ぷよねこ減量日記 2009/5-2016/1

旧ぷよねこ減量日記です。2016年1月に新旧交代してます。

2011/6/11 文楽観賞教室@文楽劇場

山から下界へ帰ると体がむくんだ感じになる。
たぶん水分排出の関係なのだろう。
すぐに戻るので問題はない。
加えて、目がかすむ。
数日、パソコン画面を見なかったので目を休められたと思ったが…。
信州は好天が続いた。
紫外線にやられたのかな?
どっちにしても歳はとりたくないね。
頭は50代で肉体は20代、理想だ。
うまく機能しないのは自明だけど…。
いや、頭も劣化の一途だった。


関西は梅雨のど真ん中、山登りの洗濯物も部屋干し。


…午後から雨あがる。
阪神電車日本橋へ出る。
国立文楽劇場で『文楽観賞教室』を見る。
5月は演芸と浪曲で2度足を運んだが文楽は2ヶ月ぶり。
ロビーはユネスコ関係の団体でごった返していた。
文楽観賞教室とはこんな催し。
キャストは若手&中堅が中心、国宝重鎮クラスはお休みのようです。


最初は『五条橋』という演目。
牛若丸(義経)と弁慶の生い立ちを描いた『鬼一方眼三略巻』という時代物があるそうな。
この『五条橋』はそのクライマックス、二人が初めて出会うシーンです。
そうそう、童謡にある有名な場面です。


  京の五条の橋の上 大のおとこの弁慶は 
  長い薙刀ふりあげて 牛若めがけて切りかかる


  牛若丸は飛び退いて 持った扇を投げつけて 
  来い来い来いと欄干の 上へあがって手を叩く


  前やうしろや左右 ここと思えば またあちら 
  燕のような早業に 鬼の弁慶あやまった    
                      (童謡「牛若丸」)


僕はこの曲を聴くと小学校の運動会を思い出します。
そして牛若丸と聞くと吉田義男を思い出します。


人形は牛若丸と弁慶の2体のみというシンプルな構成。
どちらかというと義太夫節より人形を見せるための入門編ですね。
意外にあっさりと弁慶がやられてしまいます。



続いて『解説 文楽へようこそ』
義太夫節の部と人形遣いの部に分けて技芸員さんがわかりやすく解説してくれます。
(舞台の写真 http://tsurusawaseijo.com/album/show/13


義太夫節は竹本相子大夫さんと鶴澤清丈さんの解説。
相子大夫さんは30代後半で奈良教育大学出身。
http://www.pat.hi-ho.ne.jp/aikochan/index.html
清丈さんは三味線弾きというよりもロックギタリストという風貌。
きっとギターも上手いんだろうな。
http://tsurusawaseijo.com/home


二人のトークが達者で驚く。
上方の中堅漫才師のしゃべくりを聞いているかのよう。
いろいろと実演してくれる。
仮名手本忠臣蔵の一場面を例に声色や三味線の使い分けを演じる。
早野勘平が逢い引きをしてるうちに主君の塩谷判官が刃傷沙汰になってしまう。
騒ぎを聞きつけ焦る勘平、しかし城内には入ることが出来ない。
勘平の場合、恋人のおかるだったらこんな感じ、さらにお姫様ならこんな感じ、と聞いてて楽しい。
チャリ場(コミカルな場面)もやってくれる。
文楽のチャリ場は楽しい。
何度でも聞きたい。
大夫も三味線も達者ですね。
この二人、きっと師匠のものまねとかやってそうだ。
竹本住大夫師匠なら…とか、鶴澤清治風にやってみると…とか。
(あくまで想像です)


そうそう、今回はちょっと変わった席で見た。
舞台に向かって右端の一段高い席、「床(ゆか)」の間近。
予約時、受付のお姉さんが「大夫や三味線が見たい方はこの席を好まれますよ」と言った。
僕は3列目だった。
すごく見やすい。
三味線、大夫は表情や汗までしっかり見えて迫力あり。
舞台も、字幕も一段高いので無理せずに見られます。
周りには誰もいなくて楽チンでした。
こんな感じです。


メインは『仮名手本忠臣蔵』の「二つ玉の段」「身売りの段」「早野勘平腹切の段」です。
3月に尼崎で見た演目とまったく同じです。
(感想書いてませんが…http://d.hatena.ne.jp/shioshiohida/20110319/1300498069


切り場(クライマックス)の勘平腹切を語るのは竹本文字久大夫(もじひさだゆう)さん。
住大夫の直弟子で、NHKのドキュメンタリーで師匠の罵声を浴びながら稽古してた人です。
1955年生まれ、僕より年上なんですね。
http://www002.upp.so-net.ne.jp/bunraku/c1.htm
元々は新国劇の役者さんだったらしい。
劇団が倒産したのち、文楽の研修生になった人。
住大夫師匠に「わしよりエエ声持ってんのに…!」と叱られてたが、良く通る声です。
聞きやすい浄瑠璃です。
三味線はなんと住大夫の相方 野澤錦糸さんじゃないですか。
いつもは国宝の隣で控えめで温厚な感じの錦糸さんですが今日は別人のようでした。
顔が恐い。
住大夫に、文字久をちょっと鍛えてやってくれや、とでも言われたのでしょうか。
(あくまで想像です)
文字久大夫も語り終えてから住大夫師匠の前へ行くのでしょう。
「師匠、聞いていただきましたか」
住大夫、無言。
文字久、無言。
10分ほどして住大夫「おまえ、歳なんぼになってん? 」
ああ、恐い。
(あくまで想像でっせ)


いや、実際には文字久大夫よかったです。
変な先入観があるから厳しい見方になってしまったかもしれない。
三浦しをん『仏果を得ず』の健大夫を思い出す。
無酸素、全力疾走、大熱演。
勘平腹切は誰でもそうなるのでしょう。
一度、住大夫で聞いてみたい。


早野勘平を遣ったのは実力者 吉田玉女さん。
この人を見るといつも「よしむら」の吉村さんを思い出す。
Twitterでおなじみの吉田文昇さんが重要な役 与一兵衛女房(老母)を遣う。
この物語、最後に天涯孤独となる婆さんが哀れですよね。


今回の文楽教室、嬉しいことにパンフレット(筋書き)が無料でした。



終演、先日K輪さんに教えてもらった千日前の『丑寅(うしとら)』で独酌。
料理(安い!)も日本酒の種類もかなり実力派。
実に雰囲気のある酒場(立ち飲み)でした。
藤島大さんもここ気に入るだろうな、とキリンの中瓶飲みながら思う。
丑寅http://r.tabelog.com/osaka/A2702/A270202/27017138/


…WEBで村上春樹 のバルセロナでのスピーチ全文を読む。
僕は村上氏の態度を支持する。
藤原新也がホームページでこのスピーチを厳しいトーンで批判している。
二人はおそらく同世代。
セクト内ゲバとは関係ないがどこか学生運動を思い出した。
同じ方向を向いてるのに同調出来ないというのは悔しい。