再録 2007/6/14


雨の日は映画館で「QUEEN」でも観よう

  
 

雨が降っている。
関西地方も雨の季節に入ったようだ。


昨日はかなりの距離を歩いた。
蔵朱の後、近くのベルギービールBAR「DOLPHIN」で白ビールを一杯。
そのまま大阪天満宮まで歩いた。
つまり天満から梅田往復、天満から本町、さらに天満。
3時間以上歩いていたことになる。
ま、飲み過ぎたことの言い訳にはならないけどね。


今朝はのんびり起きて寝坊。
体重70.65キロと減ったのはどうしてだろう?
増減のメカニズムは謎だ。
長期的に見ればインプット&アウトプットで説明がつくのだが。


amazonからCDが届く。
笠置シズ子のベスト集「ブギの女王」と寺山修司ラジオドラマ「黙示録」。
映画「酔いどれ天使」のキャバレーで笠置シズ子が歌った「ジャングルブギ」、
♪ ウワアオ ワオワオ わたしは女豹だ ウワオ ワオワオ
戦後の突き抜けたパワーにはノックダウンされた。
あの迫力は 凄い! の一言。
「ジャングルブギ」、なんと作曲は服部良一だが作詞は黒澤明なのだった。


…雨の日は映画を観にいこう。
ヒロを誘ってシネリーブル神戸に行く。
夫婦50割引、二人で2000円也。


ブラヴォーシネマで小西克哉が絶賛していた映画「クイーン」を観る。
客は僕らより年配の人ばかりで20人ほどと空いていた。
このところ邦画ばかりだったが、久々にいい洋画を観たなあ。
ストーリーも、画面の上質なサスペンスも、演技も良かった。
小西氏の5ブラヴォーもなるほどと賛同出来る良い映画だった。


…映画を見終わったのが夕方5時前、旧居留地にあるモンベルへ行く。
雨の日はターミナルから離れた場所はどこも空いていて気持ちがいい。
米子の甥にTシャツを買い、ウエアとギア、2冊のカタログを買う。
モンベルのカタログは掲載されているスナップ写真が秀逸なのだ。
モデルが商品を使っているといういかにもカタログという写真ではなく、
素人が実際のキャンプや登山で撮った写真はことさら商品を強調していない。
元はと言えば「パタゴニア」が自社のカタログで使っていたアイデアだが…。
カタログはTシャツを買ったので無料だった。
でもこれかなり読み応えありますよ。
雨の日には、珈琲でも飲みながらモンベルのカタログをパラパラやる、いいですよ。


僕が欲しかったのは夏用の帽子。
キャップではなく日よけのツバが大きめのハット。
炎天下を歩くのにやっぱり帽子を被ったほうがいいと思ったのだ。
モンベルで候補に3点ほど決めて、近くのLLビーンへ行く。
ビーンにもいいのが1点あった。色はチャコールグレイ。
ヒロがこっちの方がフィットしているというので購入。
帽子が自分に似合うかどうか、五十になると自意識は薄い。
自分が他人にどう思われているか なんてのは年とともにどーでもよくなってくる。
自分のために被った方がいいと思う、似合うか似合わないかは二の次です。


雨で人気の少ない南京町を歩き、洋食の「グリル一平 元町店」で夕食。
ここも客は僕らだけ、人口密度が少ないのは心が安らぐ。
ビールのつまみに最高の店のオリジナル「マカロニナポリタン」と
オムライスに蟹クリームコロッケを二人で分ける。


走らなかったが神戸市内を1時間以上歩く。
自宅で、腕立て伏せ20回+腹筋20回。


雨の日は映画とショッピング、老舗の洋食、悪くない一日でした。


…映画「クイーン」の僕なりの感想を書く。
長くなるかも知れないので興味のない人は飛ばしてください。


ダイアナ元王妃が死んだのは10年前になる。
個人的な思い出だが、その年の夏から秋、僕はアラスカを3週間ほど一人旅をしていた。
その日の旅のノートこんな記述がある。


 1997年8月31日(日) アラスカ フェアバンクス Billie's Backpackers Hostelにて
 ダイアナ王妃が死んだ。
 朝食の時、“Princess Diana was killed”とケープタウンから来た男に知らされる。
 “She was killed? Who killed?”と聞くと“Car crush”だと言う。
 僕が旅に出ると必ず大事件が起こる。
 昨日のチャーミングな黒髪の女の子が10時前に起きてくる。
 宿の女主人が彼女を見て“Oh,Sad ! ”と声をかける。
 彼女はイングランドから来ているのだ。
 宿帳を見るとSue Rush とある。そうか、スーザン、彼女にぴったりの名前だ。
「悲しいでしょうね」と言われた彼女はそれほど悲しそうでもなかった。


ダイアナ死すのニュースに関する記述はこれだけ。
でも、なぜかその朝のホステルの会話は印象に残っている。
その日、フェアバンクスは一日、雨が降り続けた。
数日後、僕は一人で山に入ってテントで4日間過ごした。
キャンプ場では何人ものアメリカ人やアイルランド人に会ってビールを飲んだが、
誰一人、ダイアナの話なんてしなかった。
映画「クイーン」はダイアナの死から1週間の事実に基づいたフィクションである。
そのとき歴史は…元王妃のために世界が泣いていた、なんて僕は知るよしもなかった。


TBS「ストリーム」のWEBページに載っていた映画のポイントとあらすじを書く。

(ポイント)
◆ダイアナ元妃の自動車事故直後、7日間のエリザベス女王の“本当の姿”に迫った作品。
エリザベス女王を演じたヘレン・ミレンアカデミー賞の主演女優賞を受賞。
 ヘレン・ミレンはビデオやボイスコーチをつけて女王の話し方や
                      動作、表情などを徹底的に研究。
◆映画の大半はダイアナの事故直後7日間の王室内部の様子。
 チャールズ皇太子と親しい人物や元スタッフ、女王の元広報担当者などを取材して
                                   脚本を製作。


(あらすじ)
ダイアナ元皇太子妃の事故直後、国民の関心は一斉にエリザベス女王に向けられます。
離婚後、民間人となった彼女の死に対して王室が出来ることは何もないはず。
女王はダイアナについてのコメントを避け続けますが、絶大な人気を誇るダイアナの死を
無視することは結果的に国民を無視することになってしまう。
この空気をいち早く察知し、王室と民衆の橋渡し的な役を担ったのは、
首相になったばかりの若きトニー・ブレアでした…。


という映画です。


このHPの映画紹介でも書いているが、
「離婚後、民間人となった彼女の死に対して王室が出来ることは何もないはず」
にもかかわらず、「ダイアナの死」は異様なほどの「世界の空気」を作り上げてしまった。
世界が泣いていた…らしい。
それは、ある意味ヒステリックでさえあったと思う。


涙にくれる民衆、宮殿の前に捧げられる花束の海、著名人のお悔やみのコメント、
それほど彼らはダイアナを愛していたのだろうか、と懐疑的で意地悪な見方さえしてしまう。
事故死までの世論はどうだったのか?
保守的なイギリス王室との確執も、チャールズの浮気(本気)も、ダイアナの私生活も、
すべてひっくるめて“どっちもどっち”と言う空気だったのではないだろうか。
ただ彼女のネタがゴシップ的にキラーコンテンツだったせいでマスメディアが過熱していた。
ただ 美しい元妃の突然の死 がすべての空気を一変させてしまった。
場の空気やマスコミの煽り、あるいはファッションの一部として悲しむポーズではなかったか?
と意地の悪い見方をしてしまう。
(真実から彼女の死を悲しんだ人も当然いたでしょう、が、それはエルトン・ジョン
  「キャンドル・イン・ザ・ウィンド」を歌った派手な葬式とは関係のない話だと思う)
あのときのクイーンの沈黙はある意味で当然のことのように思える。


国にたちこめる空気を察したブレアが動き、クイーンを説得、
最終的にテレビの生放送でエリザベス女王はお悔やみのコメントを発表する。
その直前に、女王がバッキンガム宮殿の前で車を降り民衆の前に立つ。
ダイアナに捧げられた花束の海、手向けられた花束の一つ一つを見て歩く。
そこには「ダイアナを殺したのはお前だ」と女王を糾弾するコメントも書かれている。
ひょっとしたら民衆の悪意がたちこめる空間かもしれない。
張りつめた緊張感、そのシーンで鳥肌が立ち鼻のあたりがツンと来た。


年をとるに連れ、保守的なものにシンパシーを感じることも少なくない。
女王は最後に 私は派手なパフォーマンスは好みません とブレアにはっきり言った。
僕が英国的なものにあこがれる半分くらいは あの国の保守的で頑固でトラッドな部分、
残りの半分は自然の美しさ、曇り空に湿った静謐な空気、
決して派手ではないが抑制の効いた風景の美しさだ。 


王室のエジンバラ公や皇太后のセリフが面白い。
「葬式に出るのはファンションデザイナーやホモばかりだ。
           セレブリティ? なんだセレブって?」
「ダイアナは死んでも厄介だな」
「あのニタニタ笑いのブレアめ」
フィリップ殿下役のジェームズ・クロムウェルが最高。
他の映画で彼を観るたびに、彼は英国王室の人だ と勝手に思っていた。
エジンバラ公フィリップ殿下、他に誰が出来るだろう。


いっしょに観たヒロはそれほど感動してないようだった。
普段は英国王室のゴシップ好きなのに…。
おそらく映画の主題がゴシップ的なものではないからだろう。
僕はと言えば、普段は王室や皇室の話には実のところ何の興味もない。
どちらかといえば、アイルランドの民衆の敵である英国王室は憎むべき存在だ。
でもこの映画では女王側、いや女王にシンパシーさえ抱いた。
政権や王政を揺るがしかねない緊迫した7日間だった。
事実に基づいた歴史ものの映画、真実を知ったつもりになった喜び。


ブレアと言えば、政権をとってから生まれた数々のイギリス映画を思い出す。 
1990年代の後半、「ブラス」「フル・モンティ」等を労働者階級を描いた映画が生まれた。
どれも僕の好きな映画ばかりだ。
パンフレットの解説にこれらの映画が生まれた裏には
労働党が政権を捕った時代背景があるのだと書かれていた。


最後に、この映画は誰のための映画か、トクをしたのは誰か、という視点。
まず、ブレア首相はどうだろう。
小心者のように描かれてはいたが、労働党でありながら一人毅然と女王を擁護する。
「彼女は幼い頃に元首となり、国民のために一生を捧げて来たんだ。
 最後まで威厳を保とうとしている女王がなぜ袋だたきにあわなければいけないんだ」
(エリザベスが推定相続人になったとき、彼女は弟が生まれることを強く望んだのだが)
ブレアは最後にはとても格好良く映った。
ブッシュと仲良しだというのが気になるところだが…。
それと、エリザベス女王本人の苦悩がシンパシーを呼ぶように作られている。
映画「クイーン」は本物のクイーンにとってもトクした映画だと思う。
時代の空気は果たして今後どう動いていくのか?
どっちにしても“場の空気”というのは恐ろしい、そして、ロクなもんじゃない。
ご用心!