ぷよねこ減量日記 2009/5-2016/1

旧ぷよねこ減量日記です。2016年1月に新旧交代してます。

2011/11/22 美術の時間

秋晴れ、冷え込む。
いつもより早めの朝食はベーグル&クリームチーズと具だくさんの野菜スープ。
野菜スープの中身はキャベツ、人参、ジャガイモ、タマネギ、トマトにベーコンの定番。


今日は一人遊びの日。
美術、体育、音楽の順で3時限レッスンです。
夙川から阪急電車で京都河原町へ出る。
四条大橋を渡り鴨川沿いを北上、三条で東へ折れて岡崎公園まで歩く。
途中、白川の疎水沿いの道を歩く。
三条通からの抜け道なのに観光客が多い。


三条京阪には今日も高山彦九郎が御所にひれ伏してました。
吉村昭の『彦九郎山河』、借りただけで読まずに返してしまった。
いつか読もう。
読んでこの像を見たら感慨も違うだろう。


ワシントン・ナショナル・ギャラリー展@京都市美術館
今月の7日、近くの京都トラベラーズインに泊まった日の朝に行こうとしたら月曜で休館日だった。
開催も残り少ないので駆け込みで行く。
と、ここでも老人力が噴出す。
ヒロからメールが届く。
「チケット忘れたんとちがう?」
Nさんからいただいた招待券を家に忘れてきた!
ま、しゃあない。
と動じないところも老人力か。


もったいない話だが当日券を買う。


並ばずに入館出来た。
しかし、館内は東京駅のコンコースのように混んでいる。
初めての試みでイアホンガイドを借りた。
歌舞伎のイアホンガイドより安く500円。
絵の番号を打ち込むと解説が聞ける。
なかなか絵まで近づくことが出来ない。
二重三重の人垣。
幸い中高年が多く人垣の丈が低いので絵を覗き見ることは出来る。
ここにいる全員が思っていることだろうけどガランとした空間で静かに見たい。
出来れば独り占めしたい。


正直、絵画はよくわからない。
よく解らない上にたまたまだけど有料入場者なので好き勝手に書く。
混んでいることを除けばこの展覧会は悪くない。
(入場制限がないだけマシなのだとヒロが言う)
魅力的な絵が多い。
つまらない絵がない。
もちろん画家たちは超有名な面々。
コローがあり、モネがあり、マネがあり、
セザンヌがあり、ロートレックがあり、ルノワールがあり、
スーラがあり、ゴーギャンがあり、ゴッホがある。
やっぱりいいものはいいと思わせる。
出来れば独り占めしたい。


主催の責任者であるNさんから東京から京都へ運ぶ時の話を聞いた。
そりゃこれだけのコレクションを移動させるのは並大抵ではないだろう。


展示数が多くないのも嬉しい。
ときに展示数を増やそうと見る価値のないものを並べる展覧会も多い。
若き日のデッサンやスケッチなど美大生や美術ファンにとって面白いものでも僕には退屈だ。
見ているうちに疲れてしまう。
見る側の集中力も1時間ちょっとくらいしか保たない。


数週間前に見に行ったヒロが気に入ったのはロートレックの絵。
縦25センチ横20センチくらいの小さな作品だ。(写真左端)
僕は月並みですがモネの日傘とひまわり畑の2点、それとスーラの点描が好きだ。


モネの「日傘の女性 モネ夫人と息子」は初夏の風を感じる。
画を見ていると爽やかな薫風が頬を撫でていくようだ。
と書いてどこか他人の感想を聞いてるみたいな思いにとらわれる。
そうなのだ。
僕が絵について何か感想を話したり書いたりする時、いつもそんな感覚がある。
決して嘘を書いてるわけじゃないのにどこか空々しい。
おそらく絵そのものにはあまり興味がないのだろう。
他人が絵を評しても、ホントかな? ええかっこしてるんと違うの? と勘ぐってしまう。
この展覧会でも絵そのものより画家たちの人生に興味を惹かれるのだ。


それでも時々、絵画展を見に行く。
2008年に東京で見た『ムンク展』ではこんな感想を書いている。


   昼食後、上野公園の国立西洋美術館へ行く。
   平日なのに公園も美術館も結構な人出だ。


   先ずムンクの伝記DVDを観る。
   19世紀中頃に生まれ1944年に死んだ。
   ノルウェイの国民的画家でクローネ札にも肖像が描かれている。
   ちなみにフィンランドのマルカ紙幣には陸上長距離のパーヴォ・ヌルミが描かれていたが
   現在はユーロに変わってしまったためにヌルミの紙幣は消えた。(クローネは健在)
   ムンクは晩年、全盲となったが、創作活動は続けた。
   享年80、あんな暗い絵ばかりを描いた画家が80まで生きてたのは意外だ。
   あの有名な「叫び」が代表作だが今回は来日していない。


   108点の作品を観て回る。
   ムンクは部屋全体に何枚もの絵を飾る「装飾画家」としての一面があるらしい。
   今回のムンク展はその「装飾プロジェクト」に焦点を当てたもの。


   しかし、やはりどれも暗くて気味の悪い絵ばかりだ。
   絵から伝わってくるのは、死、病、不安、絶望…。
   にもかかわらず、どこか魅力に満ちた絵、目を釘付けにする絵だ。
   解説文に「この時期、ムンクは明るい色づかいで生命の躍動感を描いた」とある。
   浜辺で人々が遊ぶ絵が展示されているが、どうみてもゾンビの群れにしか見えない。
   明るい色をつかった複数人「叫び」である。


   展示はテーマ別にいくつかの部屋に分かれている。
   「マックス・リンデ邸の装飾」という部屋がある。
   ある年、ドイツの歯科医マックス・リンデが子供部屋の装飾画をムンクに依頼した。
   注文内容は、子供にみだらな影響を与えない健康的な風景画 だった。
   でも、これって…?と思う。
   依頼する相手が間違っているよな、と思う。
   ムンクは7点の装飾画を3年がかりで描いた。
   果たして、依頼主はその作品を気に入らず不採用、絵はムンクの元に送り返された。
   理由はその中の1点「公園で愛を交わす男女」という風景画の片隅に、
   公園のベンチで激しく抱き合う男女が描かれていて子供向きではないというもの。
   でも、おそらくムンクの絵が気持ち悪かったのだと思う。
   その中の「浜辺のダンス」なんて完全にゾンビのダンスだもの。
   ムンクに子供部屋の絵を発注するのがそもそもの間違いですよね。
   幼稚園のお部屋を飾る絵をつげ義春に頼んでしまったようなものではないだろうか。


   それでも今回のムンク展のポスターになった「不安」や「絶望」、
   あるいは「吸血鬼」と題された絵はさすがに存在感がある。
   「不安」も「絶望」もあの「叫び」と同じ。
   橋の上の構図、同じ赤い不吉な空が描かれる。
   歩いていてその絵の前に来ると、ちょっと待て、と足を止める力がある。


   僕は美術に暗い。
   でも最近、美術館に行くのは美術館的な雰囲気が好きなのと、
   絵画そのものより画家たちの物語に興味があるからだ。
   モディリアーニも、スーラも、もちろんゴッホも波乱に満ちた物語がある。
   でも、ムンク
   あんな絵を描く人間は80歳も生きるかな?


   ムンク展のチケットで常設展も観ることが出来る。
   宗教画はこってりと脂っこい。
   看板作品であるクロード・モネの「睡蓮」をじっくり観る。


   美術館のカフェからの眺めは緑の木々が美しくなかなかのもの。
   ムンク展にちなんでノルウェイ産の地ビールやスモークサーモンなどのセットがある。
   ぐっと我慢して珈琲を飲む。

                         (2007年10月23日)


モディリアーニと妻ジャンヌの物語展」を松江で見ている。
その時の日記に書いたこと。


   島根県立美術館へ行く。
   「モディリアーニと妻ジャンヌの物語展」
   エントランスのホールは全面がガラス、宍道湖に浮かんだ島に立っているような錯覚。
   地方の美術館はどこも素晴らしい。
   日曜とあって混んでいた。
   でも、人ごみで画が見えないというほどではない。


   「エコール・ド・パリ」20世紀初頭のモンパルナス。
   画家モディリアーニは32歳で18歳の画学生と恋に落ちる。
   彼女の名前はジャンヌ・エピュテルヌ。
   しかし二人のロマンスはモディリアーニの死(享年36)によって終止符が打たれる。
   ジャンヌは彼の後を追いアパートから身を投げ若き命を絶った。


   展覧会ではモディリアーニとジャンヌの遺作の数々、
   それに彼らの交換した手紙や絵葉書、写真、それに図書館の貸し出し券なんかも展示してある。
   才のある人というのは死んでからも私生活を見せ物にされるのだ。


   妻のジャンヌの絵も素晴らしい。
   でも、モディリアーニの絵はもっと凄い。
   絵の放つパワーが格段に違う。
   僕のような素人が一目見ただけで、これは、むむむ、と立ち尽くしてしまう。
   これは、むむむ、とは何と表現力のないことか。
   美術には暗いんです。
   いや、でもモディリアーニの絵、一見の価値ありでした。


   実はそれと同じくらい驚いたのが本人の男っぷり。
   モディリアーニってあのなよっとした感じの人物画の印象から本人も
   線の細いやせ細って眼鏡をかけたインテリの変人かな、と思いこんでいた。
   しかし、実物は違った。
   野性的ないい男なのだ。
   今で言えば俳優のジョージ・クルーニー、あるいは若き日の細川俊之か。
   加えて天才的な絵の才覚、さぞかしモテただろうと思われる。
   伝記映画でも、かの二枚目俳優ジェラール・フィリップ
   最近ではアンディ・ガルシアが演じている。
   妻のジャンヌも負けてはいない。
   16歳のポートレートを見るとミステリアスな美女。
   まさに絵に描いたような美男美女のカップルだった。

                       (2007年10月7日)

絵画展に行くと毎度同じようなことを書いている。


…美術館を出ると周りは観光客で大賑わい。
今月始めに忘れた傘を取りに「京都トラベラーズイン」へ行く。
混雑を避けてホテルのレストランで昼食にする。
ここは落ち着いて窓からの眺めもいい。
朝食は美味しいからきっとランチだって美味しいに違いない。
他の客はシーフードフライ定食を注文している。
軽めにとドライカレーにする。

これがパラリと炒められ、スパイシーで旨い。
味噌汁つきで850円。
トラベラーズインの食堂、ここいいですね。