歌舞伎のエヴァンジェリスト、眼鏡堂の案内で「義経千本桜」を見た。
場所は京都南座、歌舞伎界のフェンウェイパークの味わい。
演ずるは、“エースで4番”の市川海老蔵。
僕の歌舞伎人生でベストワンの舞台でした。(シネマ歌舞伎を含め観劇回数4回目だけど)
阪急電車で河原町まで出る。
京都は夏のような暑さ。
喫茶『築地』の2階で昼の部を見終えた眼鏡堂氏が待っていた。
東京から深夜バスでやってきた二人の女子大生も一緒。
キラ☆キラのバイトのFさんと美大生のMさん、二人とも松竹に就職が決まっているとのこと。
Mさんのお父さんは僕と同い年だそう。(!)
別に驚くことでもないか。
客観像は中年晩期、自己像は老けた青年。
なーんて関川夏央が書いてたなあ。
…午後4時前、南座に出陣。
エントランスを入るといきなり客席、という感じ。
実にコンパクト、驚くほど舞台が近い。
昔の日生球場を思い出す。
バックネット裏の報道受付を通るとすぐにホームベース、という狭さ。
歌舞伎座がヤンキースタジアムとすれば、立て替えなしで現存する南座はフェンウェイパーク。
劇場の地下がそのまま京阪四条の駅、というのもいい。
南座には20代に一度来たことがある。
大学を卒業して毎日放送のカメラ助手のアルバイトをしていた頃で1980年代前半のこと。
先代の片岡仁左衛門のドキュメンタリー番組の撮影だった。
老役者が南座の舞台で一人で稽古をしていた風景をぼんやりと思い出す。
その頃の僕は日本の伝統芸能なんて全く興味がなかった。
長時間の撮影にあくびを連発してたのを思い出す。
出来上がった番組も見た記憶がない。
本当にアホでした。
豚に真珠、猫に小判。
今、仁左衛門翁はブロンズのレリーフとなって南座におられます。
眼鏡堂さんの用意してくれた席は一等席。
曰く「最初はいい席で見た方がいいですよ」
1階の12列目、花道脇でした。
これまで3度の歌舞伎は全て一番安い席で見た。
初めて花道を見ることが出来る。
以下、ツイート風に感想を書き連ねます。
市川海老蔵は太陽だった。自ら光り輝く存在。
千両役者というのはこういう人を言うのかと納得。
間近に見た海老蔵はデカかった。
大げさかも知れないが2メートルの大男に見えましたよ。
(でも実際は175センチくらいだと聞き驚く)
まさに“エースで4番”、江夏で王、村山で長嶋、江川で掛布、村田で落合、
ダルビッシュで…うーん、4番がいない?
今回、初めてイヤホンガイドを利用した。
650円(ディポジット1000円)
正解でした。
ゆっくりと格調高く話す女性より、囁くように教えてくれる男性がいい。
衣装の情報、登場人物の背景、名文句の場面は知ってた方が楽しめる。
「さて、ここからが名文句」
立ち回りの多い演目。
歌舞伎独特の舞うような殺陣(というのか)
楽しめました。
その様を音で表す拍子木の音もいい。
浄瑠璃の声もすばらしい。
狐忠信は文句なしに楽しめた。
フィナーレの蔵王堂はオールスター登場。
京劇かアニメーションみたいにカラフル。
見ていて楽しいくて興奮しっぱなし。
たぶん、顔が自然とウヒャウヒャしてたと思う。
初めて見る玉三郎。
眼鏡堂氏曰く、玉三郎が海老蔵に緊張感と輝きを与えている。
でも、若葉の君がババア過ぎ、ついでに義経が太り過ぎのお大尽。
眼鏡堂氏が染五郎の義経はいいとのこと、そうだろうな。
染五郎こそが九郎判官義経のイメージそのものだ。
吉野山、蔵王堂、下市、上市、伏見稲荷、おまけに大物(尼崎)
歌舞伎の古典の舞台はなじみのある地名ばかり。
吉野の蔵王堂、また行きたくなる。
2001年11月に行った蔵王堂。
とにかく楽しめた。
僕は歌舞伎は教養、スノッブな趣味として見てたんだろう。
そんな僕の頭でっかちを海老蔵がガーンとやってくれた。
興奮さめやらぬまま先斗町で飲む。
歌舞伎を見終わって飲むには京都は最高の場所だと思う。
花見小路のバー「フィンランディア」で宴は続いた。