2010/9/30 「さびしんぼう」

昨夜、けっこう飲んだのにスッキリ目覚める。
精神はフラついてるのに体は身勝手に健全。
これはこれでバランスが悪い。(贅沢言うな!)
東京都内は朝から雨、ジョギング回避。
その時間を使って日記を更新、これ以上溜めないようにね。


…お昼前、半蔵門線で九段下、東西線に乗り換え高田馬場に出る。
神保町でランチ、と思ってたのだが日記を書いてたら時間がなくなった。
当然ながら高田馬場も雨、立ち食い蕎麦で今日初めての食事。


名画座早稲田松竹
1300円で3本見られる、一本あたり430円。
おそらく古い映画館なのだろうがシートは広くて快適。
カップホルダーもついてて今風のシネコンっぽく改装してある。
客層は…尾道三部作ということもあるのだろう、僕らと同世代中心。
入りは6割から7割くらい。


知り合いにはファンが多いが大林宣彦の映画を僕はほとんど見ていない。
『転校生』という尾道三部作の第一弾が公開されたのは1982年(昭和57年)。
一浪、一留、一休学の末、大学を卒業した年になる。
阪急六甲に住み毎日放送の報道カメラの助手をしていた頃だ。
映画をたくさん見た時代だったはずなのに…。
1980年代前半、邦画(日本映画)を見る人は少数派だったような気がする。
WEBで調べると1980年のアカデミー作品賞は『普通の人々』
81年『炎のランナー』、82年『ガンジー』、83年『愛と追憶の日々』、
84年『アマデウス』、85年『愛と哀しみの果て』…。
作品賞が必ずしも時代の代表作でもないだろうが全て見ている。
『レッズ』『黄昏』『愛と青春の旅立ち』『ミッシング』『ソフィーの選択
『エイリアン』『ライトスタッフ』『フラッシュダンス』『キリングフィールド』
などなど…ノミネート作品を僕は全部見ている。
バイト先のビル、地下と最上階に名画座があった。
大毎地下」と「毎日文化」
ロードショー公開された映画を数ヶ月もするとこの2館がかけてくれた。
もちろん料金も格安。
今は2つとも閉館、というかビルごと消えた。
なかなか尾道三部作の感想が書けないな。
助走が長すぎて感想はつぶやき程度で終わるパターン。


ちなみに眼鏡堂さんは尾道三部作のファン。
学生時代、映画の舞台 尾道を一人旅したという。
いつか『月刊いくちま』のネタにならないかな、と思う。


大林宣彦の映画、尾道三部作、どんなものか見てやろう。




さびしんぼう』1985年公開
出演 富田靖子 尾美としのり 藤田弓子 小林稔侍 他。


ショパンの『別れの曲』が流れ、主人公の男子高校生のモノローグで映画は始まる。
自分好みの導入部、でも映画そのものには最後までついていけなかった。
スクリーンに漂う情感は嫌いではない。
でも、映画としてはキツい。
苦手なタイプの人と2時間近く喫茶店にいるような。


古い映画だから、時代が違うからフィットしない、というわけではない。
すでに1985年、この映画の語り口は決して主流ではなかった。
道化師ではない清純な女子高生の富田靖子の台詞はかなり時代がかっている。
昭和30年代の高峯秀子や吉永小百合の台詞のようだった。
あの女子高生は大林監督の永遠の憧れなのだろう。


「人が人を恋うるとき、人は誰でもさびしんぼうになる」
「おーい、さびしんぼう!」
僕はちょっと醒めてしまう。
いかにも芝居がかったことを衒いもなく言えるのが大林ワールドなのだろう。
(僕の理解力がないのだろうか、映画の構造自体が飲み込めていないのですが)
同時代に見ていたらどう感じただろうか。
公開当時って…すでに28歳だった。



『転校生』1982年公開
出演 小林聡美 尾美としのり 佐藤允 志穂美悦子 他。


モノクローム8ミリフィルム、映し出されるのは尾道の風景。
流れる音楽はシューマンの「トロイメライ
さびしんぼう』と同様のプロローグ、でもこの映画はキツくない、大丈夫でした。
男と女の高校生、ある日、心と体が入れ替わる。
意味は特になし、もしそうなったら…という状況劇。
とりたててメッセージがあるようには思えない。
だから、映画の魅力は主人公の二人の役者と尾道という街の魅力に尽きる。
小林聡美尾美としのり
かもめ食堂』『めがね』『プール』などの主演で魅力ある中年女性になった小林聡美
映画デビューのこの映画でも彼女はいい。
男を演じる小林聡美がチャーミングだ。
心は男、あっけらかんと胸をさらけ出す小林聡美に一瞬ギクっとする。
まあ、乳房もほぼ男なのでドキっは一瞬で終わる。
女子高生に戻ってからはなんだかブリッ子してるみたいで違和感があった。
この人は中性でユニセックスなとこがチャームポイントなのだと思う。
彼女が『プール』でギターの弾き語りをしている。
これもいい。
http://www.youtube.com/watch?v=vaV74mQRKq4


全編通じてほぼホームコメディのタッチ、味つけは尾道の風景。
ラストシーンで男子高校生が横浜へ引っ越すことになる。
走り去るトラックを追いかける小林聡美尾美としのりが8ミリで撮影する。
「サヨナラ、オレ」「サヨナラ、あたし!」
これは醒めなかった。
じーんときた。


尾道の映画なのに役者は方言を使わず標準語。
大林監督の演出なのだろう。
でも、地方を舞台にした映画はその街の言葉を使う方が僕は好きだ。
がんばっていきまっしょい』の伊予弁や『スイングガールズ』の山形弁は良かった。


3本目は『時をかける少女
見終わると大西順子ライブへの移動がギリになる。
大林酔いしそうなのと『転校生』で満足したので3本目はパス。
早稲田松竹をあとにする。



…1時間ちょっとの間隙をどう使うか。
次はジャズだし、ちょっと入れとくか、ちゅうことでどこで飲む?
高田馬場から渋谷、なら新宿か。
この中途半端な時間に飲めるとこと言えば…。


『新宿 思い出横町』
http://www.shinjuku-omoide.com/
通称しょんべん横町、その昔はトイレが無かったらしい。
何年ぶりだろうか。
雨ふり、アスファルトに水たまり、うらぶれて思い出横町。
大鍋に煮込みが湯気を立てている。
「ささもと」という店。
先客は3人、いずれも初老、びしょ濡れの傘をたたみカウンターに座る。
キリンの瓶ビール独酌。
煮こみでいいすか?
お願いします。


独酌、さみしいな。
なんでだろ?
昔の映画を見たせいかな。
さびしんぼう
外で飲む、一人で飲むのが基本だと思っている。
読書酒、しみじみ酒、ぼんやり酒、人間観察酒。
一人酒はまったく苦ではなかった。
いや、それより独酌上等。
日記に毎日のように「○○で独酌」と記すので数年前、花園方面で「独酌」が流行したそうな。
メールに「いまラグ酒で独酌」てな具合に。
(当時Twitter はなかったので「独酌なう」なんてメールはしなかった)


22歳で「さみしい」は詩になるけれど、53歳で「さみしい」は救われない。
濡れ落ち葉? 雨も降ってるし。
現実的な理由は思い当たらず。
収入は(期間限定だが)安定してるし仕事は楽だし。
そりゃ不安はあるけど他人が思うほど本人は心配していない。
なんとかなるだろ。
何の確証もないけど。


Twitterやブログは、自分は一人じゃない、と励ましてくれるらしい。
最近、なんだか逆のような気がしている。
独酌しながらiPhoneって淋しさを増幅させるだけのような。
飲みながらツイート、これがよくないのかな。


さみしさ、というのは酒のいい肴になる。
潔く孤独を味わえばいい。
電子機器はその味わいを損ねているのかも。


30代のころ、山中で数日テント泊しても淋しいなんて思わなかった。
孤独と「さみしい」は別次元の感覚だと思う。
周りに人がいるかいないは問題ではないのだ。


五十代になって砂時計の残りが少なくなると人は“寂しさ”を感じるのか。
あるいは閑すぎて可処分時間が多いからつまんないこと考えるのか。
閑ならやりたいことやればいいのにね。


歌舞伎の勉強会で聞いた話を思い出した。
歌舞伎座のさよなら公演の時に大向こうから、さみしー! と声が飛んだらしい。
                        註:文末のコメント欄参照
さびしー!
財津一郎か。 


こんなことを書くとセルジオあたりが分析して処方箋をコメントしてくれる。
絶縁中の大学の同級生S教授もセラピストだし。


ここはもつ煮込みの大鍋に野菜串も入れるんだね。
キャベツをよく煮こんで軟らかくして初老の客が食べている。
アスパラやトマトなんてどうすか?
トマト下さい、それとハツとレバーも。
煮こみ鍋をくぐったプチトマトの串、なかなかイケる。


“さみしんぼう”について自己考察しながら飲んでいると瓶ビールが空いた。
煮込みには焼酎だな、と焼酎ロックを注文する。
うちはストレートで飲んでもらってます、とのこと。
げ、ストレート?
内心ビクつきながら、じゃあストレートで、と小さな声で答える。
久々のハードリカー。
ラベルのない怪しげなボトルから大きめのショットグラスに注がれる透明な液体。
ツイーってお前は太田和彦か!
いやあ久々にノドを焼いた。


カウンター、隣の二人連れは博多出身の60代、いや70代。
先ほどから話題は高校野球、九州勢の戦績について。
聞いていると佐賀県だけがまだ全国優勝を果たしていないとの結論に達する。
そうや、佐賀は準決勝どまりのはずや、と。
サガキタ、サガキタ、とノドまで出かかる。


※翌日、眼鏡堂さんにこの話をすると、たしか佐賀商業も優勝してたはず、との指摘。
 そうでした、1994年の夏に優勝してました。佐賀北は2007年夏の優勝です。
    


…渋谷、Bunkamuraオーチャードホール大西順子を聞く。
こんあ大きなハコで聞くジャズは初めてです。
ピアノ大西順子、ホーンが3人、ウッドベース2人、ドラムス、パーカッションの8人編成。
大西順子の他は全員アメリカからやってきたアフリカン。


バリバリのモダンジャズ、熱いハードバップ
こういうジャズは好きです。
元気が出てくる。
前の席に異様にタテのりする男がいる。
大向こうではないがやたらとイエイ!とかけ声をかける。
おまえは高嶋忠夫か。


とにかくドラムもベースも達者。
どんな高速のリズムもコンマ秒単位で正確に刻む。
カッコいいのはホーンの3人。
鳥肌モノ。
名前は知らないがスゴ腕ということは分かる。
ジャッキー・マクリーン (as)、フレディ・ハバード (tp)、JJ・ジョンソン(tb)
みたいでした。


でも、楽しみにしてた大西順子の男前ピアノソロが少なかったのが残念。
次はライブハウスでピアノトリオの演奏を聴きたい。


阪神が逆転負けで自力優勝が消える。