09/7/18 奄美のハブと大雪山の遭難 

Yahooのニュースのヘッドラインに『奄美で過去最大級のハブ捕獲』とあった。
写真を見ると、なるほど凄い、2.26メートルで3キロを越える大物。
ニシキヘビみたいなハブだ。

     



ハブを持っている人に見覚えがあった。
この人は…会ったことがある。
奄美観光ハブセンターの所長で中本さんと言う。
僕はこの人とハブ獲りの取材をしたことがあるのだ。
1986年だったか…朝日放送の『米朝・メイコの面白日本』という番組。
(調べるとわずか7ヶ月で視聴率低迷のため打ち切られていた…!)
与論島から徳之島、奄美大島と島を渡りながら撮影した。
中本さんは和歌山出身、南の島にハブという毒蛇がいることを知り、
俺がそいつを退治してやろうと奄美に移住した、と話していた。
岡本太郎っぽい少し狂気を宿らせた語り口と鋭い眼光が印象に残った。
現在78歳だから取材当時は55歳だったんだなあ。
僕は29歳、業界経験3年の若手ディレクターだった。


それにしてもこのハブ、三角形の頭をこんなに自由にさせて大丈夫なのだろうか。
眠ってはいないような気がするのだが…毒牙を抜いてんのかな?


…北の山では遭難のニュース。
トムラウシ美瑛岳で10人が亡くなった。
ちょうど去年の今頃にヒロと同じ山域の富良野岳に登った。
北海道にしたらちょっと蒸し暑い日だった。
稜線は風が強かったが概ね好天に恵まれた。
凍死なんて想像も出来ないような美しい花の山だった。
写真の奥が美瑛岳方面、右手にトムラウシがある。

     



新田次郎に『気象遭難』という恐ろしい小説がある。
山の天気は時として「偽りの顔」を見せるので判断ミスだけでは片付けられないが…。
僕も判断ミスで遭難一歩手前になったことがある。
今回、ガイドの判断とか、ツアー登山の問題点などが取り沙汰されている。
この悲惨な気象遭難は人災なのか?
いずれ捜査が入り、真相が明らかになるだろう。


僕が個人的に気がついたことを少し。


ツアー登山は年配の人が圧倒的に多い。
最近、そこら中の山で迷惑だなあと内心思いながら狭い登山道をすれ違う。
たいたい20人くらいで、一番前に一人、最後に一人必ずガイドがついている。
困るのは僕らの前にツアー登山のパーティーがいる時。
渋滞を起こしてしまうのだ。
狭い水路に大型タンカーが入り込んでしまったような感じ。
山は僕の私物ではないので文句は言えないがストレスが溜まる。


5年か6年前の秋、西穂高に登った時のこと。
平日なのにツアー登山の客と山小屋がいっしょになり辟易した。
翌朝、ツアーより早出をして山頂の登った。
帰り道にツアー客とすれ違うこととなった。
西穂高の稜線はやせた尾根が続く。
特に独標から先は人がすれ違うことの出来ない箇所が多い。
両側はスッパリと切れ落ちて踏み外せば命は無い。
僕らはストレスと怒りを感じながらすれ違い場所で何度も待った。
「こんにちわ」という定番の挨拶もしだいに面倒になってきた。
そんな時、目の前でツアー客の一人がフラっとなってバランスを崩した。
60過ぎの老婦人だった。
危うく落ちそうだったがその場に座り込んでなんとか難を逃れた。
その直後、30過ぎの若いガイドがその登山者に言った。
「戻りましょう。危険です。」
老婦人は泣きそうになってその命令に抗った。
「せっかく、ここまで来たのに…イヤです」
「いや、帰りましょう。人をつけます。何度もバランスを失ってます。
 この先はもっと危険です。帰りましょう」
ガイドは毅然と言った。
老婦人はその勢いに気圧されたか命令に従った。


その時は可哀想な気もしたが、ガイドの判断は正しいと思った。
あんな状態ではこの先、かなりの確率で滑落を起こす。
起こさないかも知れないけど、ツアー登山の責任はガイドにあるのだ。
あのレッドカードはイエローの累積だった。
それを見過ごして登らせたらガイドの責任になる。


あのときのガイドの毅然と今回のガイドの判断を考えてみる。
ここからは僕の勝手な想像。
あのレッドカード退場は5年以上前のことだ。
登ることの出来なかった客はどうしただろう?
ツアー会社にクレームをつけたかもしれない。
あのガイドは問題がある…と。
ツアー会社は、いやガイドの指導は正しかった、と言っただろうか。
邪推するとそんなガイドとは契約しないということになったかもしれない。
お客様の満足度が第一です。
加えてこの不況、中高年登山は数少ないマーケットだ。
ガイドは悪い意味で淘汰されたのではないか。
(勝手な推測です)
今の企業や雇用の状況から見るとそういう流れになったとしても不思議はない。
みんなそういうのが良くない、と思ってはいるのだろうけど、その流れは変わらない。


今回のケース。
安全を考えればヒサゴ沼の避難小屋にもう一日とどまるべきだった。
ガイドの権限はどこまであったのか?
帰りの飛行機を変更、キャンセルさせても中止にする判断が出来たのか?
遭難した人の中には出発したくないと思う人もいたのではないか?
集団であることが安全ではなく逆に危険な要素になる。
ツアー登山は無謀な行軍を続ける帝国日本の軍隊のように思えてくる。
失敗した人を一方的に批判するのは簡単だ。
懸命に生き延びる努力をしたのだと思う。
もしかしたら適切な判断の末に運悪く最悪の結果になってしまったのかもしれない。


思うのだ。
自分で計画せずに地図も読まずにただついていくだけの山登りを楽しいと思わない。
やっぱり個人の責任で登るものだと思う。


疑問点をいくつか。
ツアーはヒサゴ沼の避難小屋泊まりだった。
だとしたら寝具としてシュラフやカバーを持っていなかったのだろうか。
凍死した人は体中に持っている衣類を巻きつけていたらしい。
その時にシュラフシュラフカバーに入るという手はなかったのだろうか。
記事だけ読むと北海道の山を縦走するにはあまりに軽装な感がある。


年配者は気温の変化に弱い。
最近、気がつくことに、電車に乗り込んで、暑い暑い、と言う人は年寄りが多い。
コンサート会場や映画館でも同じだ。
おそらく体温調節能力が衰えているのだと思う。
いつかはたどる道なのなあ、と思う。
実は今だってその兆しはある。
外気と空調を出たり入ったりするのが若い頃より辛い。
明らかに体力を奪われていくのがわかる。
山歩きをする体力はあっても年配の登山者は弱い存在なのだ。


…2日ぶりにジョギング。
やっぱ暑いなあ、汗が流れ落ちる。
気持ちいいと言えば、気持ちいいな。
でも、無理は禁物。


jog&Podcast
町山氏が『ソラヤ Mへの投石』というイランを舞台にした映画を紹介する。
http://podcast.tbsradio.jp/kirakira/files/20090710_machiyama.mp3
話を聞いただけで予告編は見たくない、と思うほど悲惨な内容。
でも目を背けてはいけない。
これは事実なのだ。
アフガンを舞台にした映画『君のためなら千回でも』でも石打ち(投石)の場面があった。
あれも正視できなかった。
女性虐待はイスラム原理主義の国家だけではない。
つい先日の新聞記事で読んだ。
パキスタンでは女性に強塩酸をかけて顔をつぶす犯罪が急増している。
そのほとんどが起訴されないのだと。
日本でも女性史というのはつい半世紀前までは悲惨だった。
いま少しくらい威張っていても我慢するか、と思う。