早朝からナレーションを書く。
自分の担当コーナーと本編の手直し、時間的には余裕あり。
でも、他人の書いたナレーション原稿を手直しする作業は消耗する。
ちょっと直すくらいでいい、と思うのだがそうはいかないのです。
手抜きが出来ないという意味ではない。
添削して完成原稿にするという作業は意外に負担が大きい。
家を解体して建て直す、みたいなもの?
僕はちょっと直すという作業が苦手なのかも。
…午後遅く録音スタジオで作業。
『こどもスポーツファン養成講座』のアフレコも何とか終える。
パパ役の田昌人さんは熱演してくれたし、すぽる太役の河合クン(8歳)も達者だった。
彼はほとんどNGが無い。
お母さんとスタジオ入り、台本を渡すと周囲には目もくれず黙々と読み始めた。
なんだかプロっぽい。
初めてのアフレコなのでちょっと手間はかかったが二人の声優さんは上々の出来。
この数日、女性のアニメ声優にするか、子供でいくか、迷った。
選択は間違っていなかった、と思う。
録音を終え、アフレコした映像を河合クンに見せる。
何だかモジモジしている。
トイレ行きたいの? と言うと、うん、と訴えるように答える。
我慢してたのだ。
ごめんね。
…でも、新番組全体の出来映えは満足のいくものではなかった。
描いていたイメージを具現化するのは難しい。
それは長年の経験でわかっている。
でも、実際に出来上がってこれだけイメージと違うと徒労感がある。
CGやテロップや音楽で補完出来るギャップではない。
僕は他人に言葉で伝えるのが苦手なのかもね。
ダメじゃん、それ、メディアの仕事として。
編集あがりを見て考えていた。
細部にだけこだわろう。
オープニングや選曲、ちょっとしたナレーションのフレーズ。
他の誰かが気づかないくらいささやかな仕掛け。
番組には複数のスタッフや制作とは関係ない人も沢山関わっている。
全体を決めていくのは合議制みたいで面白くない。
細部にこだわれり続ければ何かが変わるかもしれない。
変わらなくても、いつか何かの役に立つだろう。
それになんと言っても、楽しい。
エネルギーが少なく済んで、しかも楽しいならそれがいい。
そういう形で役に立つポジションもあるはずだし。
微力ながら。
今年2月に日記にこんな記述がある。
午後から編集チェックに東通へ行く。
VHSにコピーしてもらいながらふんふんと各所を確認する。
ルーキーのディレクターはもの凄く眠そうだ。
彼女はもう自分の娘の年代だ。
仕事はなかなかスムーズにいかないね。
理不尽なことも多い。
自分が思うようにことは運ばないのだ、ということを学べばポイント加算だと思う。
「挫折」のスタンプを5つ集めれば…場末の立ち呑みが似合う渋いオヤジになれる。
(て、なりたくないか)
僕らオヤジたちだって同じだ。
うまくことは運ばない。
うまくいかなくって当たり前、うまくいけば…おかしい何かある、
と疑ってかかるくらい。
不測のトラブルは必ず起こる。
筋の通らない理由でうまくことが運ばない。
いや、悲観論でなしに一般論でそう思う。
藤原伊織の小説『シリウスの道』を読むとよくわかる。
誰だかわからない人間が出てきて横やりをいれてきたり、
無能なスタッフが編成されたり、営業がとんでもないノルマを引き受けてたり。
誰かの都合でスケジュールが突然変更になる。
そのせいで整然と並んでいたスケジュールが無意味になる。
うんざりする。
だから、こう思うことにしている。
仕事の80%は不測のトラブルに対応することなのだ。
泥沼にハマった車を出したり、こんがらがった釣り糸を解くような作業。
仕事の正味の部分は実は2割くらい。
経験値でそう思う。
一生懸命やってうまくいかなくても腐らないこと。
うまくいくこともある。
滅多にないけど。 2009/2/19
自分の書いた文章で自分を慰める。
こういうのを自慰行為と言うのだ。
…A藤PとI田Dと3人で福島の『はなくじら』へ行く。
歩店で少し並ぶと10分ほどで座ることが出来た。
今シーズン初「はなくじら」だ。
やっぱり、ここのおでんは旨い。
僕のベストチョイスは、春菊(とろろ芋とゆず)、ねぎ袋、湯葉。
スタジオへ戻る道、月が夜空に浮かぶ。
もうすぐ十三夜だ。