2010/10/9 神在月、松江の夜

…雨の伊丹空港からプロペラ機で出雲へ行く。
今は、出雲えんむすび空港、というのだそう。
一昨年にも出雲へ行ったがそんな名前は聞いたことがない。
但馬こうのとり空港、というのもある。
青森ねぶた空港、秋田なまはげ空港、徳島あわおどり空港、福岡どんたく空港…。
まさかとは思うが日本中の空港がそんなふうになってるのかも?


出雲へ降下する。
眼下の風景が美しい。
宍道湖や中海、二つを結ぶ水路、水辺に広がる松江市街、黄金色の田園。
ヨーロッパに比べると雑然としてうんざりする日本の俯瞰だがここだけは違う。
前回も同じことを書いた気がする。

2007年に書いている。


  …プロペラ機は宍道湖の上空を飛ぶ。
  高度を下げると傾いた秋の光に包まれた風景が目に映る。
  のどかな田園風景が黄金色に輝いている。
  ウエールズフィンランドにも負けない。
  日本の原風景が誇らしく感じられる。


同じことをループするようになって早5年、年寄りの証拠やって?
なんでウエールズフィンランドって書いたのか。
ウエールズの田園風景やフォンランドの森と湖、この2つが宍道湖の風景にあったから。
それもそうだけど、この年は1週間前までウエールズフィンランドに行ってたのだ。
ま、短絡的なこと。

  


空港から連絡バスが松江市内に入る頃、落日を迎える。
バスから買ったばかりのデジカメ(Cyber-shot DSC-T99)で夕景を撮影。
やっぱりブレていた。
光が射す場所はちょうど出雲大社の方向。
日本中の神が出雲に集まる10月、ここだけは神無月ではなく神在月と呼ぶ。


…駅伝関係者で混雑する出雲を避けて今年も松江泊。
いつもはそれほど混まないのに3連休だからか松江のホテルもほぼ満杯。
駅裏のホテルしか空いてなかった。
正直、狭くてかなり汚い。
一泊4000円、これをどう見るか。
東京のウイークリーマンション深川、広くて清潔でミニキッチンもあって駅近で4700円。
場所を考えるとお得感は高い。
まあ、泊まれればいいよ、って思うしかない。


新大橋のたもと『やまいち』、訪れるのは2年ぶり3度目。
いきなり熱燗、地酒「豊の秋」、白いかの刺身、もろげエビの唐揚げ、いや素揚げかな。
宍道湖特産の海老で食べやすい大きさ、ここに来ると必ず頂きます。
いか刺はおろしたての生姜で食べる。
新鮮なイカには山葵より生姜です。

  


地方へ来ると地元客の訛りを聞くのが嬉しい。
数年前は生の「だんだん(ありがとう)」が聞けた。
カウンター隣の会話を盗聴。
曰く、今日は人が歩いとる、と。
3連休、松江のホテルはほぼ満室みたいですよ、と言いたかったがシャイなのでやめておく。
そうか、普段はもっと静かなのか。
一度、冬に来てみたい。


Bar『山小舎』、2年ぶり4度目。
店の看板にsince 1957 とある。
前に何度も書いたが僕と同級生のバー。
十数年前に移転したが一枚板のカウンターは当時のまま。
自分と同い年のカウンターに手をおいて美酒を飲む。
珍しくカクテル。
オススメの「すだちトニック」を2杯、酸味に身が引き締まる。


店の前にクラシックなロードレーサーが停まっている。
持ち主は推定60代の紳士、赤いセーターを着たオシャレなロマンスグレー。
大学の教授か、音楽家か、画家かな。
30年以上前のブリジストンの自転車、当時50万近くしたと言う。
ブリジストンがこんなロードレーサーを作ってたんだと驚く。
当時のツール・ド・フランス仕様モデルですよ、と自慢げ。

若き2代目マスターに、明日はやってますか?、と聞くと、
休日ですがやってます、たぶん閑散としてます、とのこと。
明日も来よう。


…松江の締めは『橘屋』で割子そば、3年ぶり3度目。


最近は眼鏡堂ブックレビュー推奨本ばかり読んでいる。
出張のお伴は高田郁『八朔の雪』(ハルキ文庫)です。
澪つくし料理帖シリーズという連作ものの時代小説。
裏表紙の解説はこんな感じ。


  神田御台所町で江戸の人々には馴染みの薄い上方料理を出す「つる家」。
  店を任され、調理場で腕を振るう澪は、故郷の大阪で、
  少女の頃に水害で両親を失い、天涯孤独の身であった。
  大阪と江戸の味の違いに戸惑いながらも、
  天性の味覚と負けん気で、日々研鑽を重ねる澪。
  しかし、そんなある日、彼女の腕を妬み、
  名料理屋「登龍楼」が非道な妨害をしかけてきたが・・・。
  料理だけが自分の仕合わせへの道筋と定めた澪の健闘と、
  それを囲む人々の人情が織りなす、連作時代小説の傑作ここに誕生!


八朔の雪―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-1 時代小説文庫)

八朔の雪―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-1 時代小説文庫)

澪は「つる家」常連の浪人 小松原から“下がり眉”とからかわれる娘盛りの18歳。
まず彼女が魅力的だ。脇役もいい。主人の種市、常連の小松原、長屋の住人ら…。
洪水で両親を一度になくし幼くして地獄のような苦しみを味わった。
でも、澪はこんなことを思う。


  何かを美味しい、と思えれば生きることが出来る。
  たとえどれほど絶望的な状況にあったとしても、そう思えれば人は生きていける。
  そのことを澪は誰よりもよく知っていた。


美味しい食べ物が人を幸せにする。
小林聡美の映画『かもめ食堂』を思い出した。
炊きたてのご飯で作ったおにぎりとパリパリの焼き海苔の美味しそうだったこと!
おにぎりは2分以降に出てきます。この映画、食べ物の音がいいです。



おにぎりと言えば『狐のご祝儀』にこんな場面が出てくる。
若き医者の源斉に助けてもらった澪が腹を空かしている源斉におにぎりを作る場面。


  手を濡らし、焼き塩を付けて冷や飯を俵の形に握り、平皿に並べていく。
  先を濡らした箸に、炒った黒胡麻を付け、俵の上にちょんちょんと置いて仕上げた。
  牡蠣の時雨煮を小鉢に装い、角盆に載せて、源斉のものへ運ぶ。
  「変わった形の握り飯ですね」
  どれ、と源斉はひとつ摘んでひょいと口に入れた。
  (中略)
  よほど空腹だったのか。皿と小鉢が空になるまで口も利かなかった。
  旺盛な食欲は、それだけで傍にいるものを幸福にする。
  芳と澪はそっと互いを見合った。


江戸の医者である源斉が俵型のおにぎりを変わった形だと言う。
もしかしたら俵型は関西発祥のものなのだろうか。
それともパッキングしやすいように商売用の工夫なのだろうか。
僕の母はおにぎりと言えば三角むすびだった。
でも、ヒロは三角のものと俵のものを半々くらいで握る。
子供の頃はまん丸のおにぎりを持ってくる友達もいた。
おにぎりの形、地方差ってあるんだろうか。


澪つくし料理帖シリーズ、こんなイラスト頁があった。
http://l4books.jp/2009/07/vol2/

コミックもあるんですね。

八朔の雪みをつくし料理帖 1巻 (オフィスユーコミックス)

八朔の雪みをつくし料理帖 1巻 (オフィスユーコミックス)


…今日はスポーツが熱かったようだ。
一試合も見てないけど熱さは伝わるものだ。
出雲への移動中に眼鏡堂さんがメールで経過報告してくれたトップリーグ
雨の花園、近鉄が王者サンヨーに3点差まで迫った。
1トライとれれば逆転勝利だった。
西武とロッテのクライマックスシリーズは丼さんがTwitterで生々しい激戦の報告をくれる。
夜はザックJAPANの初陣、アルゼンチン戦。
な、なんと1-0で勝利!
開国以来初めて日本がアルゼンチンに勝った。