09/10/10 神戸 元町から二宮まで.

気持ちよく秋晴れ、10月10日は特異日なのだった。
連休作るために「体育の日」をずらすから運動会が雨天中止になる。
今から45年前の今日、千駄ヶ谷の空は快晴、ジェット機が青空に五輪を描いた。
2016年の東京五輪は泡と消えたが、1964年の東京五輪は永遠なのだ。


香櫨園浜、夙川の河口に冬鳥が集まり始めた。
先陣はユリカモメだろうか。
気持ちいいジョギング日和。


ボストンが連敗!
打てないものなあ…。


     


神戸元町の夕暮れ時、F島Dai氏と待ち合わせ『八島食堂中店』へ行く。
参考ブログ:http://oyayo.seesaa.net/article/115947207.html
キリンラガーの大瓶とネギ入り玉子焼き、レバ炒め、かしわ豆腐。
酒好きの先輩たちが一日の終わりに集う賑わいの酒場。
相席したテーブル、老人の二人連れが笑顔でビールを飲み交わす。
差配するのは60代、いや70代かな?のおばちゃん二人。
中村よおが『肴(あて)のある旅』に書いている。


 姐さんたちは、客と無駄な話をしない。客の方も機嫌が悪いわけではなく
 むしろ反対なのだが、黙って座って、隣に座った人と話すようなこともほとんどなく、
 家でまず観ないテレビの野球や相撲を横目で眺めながら飲むことが出来る幸せ。


『八島』のベスト環境は、爽やかな夏の日、外はまだ明るい時間帯。
涼風が暖簾をゆらし、斜めに日が差し込む午後5時、店内は5割の混み具合。
テレビでは高校野球中継が流れ、客のほとんどは白い開襟シャツ。
白木のカウンターの隅に座り、冷奴とレバー炒めをたのんで瓶ビールをグラスに注ぐ。
ビールを一本飲んだらつまみにしていたトンカツをおかずに赤だしライスで締める。


写真は雑誌に載っていた『八島食堂』の記事、こちらは三宮の東店。
僕はこっちの方に行くことが多い。
    


トンカツで飲む、いうのもいいなあ。
小津安二郎の映画か、池波正太郎かを気取ってね。
意外と出来ないのだ。
Dai氏も、トンカツいいですね、と賛同してもらえたのだが決意出来ず。
意気地なしです。


トンカツで飲む、で思い出した。
今年2月にセルジオと行った南田辺の『スタンドアサヒ』
5時開店即満席の人気の酒場だった。
とにかく食べ物が全て美味しい。
付きだしの煮物が泣かせるほど旨い。
とこぶし、鯛の子、ふき、茄子、かぼちゃ。
とこぶしなんて普段は食べないのにね。
目の前で湯気を立てるおでんの大鍋、炭火の焼き物も最高だった。
目の前の炭火に鰻が焼かれる。
鰻が焼かれていくのを見ながらビールを飲む贅沢!
かりっとして旨かったなあ。
ここに豚カツ500円というメニューがあった。
絶対に旨いはずだ。
あそこで、いつかトンカツで飲もう、と思っていたのだ。


なーんてウジウジしているとさすらいのラガー浜ちゃんからメールが届く。
僕の知らない誰かが糖尿と胆石で救急車で運ばれたとか何とか。
いつも母親のメールをそのまま何の説明もなく転送してくる。
天からの声、警告のメールなのだ。


2軒目、三宮の生田神社裏の『才谷梅太郎』へ行く。
吉村さんが日本酒の会で知り合った若い夫婦がやっている店。
ビルの4階にあり落ち着いた雰囲気。
カウンターには女性二人組の先客のみ。
予約しておいたので『予約席』と書いたプレートがある。
ちと、恥ずかしい。
『八島』でけっこう食べてしまったので日本酒に専念する。
Dai氏が三重の「はなふさ」と滋賀「大治郎」、
僕が宮城「伯楽星」、奈良「大倉」、三重「而今」を飲む。
いずれも一杯90mlなのが嬉しい。
話の流れで石巻の地酒なんだったかな?となる。
3年前に取材で宮城に何度か行って石巻にも何泊かした。
二人とも思い出せない。
「墨之江(すみのえ)」が出た。
もう一つあったはず。
(帰宅後に思い出すした。「日高見」でした。)


3軒目、さらに東へ、二宮の『藤原』へ行く。
Dai氏旧知の元レストランライター推奨の居酒屋。
その方が言うには4時半の開店直後に満席なのだという。
『藤原』は二宮商店街を過ぎた人通りの少ない裏通りにひっそりとあった。
8時半、すでに暖簾が仕舞われている。
遅かったか。
神戸の夜は早いのだった。
店内に数人の人影がある。
思い切って声をかけてみる。
もう、終わりですか?
いいですよ、と大将。
いけるみたいです、とDai氏に言う。
カウンターに座ることが出来た。


自分一人だったら絶対に諦めてました、とDai氏。
僕だって同じです。
店のルールを犯すことは好まない。
暖簾をおろした『よしむら』で何度諦めたことか。
こういう時に常連のK社長は構わず入っていくんですよね。
遠来の客人がいる。
今回はK社長を見習って正解でした。


数年前、ドキュメントで取材した中嶋常幸がインタビューで言ってました。
中嶋はそのとき6年以上も優勝から遠ざかっていた。


(誰のために闘うのですか?の質問に…)
 中嶋『そうだねえ、 家族のためにといえば格好いいんだけどね。
    そうじゃないんだな。やっぱり、優勝ってのは…たぶん、
    それが一番問題にはなってるんだろうけど自分の中で、
    自分自身のプライド? こんなもん本当はいけないんだけどね。
    自分自身のためになんてそうそううまくいかないもんなのよ。
    人間って意外と人のために頑張るって方が頑張れるんだから。
    妙にそうなれない? そう思った時に簡単に勝てるかもしれない
    誰かのためにとかね、誰々のためにって思った方が意外と簡単に
    結果がでるかもしれないね。』


自分自身は諦めることが出来る。
自分を納得させればいいことだから。
「人間って意外と人のために頑張るって方が頑張れるんだから」
そうなんですよね。


なーんて、居酒屋に入る入らないの話でなんで人生語ってんだって?
たかが酒、されど酒。


サッポロ赤星の瓶。
座ったカウンターに大鉢が並び数種類の煮物が出汁に沈んでいる。
さっそく頂く。
芋、タコ、南瓜の煮物、タコは蛸の子だ。
上品な味付け、旨い!
飯蛸、大根、茄子もいい味出している。
Dai氏はきずし(しめ鯖)を食べ絶賛。


参考ブログ:http://kansai-walker.seesaa.net/article/89279463.html


東京から来ました、というと、丹下段平を思わせるご主人が相好を崩す。
開店直後は混んでいると聞いて、と言うと案の定夕方は満席だったそう。
だんだん開店時間が早よかっていきまんねん、とご主人。
9時までということで早々に締めの「松茸のお吸い物」を注文。
Dai氏がばい貝の煮物を追加する。

最近出たミーツの特集『酒場の本』に奇しくも見開きで『八島』と『藤原』が載っていた。

     

     



前述の『肴(あて)のある旅』の情報。
ご主人は高架下の老舗酒場「森井本店」で板前をされていた。
なんと15歳から働いていたそうだ。
震災を機に「森井本店」が改装、何やかんやあって独立した。
「こんな七時過ぎたら、犬の子一匹通らんとこで店やれるんやろか」
という心配をよそに今や大繁盛の名店となった。
中村よおさんが書いている。


 ここではとにかくまず煮物だ。
 お金さえあれば食べられるところはあるのだろうが、高くて旨いは当たり前。
 僕が小遣いで行ける店でこんな旨い煮物が食べられるところはちょっとない。
 だいたい煮物がメニューにあるところ自体が少ないのだ。


その絶品の煮物を堪能してお吸い物で締める。
ゆっくりと腰をすえてここで飲めばよかったですねえ。
焼き物や揚げ物も旨そうだ。


Dai氏来神のおかげで神戸の居酒屋をいろいろとリサーチした。
いつも八島か金時か丸玉、時々SONEという神戸だったが行って見たい店が増えた。
こっそりと独酌に行ってみよう。
『一人で内緒で食べるのが好きなんですね』
吉本隆明も言っている。


本日、僕が飲んだのは、
八島:キリンクラシックラガー大瓶、チューハイ1杯。
才谷:日本酒90ml3杯。
藤原:サッポロラガー大瓶、角のハイボール1杯。
当たり前のようにハシゴ酒する自分が恐い。
いつか代償を払わねばならない。
浜ちゃんの悪魔の警告メールが胸に痛い。


帰宅後、太田和彦の『ニッポン居酒屋放浪記〜望郷編〜』を読み返す。
神戸編に『藤原』を訪れた話が載っていたのを思い出した。
大将との会話が数ページに渡って記してある。
15歳で住み込みで働き始めたこと、震災のこと、少年野球の監督をしていたこと等々。
大将の顔を思い出す。
苦労人らしい風貌、あの笑顔はいいよなあ。


…Dai氏から紹介された本『倒壊する巨塔』、各書評で激賞されているらしい。
今年もあと3ヶ月を切ったし、ガツンという中身の本を読むのもいいかなと思う。