ぷよねこ減量日記 2009/5-2016/1

旧ぷよねこ減量日記です。2016年1月に新旧交代してます。

09/9/8 『深夜食堂』な風景

なかなか早起きは出来ない。
走り始めたのは10時過ぎだった。
もう暑いかな?と思ったがそうでもない。
9月に入って毎日運動も毎日英語もかろうじて持続している。
でも体重は増える。
昨日のラグ酒ビール&鶏唐揚げが確実に効いている。


NNNドキュメント『5000人のカルテ』(8/23放送)をDVDで見る。
世間に忘れられかけている切実なメッセージを伝える番組。
大阪此花区に住む被爆体験のある老医師の「いま」の仕事を淡々と描く。
世代の違う“戦争を知らない”医者には患者たちの被爆体験はなかなか理解されない。
老いた患者たちにとって此花診療所は唯一の拠り所となっている。


原爆症の認定を待つ患者と毎回交わす言葉。
「(厚生労働省から)連絡あった?」「いやありません」
小津映画のような日常になっている。


映像はとにかく地味です。
見事なまでの地味っぷり。
老医師も、患者も、此花の路地の風景も、映像の心拍数が低い。
(実際は老人ばかりなので心拍数も血圧も血糖値も高いのだろうけど)
現実は地味なのだ。
被爆者24万人、憤怒の思いはあろう。
番組の中の彼ら彼女らは当然のように年老いている。
もう誰も叫んだりしないし、悲しみに号泣したりもしない。
すすり泣き、堪え忍び、あてのない朗報(と言えるかも定かでない)を静かに待つ人生がある。
触れば火傷するくらい熱かった怒りを戦後64年の歳月が枯れさせようとしている。
その時間はあまりに重い。
信念の人であるはずの老医師のたたずまいには悲しみと諦らめさえ感じてしまう。
遠くない未来にこの世からいなくなる。
でも、残された時間を生き続けなければならない現実。


消えつつある、声が低く消え入りそうなメッセージをすくい取った番組、
なーんて言うとメディアの奢りになるのだろうな。
「先生、もう死にたいです」と訴える老女。
そのシーンのあとに挿入された古びたカルテの書棚にタイトルの意味を知る。


映画館で見た『花と兵隊』『嗚呼 満蒙開拓団』でも思ったこと。
当事者と今を生きる人々との隔離が甚だしい。
知らないことは悲しい、と思う。
『5000人のカルテ』、地味で短いけれどいいドキュメンタリーでした。
田口ランディがエッセイのあとがきに書いていた。
良いことはあまり目立たないものです、と。

     


…ニュースデスク3連投の3日目。  
今はデスクは熟練のベテラン記者でなくとも出来るシステムになってしまった。
これは違うよなあ、と思ってもニュースの構成に口出しにくい現状。
責任も持たなくともいい、とも言える。
介入すれば事をややこしくするだけだ。
素材送りの作業を代行してくれるおじさん。
楽になれば僕なんぞの怠け者は低きに流れる。
慣れ落ちて久しい。


…夕方、弁当を買いに出る。
弁当屋で注文して時間つぶしに京橋裏路地の『岡室酒店直売所』へ寄る。
瓶ビール小瓶、サッポロ黒ラベルが嬉しい。
いつものように混み合うカウンターで飲んでいると若い女の子が入って来る。
大将が他の客に場所を空けるように言い彼女は僕の隣に立つ。
髪を染め花飾りをつけ、派手めの化粧、場所がらフーゾクの子だろうか。
どぶねずみ色の中年酔客で埋まる店では当然のように注目を集める。
常連らしい。
大将が気軽に話しかける。
間近からチラリと見る。
化粧は濃いが整った顔立ちだ。
表情にも話し方も下品なところはない。
カワイイ。
好感度アップ。
「ワタシ今日が誕生日やねん」
「いくつになったん?」と大将。
「…22」
「若いなあ、ワシの半分も生きてへんやん」
グラスに赤ワインを注がれ大将と乾杯をする。


程なく、熱々のおにぎりが2個、皿にのって出てきた。
「中身なんにも入ってないよ」と大将。
パリッとした海苔が巻かれただけの塩むすび。
昨日、You-Tubeで見た『かもめ食堂』に出てきたのと同じおにぎりだ。
「誕生日にはこれ食べようと決めててん」と嬉しそうに彼女が言う。
かぶりつくパリっという音が聞こえる。
大将、僕にもおにぎり!
なーんて思わず頼みたくなる。
(頼まなかったですよ)
ホカ弁屋で鮭弁当をすでに注文してるのにね。
こんな風景、どこかで見たな、と思った。
漫画の『深夜食堂』だ。

深夜食堂 4 (ビッグコミックススペシャル)

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