秋の青空が続く。
湿度も38%、気温が高くてもカラッとして気持ちいい。
『下流の宴』の残り30頁ほどを読んでしまおうと午後から「Hiro Coffee 西宮北口店」へ行く。
午後3時前、空いてるだろうと思って行ったの駐車場は満車、行列が出来ている。
いつ行っても混んでいる。
おばさまたちのグループで話し声がワンワン響く。
『下流の宴』の福原家みたいな人たちが集まってるのだろうな。
入れない腹いせにそんな意地の悪いことを思う。
コーヒー豆だけ買って退散。
5年ほど前に行った「SHIOSAI」というブックカフェに行ってみる。
絵本のお店がやっているカフェ、最近はパスタ専門店を併設している様子。
セルフコーナーに数組の客、おそらく関学、あるいは内田先生の学校の女子大生ら。
ミネストローネとバケット、450円也。
本に囲まれた空間、生島文庫のようです。
先月、京都で会ったときに眼鏡堂氏から勧められた『下流の宴』、意外に面白かった。
林真理子の本を読むのは初めてだった。
眼鏡堂氏はなんでこの本を手にしたのだろう?
勝ち組を自称する福原家、その福原家の人々から下流と蔑まれる宮城家の物語。
実にあっけらかんと人生の勝ち負けを大学や職業で判断する福原家の母と娘。
こいつら二人がイヤな奴なんだ。
そんなやつはおらんやろ、と大木こだま風に口に出してみるが、いるんですよね、実は。
後半はなんだか「ドラゴン桜」みたいな展開になり僕は楽しんだ。
いわゆる下流、されど志の高さで感動を呼び起こすタマちゃんが魅力的だ。
でも、表題から考えるに主人公は中流家庭のイケメンの息子翔なのかもしれない。
奮起することのない人生。
- 作者: 林真理子
- 出版社/メーカー: 毎日新聞社
- 発売日: 2010/03/25
- メディア: 単行本
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とっくに読み終えても良さそうだが最近面白い本は残り20頁くらいで寸止めするのが常だ。
で、今日、「Shiosai」でウイニングランをするように読み終えた。
一箇所だけ泣きそうになったとこがあった。
タマちゃんが国立大学医学部の面接試験に臨む。
面接官が言う。
「そりゃ大変ですね。この合否は、あなたの結婚もかかっているわけですね」
「そうです。愛がかかってるんです」
珠緒が深く頷いたとたん、今度は左側の男性が咳をするふりをして、
笑いをこらえているのがわかった。その人が今度は声を発する。
「それでは、もし不合格だったら」
「来年また受けます。必ず医者になります」 (409頁)
前後の文脈や彼女が受験する理由もわからずに読んでも心は動かないでしょう。
スイマセン。
でも、珠緒の「来年また受けます。必ず医者になります」にやられた。
僕が映画や小説で泣けるのは不幸や理不尽や悲しみではないような気がする。
とことん不幸な女性を描いた「ダンサー・イン・ザ・ダーク」では泣けなかった。
いっしょに見たヒロや周りの女性は大泣きだったけど。
僕が感極まるのは、逆風に独りで立つ人、を見る時なのだと思う。
きっぱりと覚悟を決めた人。
誰にも認められなくても威風堂々としてる人。
たとえ世界が、誰一人きみの味方じゃなくても、自分を信じて歩む人。
思いつく映画、たとえば『遠い空のむこうに』『ブラス!』『ロレンツォのオイル』
『ショーシャンクの空に』『ヤング@ハート』などなど。
カッコつけんな、ぷよねこのくせに、と言われそうですが。
30年も減量してるくせに、とも言われそうですが。
いやいや、僕は自分が持たざるモノにあこがれて涙するのです。
もう一箇所、泣きどころではないけれど好きな箇所。
受験勉強をする珠緒が図書館で知り合う広瀬という老人がいる。
広瀬さんは「東大入試中止の年の一橋」に入り、すでに退職し、図書館へ通う。
関連会社の役員になることが決まっていたが権力争いに敗れ隠居の身となった。
家族からはいくじがないと呆れられ図書館に通いぼんやりして暮らしている。
珠緒が言う。
「せっかくいい大学出たのに、なんかつまんないよね。
結局はさ、人って年寄りになって、いつかは死ぬんだよね。そう考えるとさー。東大とか
ヒトツバシ出てもさ、いつか人って、同じとこへ行くんだよねー」
(中略)
広瀬は苦笑いする。しかし、決して不愉快そうではない。
珠緒の反応を面白がっているのだ。
「だけど、僕はそうは思わないよ。絶対にさ」
「あれー、そうなの」
「だってそうだろ、タマちゃん。人間はさ、急に二十歳から、六十歳になるわけじゃない。
その四十年間でさ、いろんなことを経験するんだ。僕はね、世界中のいろんな所へ行ってさ、
楽しい経験をいっぱいした。うんとうまいものを食べたし、酒も一杯飲んだ。
あのね、どうせ惨めな老後が待ってるんだったら、何をしても同じだね、なんていうのはさ、
まるっきり違うと思うよ」
「そうかー、そうだよね」
「そうだよ。この頃さ、タマちゃんみたいな若い人たちがさ、
どうせ、人間行きつくとこは同じ、みたいなことを考えてるだろ。あれって嫌だね。
僕はさ、思い出に生きるつもりはないけどさ、四十年はうんと楽しんだ。
年とってからのことなんか考えなくてもいいんだ。
二十代からの四十年のことを考えて人間って若い時に頑張るんだよ……。
いや、なんか説教臭いこと言っちゃったね。
せっかくのタマちゃんのコーヒーブレイクなのにさ」 (345-346頁)
写真家の星野道夫(1996年没)のこの言葉が好きです。
『結果が思惑通りにならなくとも、そこで過ごした時間は確実に存在する。
そして、最後に意味を持つのは結果ではなく、過ぎていったかけがえのないその時間である』
人生において結果の持つ意味は意外に小さいのかもしれない。
…北九州市の広報誌『雲のうえ』の最新号が届く。
読み応えのある極上の広報誌です。
今回の特集は「夜のまち」
小倉のスナック、若松の居酒屋、門司の角打ち等々が紹介されている。
神戸から阪九フェリーに乗って北九州へ行ってみたい。
いつか行こういつか行こうと思い始めて5年以上経つ。
…今シーズンは初の鴨セリ鍋、にしようと思ったがセリが売ってない。
代用品で水菜と三つ葉を使うが、クセがなさ過ぎてちょっと頼りない。
それでも、鴨鍋、中華麺、タマゴ雑炊、一鍋で三度美味しい。
特に固めの中華麺が和風だしに良く合って旨し。
…テレビを見ていたヒロが僕を呼ぶ。
ねえねえ、梶芽衣子が「怨み節」唄ってるよ、と。
懐かしい、梶芽衣子、女囚さそり、中学の頃、あの目に惹かれました。
寺内勘太郎一家で西城秀樹の姉さんを演じてました。
書き忘れたこと。
僕の勝手なイメージではお龍は梶芽衣子なのですが。