09/9/23 『羆撃ち』にあわや落涙…!

     

写真は9月17日に撮影した南志賀高原の山田牧場の全景。
見事な秋晴れ、牧場を見下ろす尾根、路肩に車を停めティン・ウィッスルを吹く。
『The Last Rose of Summer(庭の千草)』を吹こうとしたら…変な音が鳴る。
恥ずかしくなって止めた。

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今日が秋分の日、昨日が国民の休日、これでシルバーウイークは終わり。
薄曇り、久々に湾岸5キロ走る。
日米首脳会談に八ッ場ダム問題、変わること、変えることの本質を問われている。
体重72.60キロといきなり1キロ減る。


…甥の出場する高円宮杯U18サッカーはベスト16激突。
グループF2位の米子北はグループB2位のジェフ千葉と対戦する。
場所は東京、夢の島にあるサッカー場。
もちろんテレビ中継などないから情報は応援に行ってる父兄の連絡網のみ。
前半、米子先制!
ジェフがゴール、同点。
前半終了。
刻々とヒロの携帯にメールが届く。
スタンドで応援するよりスリリングだ。
メールが着信を知らせるたびにドキッとする。
後半開始10分、米子が勝ち越し!
そこから40分以上メールが来ない。
どうなったんだ?
とっくに試合は終わってるはず。
延長戦突入か?
メール着信。
2対1、米子北勝った!


眼鏡堂風に言うなら、Sweet16からElite8に進出。
次は10月3日、Final4をかけた準々決勝。
相手はインターハイチャンピオンの前橋育英を破った三菱養和SCだ。
場所は茨城ひたちなか総合運動公園。
行く?


これでグループFは決勝ラウンドに残った3チームともベスト8に残った。
前評判の“死のグループF”という評価は正しかったようだ。
でも、戦前の評価は、初陣の米子北にとっては不運、可哀想だが…、というのが大方の見方だった。
そういう評価を覆しての快進撃、イレブンは気持ちいいだろう。
父兄の間でも、恥ずかしい試合さえしなければ、という感じだったのだ。


…午後遅く大阪へ出て散髪。
南森町のハニーミツバチ珈琲で読書。
久保俊治『羆撃ち』(小学館)を読了。
悲しみのラスト10頁に思わず落涙しそうになる。
僕の今年ベスト5、いやベスト3にノミネート必至の名ノンフィクション。


よしむらで独酌、と思ったが天満在住のガハクを呼び出す。
6時半から9時半まで長逗留してしまう。
2日断酒したあとの日本酒は旨し。
天野酒の冷、田中農場の温、三重錦の温、鶴齢の冷。




久保俊治『羆撃ち(くまうち)』を読みたいと思ったのはジョーのブログだった。
このノンフィクションの著者は標津町に住んでいる。
中標津に隠れ家(本人は避難所と呼ぶ)佐々木譲とは親交があるのだそうな。
ジョーは著者の久保俊治を次のように紹介している。


 著者はアメリカのプロ・ハンター養成スクールを最優秀で卒業したひと。
 プロのハンターとは、大自然の中でアマチュア・ハンターのガイドもつとめるということである。
 狭い意味での狩猟技術だけではなく、乗馬やキャンピングも含んだアウトドア・ライフ全般に
 ついての高度なスキルも求められる。
 著者は、現在は知床半島で肉牛を飼いながら、羆を撃つ。
 ただし、ハンティング・ガイドはやっていない。61歳。
           (「佐々木譲の忘備録」http://sasakijo.exblog.jp/8265776/より)

            

若い頃、猟だけで生活したいと思い立ち山に入る。
たった一人で何ヶ月も山でテント暮らし、時にビバークしながら羆を追う。
羆や鹿や鳥を撃ち、獲物をその場で解体し、自ら喰らい、一人で街へ運び現金に換える。
作り話ではない。
羆との真剣な命のやりとり、淡々とした山の暮らしの描写が素晴らしい。
凡人では体験できないことを綴る。
こういう本こそ“読む価値”があると思う。
今年春の『まぐろ土佐船』去年秋の『あの戦争から遠く離れて』を読んたときもそう思った。
内容をジョーが的確に説明してくれている。
これを読んで読みたい!と思った。


 本書の前半は、プロのハンターが生まれるまでの、ストイックな自己訓練と修行の物語、
 と要約できるだろうか。日本のアウトドア・マンにありがちな高慢なご託宣はない。
 手放しの野性讃歌も、都会人に対する侮蔑も、銃器に対する過度のフェティシズムもない。
 そうした意味では、日本では異色のアウトドア・マンの半生記である。
 しかも、アメリカの学校に入るぐらいのひとだから、著者は民俗学的な「猟師」ともちがった、
 いわば「近代人のセンスを持った」ハンターである。


 後半は、愛犬との心の通い合いの物語。
 前半が男っぽい物語としたら、こちらのパートは涙を誘うストーリー。
 この部分だけファミリー向けの映画にもできそうだ。


そう後半、孤高のハンターに生涯の相棒が出来る。
牝のアイヌ犬、名前はフチ。
アイヌ語で火の神を意味するのだったか。
厳しく訓練されフチは理想的な猟犬となる。
著者がフチにそそぐ愛情が行間からあふれる。
読んでいる僕もフチがたまらなく愛おしくなる。


著者がアメリカへ武者修行に出る。
その間、フチは小樽の両親の家で主人を待つ。
9ヶ月ぶりの再会。
そのシーンがたまらない。


 乗り継いで到着した千歳の空港には、父と母がフチを連れて迎えに来てくれていた。
 九ヶ月ぶりに会うフチ。毛づやから見ても元気そうだ。
 座ったままただジッと見つめている。信じられないものが目の前にいるという感じだ。
 しばらくの間見つめ合う。
 ワタシは片膝をついて座り、右ももを軽く叩く。
 フチはスッと立ち上がり、するすると脇に来て座る。
 次の指示を待つように、ジーっと食い入るように顔を覗き込む。
 フチ元気だったか。
 声をかけ頭をなでてやる。目に光が走り、耳に力が入りピンと張る。
 フチが突然に弾けた。
 堪えに堪えていたものが飛び出すように、身体の中程から曲げるように折れて、
 千切れてしまうかと思うほど尾を振りながら、胸に飛びついてきた。
 ワタシのまわりを駆け巡り、飛びつき、顔をなめる。
 寝転び腹を見せたかと思うと、飛び起きワタシの足下を走り回る。
 嬉しさをどう表してよいかわからないというように、
 またすぐにいなくなってしまうのではないかというように、
 まだ信じられないというように、
 胸に飛びつき、少しの間ジッと私の匂いを嗅ぎ、確かめ、また走り回る。 
 何回も何回もそれを繰り返す。
                  (久保俊治『羆撃ち』より)


     


フチとの再会、そして思わぬ永遠の別れ、あわや落涙。
人生で一冊、入魂、渾身の本を読んだ、という充実した気分になる。


アイヌ犬とは小型の白い和犬。
本の表紙のイラストにある。
フチはじっとこちらを見つめている。


ちなみにソフトバンクのお父さんはアイヌ犬だそうです。