2012/1/18 なら独酌@「蔵」

天理から奈良市内に戻ると6時過ぎ、日はとっぷりと暮れている。
ならまちのアーケードから少し逸れた路地にある『蔵』の暖簾をくぐる。
この店は去年の6月に次いで2度目だ。
先客のいないのを幸いに写真を撮らせてもらう。
いいでしょ、この雰囲気。


元々は古い呉服屋の土蔵だった建物。
昭和29年開業、居酒屋として開業してからも長い歴史がある。
土蔵としては築130年だそう。
この平城京において130年はついこの前、昨日や一昨日みたいのものかも。
見よ、この艶光りしたカウンター。
「時代劇みたいですね」と店主に言う。
江戸時代にカウンターなんてあったのかは知らねども。


この店は店主も若い従業員も気持ちのいい人たちだ。
他に客がいないので40代らしき店主と少し話をした。
以前は隣が鮨屋だったらしい。
この店とは裏側でつながっている。
鮨屋の大将が引退して今はこの居酒屋が別室として使っている。
僕が飲んでいる間も、奥空いてる? と常連客らしき人が来る。


昔は続き棟にパチンコ屋があったらしい。
そういえば僕らが子供の頃は近所にパチンコ屋がいっぱいあった。
2列くらいの小さなパチンコ屋、地元商店街の人が経営し、客も近所の人。
いつのまにかパチンコ屋も株式会社になり巨大アミューズメントセンターになってしまった。
スーパーや本屋やレコード屋と同じ、競争原理のなせる終着点。


奈良市内を走って汗をかいた。
エビスの小瓶を飲む。
自転車で奈良市内を走ると起伏があるのがわかる。
東にある若草山に向かって高度が上がっていくのだ。
おでんを2種でビールを飲み終えると日本酒とする。
ここの基本は「貴仙寿」、奈良の豊澤酒蔵のお酒。
壁に無濾過生原酒 純米『櫛羅(くじら)』の文字。
これをいただきましょう。
グラスに細かい泡が浮かぶ。
米の色がいい。


聞けば御所市(ごせ)の酒だという。
千代酒造?
手土産に買った『篠峯(しのみね)』の蔵と同じだ!
ああ、そうだったのか。
微発砲が舌を刺激し辛口かつ濃厚。
旨し。
櫛羅とは葛城山麓の御所あたり一帯の古名であるらしい。



奈良の御所あたりは酒どころだ。
他にも『風の森』の油長酒造という蔵がある。
朝ドラ『カーネーション』の尾野真千子は県立御所高校出身。
出身地は旧西吉野村、一度行ったことがあるけど人里離れた山奥の村です。
お酒とは何の関係もないけど。


メニューの筆頭に「きも焼き」がある。
名物なんだろうか。
トイレへ行くときに厨房を通る。
(昔の店って便所は店の最奥にあるんですよね)
その際、大きな瓶に入った黒光するタレが目に止まった。
焼き鳥のタレだそう。
きも焼きに使うのだそう。
こ、これは旨いに決まっている。
きも焼き800円、半分が400円。
半分を注文して待つこと10分。


出てきたのがこちら。

山椒の香りがする。
レバー、砂ずり、玉ひもが濃厚なタレにつけて焼いてある。
きも焼きというよりモツ焼きです。
これだけで瓶ビール大と2合は飲める。
東京のガード下、たとえば新宿の思い出横町あたりで出てきそうな一品。


去年来たときの日記はこちら。
http://d.hatena.ne.jp/shioshiohida/20110629/1309322203
かの太田和彦さんもガイド本『居酒屋味酒覧』でこの店を、神話のような居酒屋だった、と書き「名居心地」の認定。


ホッピー650円は少々お高いような気がするが量が多いのかもしれない。
僕のお勘定、今日は締めて1970円でした。


名居心地、確かにそう。
店には低くラジオかテレビの音声が流れるだけ。
座っているだけで静かな気持になる。


ふと考えてみた。
奈良呑みがなぜ落ち着くのか?
歩いてすぐのところに千年前からそこに建っている寺院がある。
目と鼻の先に大仏がどっかと座り、阿修羅がすっくと立ち、弥勒菩薩が瞑想している。
なるほどそういうことか。
ほろ酔いでブロンプトンを押しながら路地を歩くと目の前に五重塔があった。