買ってしまう。
買ってから納得出来ない思いが残る。
一枚でよかったのではないか。
1500円だったはず。


ティン・ウィッスルの練習をしようと思ったがパートナーのセルジオが仕事中。
雨が降りそうな黒い雲の下、大阪城公園の大川べりで独酌ならぬ独練。
YTVに出るが特に用もない。


…第2ラウンドは東淀川で『鞴座(ふいござ)』のライブ。
今日の道連れはA木、通称キング。
開演が20時と遅い。
1時間ほど梅田の駅前ビルの地下で立ち飲み。
山長梅田で「帰山」のにごりを飲む。
茶碗サイズの冷やしそうめんを食べて締める。
関西ではそうめんは椎茸と干しエビの出汁で食べるのが主流。
夏の夜、飲んだあとには素麺が欲しくなる。


新大阪から京都方面に一駅。
東淀川駅に初めて降り立つ。
新大阪の隣、すぐそこにビル群が見えているのに駅前はローカルな風情。
ちょっと薄暗くて地方都市に来たような錯覚さえする。
良さそうな居酒屋やバーもある。
梅田じゃなくてこっちで飲めばよかったな、この意見にキングも賛同。
でも、もうライブが始まる。


会場はオッピドムという店。
オッピドムはケルトの城塞都市の名前らしい。
アイリッシュパブというより街の喫茶店という感じ。
店の看板がわりに白いカヌーが飾ってある。
すでに金子鉄心さんらもステージで準備している。

    
 

ジャズのライブとはかなり客層が違う。
みんなオレンジジュースやアイスティーを飲んでいる。
真面目そうな若いカップルや女性の一人客。
オーディナリーピープル。
僕らはタラモアとジェイムソンを注文。


『鞴座(ふいござ)』は鉄心先生の笛、イーリアンパイプス、
岡部わたるさんのギター、藤沢祥衣さんのアコーディオンコンサーティナの編成。
湿気に弱いイーリアンパイプスの音がうまく出ずに鉄心さんが悪戦苦闘。
途中から調子を取り戻す。

ケルトあり、ユダヤ系のクレズマー音楽あり、ジプシー系あり、時代劇系あり(?)
なかでもフランスのミュゼットという音楽が楽しい。
フランス製のアニメーション映画のバックに流れてそうな哀愁あるメロディー。
アンコールはポルカで盛り上がる。
2時間、ワールドミュージックを堪能する。

     



アコーディオンは背の高い藤沢さんという女性。
ステージでコンサーティーナという小型のボタン式アコーディオンを弾く。
和音も出せるらしいが、主に主旋律を弾くのに向いている楽器らしい。
いい音がする。
とても小さい。
ハンドボールくらいだろうか。
僕は持ち運び出来る小さな楽器が好きらしい。
いつか雲海が埋め尽くす山の頂で音楽を奏でるのが夢だから。
持ち運び出来るということが必須条件。
ギターを担いで剱岳には登りたくない。


帰りがけ、藤沢さんにコンサーティーナを見せてもらう。
本当に小さい。
デイパックに十分入る大きさだ。
ちょっと弾いてごらんなさい、と言葉に甘える。
いいですね。
アコーディオン類の良いところはすぐに音が出るということだ。
これっていくらくらいと下世話な質問。
5万から6万ほどらしい。
ちなみに藤沢さんのはドイツのホーナー社製、ハモニカのメーカーだ。


コンサーティーナです。

   


音はこんな感じ。
クロマチックのハーモニカに近いかも。

     http://www.youtube.com/watch?v=H4Y706A4TsY
     



奥田英朗さの最新エッセイ『用もないのに』(タイトルが秀逸)を読了。
この本をくれたA部氏は「フジロック・フェス」のリポートを推すが、
僕は絶叫マシン“ええじゃないか”体験リポートの切れ味を買う。
とても可笑しい。
何度読んでもニヤニヤしてしまったり、吹き出してしまったりする。
このおっさん、ちょっと偏屈な独身男のつぶやきを文章にするのが上手い。
寂しがり屋で何かをするとなると各社の編集者を呼び出したりする。
無理矢理つき合わされてる人もいるみたいだ。
絶叫マシンなんて死んでも乗りたくない人もいるだろう。


 乗車ゲートまであと10メートルというところで、E隊員が青い顔で
 「チケットを落とした」と言い出し、列から離れようとした。
 「逃げる気か」と一斉に非難。
 みなに羽交い締めにしてポケットまさぐると、ちゃんとチケットが出てきた。
 大人がすることとは思えない。
       (世界一ジェットコースター「ええじゃないか」絶叫体験記 より)


中日ファンであるところも同郷の僕としてはポイントが高い。
誇らしい、というわけじゃない。
ちょっと恥ずかしいと思わせる自虐がいいのだ。

用もないのに

用もないのに