ロードバイクで武庫川あたりを走ってから甲子園第一試合という目論見は崩れる。
起きたのが7時過ぎ、やっぱり3時就寝ではキツいです。
で、今日のメニュー変更、コーヒー飲んで甲子園に直行しよう。
酒蔵通りを東へ10分走れば甲子園球場のライトスタンド裏に出る。
途中、今津小学校の前を通る。
名建築として保存されている旧校舎(六角堂)の前に赤い花が咲く。
サルスベリ(百日紅)の古木だ。
思わず停まって写真をパチリ!
甲子園球場、自転車置き場はほぼ満車。
無料のライトスタンドに入る。
青空、緑の芝、アルプスも赤青緑。
甲子園は天然色。
いるいる上半身ハダカの裸おやじがいるぞ。
たいていは一人。
手には朝から生ビール。
気持ちわかります。
※さすがに中継のセンターカメラに写る位置にハダカおやじはいないな。
外野やアルプスには普通に分布してます。
中京大中京(愛知)vs 南陽工業(山口)
愛知県生まれとしてはどうも中京大中京という名前が馴染めない。
僕らが子供の頃は中京商業、地元ではチューショーと呼んでいた。
中京大中京、山本山みたいだし。
早稲田大早稲田、慶応大慶応、日本大日本、同志社大同志社、立命館大立命、関西大関西…。
南陽工業!
炎のストッパー津田恒美の母校。
優勝したわけでもないのに僕らの世代にとっての津田は強烈な印象を残している。
その後、広島カープへ入団し、32歳で夭折。
80年代はクローザーと言わずストッパーという言い方が一般的だったんだな。
両校とも守備がいい。
鍛えられている。
この試合はアタリだ。
中京の背番号9、ライトを守るのは小木曽亮。
距離が近いのでその仕草に注目。
腰をかがめ右手の手のひらを何度も芝にこすりつける。
何のためだろう?
オギソ君、何でそんなことしてんの?
5回表、中京のピンチ。
南陽工業、ランナーを2塁に置いて強打!
打球はライト前に飛ぶ。
ライトは小木曽、捕球してバックホーム。
タイミングはセーフだが…。
うおおおおおおおおお、レーザービーム!!
少し逸れたが素晴らしい低く速い返球、間一髪アウトにする。
捕殺完成。
ライトスタンドとアルプスにどよめきが起こる。
イチローや、イチロー!と声が飛ぶ。
オギソ、おまえ凄いじゃん。
芝で手のひらをこすってたのは滑り止めだったのかな。
誇らしげなライトスタンド。
うっとこの子、なかなかやるやろ?
南陽も守りでは負けてはいない。
ピンチに内野が5-4-3のダブルプレー。
ラジオの実況アナが言う。
「練習を積んでいなければこんな正確な送球は出来ません!」
0対0のまま7回、その南陽工業が走者を3塁に進める。
終盤に来て1点は重い。
来た!
ライトへ強烈なライナー。
定位置よりやや深めに守っていたオギソ君が捕球。
3塁ランナーがタッチアップ、オギソがバックホーム、
その瞬間、ランナーがあわてて帰塁する。
ボールは…ダイレクトでキャッチャーミットに収まる。
甲子園が一瞬シーンとなり直後、うおおおおお、と低くどよめく。
定位置ではタッチアップは出来ないぞ、と無言の警告。
これが本当の抑止力だ。
鳥肌が立った。
オギソ君、キミはいったい何者?
アルプスから大歓声。
プロなら軽く手をあげて応えるところだ。
そこは高校野球、オギソ君は淡々としたまま守備位置につく。
しかし、その回、2アウトから内野にエラーが出て中京は失点。
その裏、1点を追う中京が走者を出しチャンスをつかむ。
快音が響く。
左中間真っ二つ!
打球はフェンスに届く。
同点、さらに中継でもたつく間に打者ランナーが3塁を回った。
躊躇なし。
ホームイン!
生では初めて見たランニングホームラン、もといインサイドパークホームラン。
しかも大舞台、甲子園 夏の選手権。
来て良かったあ。
2対1、中京逆転。
打ったのは誰だ?
はずしていたラジオのイアホンをつけ直す。
「価値ある逆転打、1番の小木曽、好守に大活躍です」
えええええええ!
オギソ、お前だったのか!
チェンジとなってオギソ君がライトの守備位置につく。
アルプスから大きな拍手と歓声。
さすがにオギソ君、手を振って歓声に応える。
その仕草にさらに大きな拍手。
帽子をとって頭を下げる。
君はヒーローだ!
結局、2対1で中京が勝つ。
長州は1点差で敗れ去ったぜよ。
中京大中京の校歌が流れる。
耳になじみの中京商業時代と同じ校歌だ。
小学生の頃、 ♪大都名古屋の 東(ひんがし)に という歌詞が笑いのツボにはまった。
ひんがし、だってさ。
当時、同じクラスの東(あずま)という女の子はしばらく“ひんがし”と呼ばれた。
小木曽の一打はランニングホームランではなく3塁打+エラーと記録された。
サンスポの記事にこんなのがあった。
「3塁コーチが勝利導いた中京大中京」
http://sportsnavi.yahoo.co.jp/baseball/hs/10summer/text/201008100001-spnavi.html
中京の3塁コーチだった今井健太郎(どこかで聞いたことのある名前?)は躊躇なく
ランナーの小木曽をホームへ突っ込ませた。
今井は語る。
「中京ではトレーラーマンと呼んでいるんですけど、
保険の役割で必ず2枚目のカットマンが入ります。
1枚目のカットマンの後ろ、5メートルの位置ですね。
南陽工高はノックのときから、そのトレーラーマンがいなかった。狙ってました」
レフトの家重太誓からの送球は高く抜け、
ボールはショートの目代のグラブに当たって外野の芝生の上を転々。
慌てて新出が拾いに走るが、その時点でアウトにできる可能性はゼロだった。
高校野球は深い。
夜、楽しみに『熱闘甲子園』を見たが失望。
小木曽のバックホームは全く無視されていた。
最初から中京の投手に栗山がインタビューしてりして焦点を当てているので仕方ない。
でも、いいシーンは入れて欲しい。
加えて相変わらずのアップ多用が見ていて辛い。
あの決勝の3塁打も広い絵を一枚も使わないのでどこに飛んだヒットか全くわからない。
安物のテレビドラマを見ているよう。
ワイドショットをあえて使わないのか、使う技術がないのか。
『熱闘甲子園』は時に素晴らしい作品に出会うがかなり出来不出来が激しい。