2012/5/31 ハワイの風に吹かれて

映画『ファミリー・ツリー』@シネリーブル神戸を観ました。
不覚にも、不意に、正確に、二度落涙。
   


今週二度目のシネリーブル神戸。
今日も貯まったポイントで見る。
『ヘルプ』『ミッドナイト・イン・パリ』、そして『ファミリー・ツリー』
ポイントで3本見た。
整理番号が51番、すでに予告編が始まっていたので僕がラスト3くらいだろうか。
150人くらいのスクリーンだから3割の入りか。
遅れたので前から2列目だった。
昔の映画館は最前列でのけぞって見ていた記憶がある。
今はスクリーンから距離をとってあって見やすくなった。


予告編で何度か見たが触手が動かず、「見たい映画」リストには入れてなかった。
先日、岩佐徹さんがブログで95点をつけ絶賛されていた。
http://toruiwa.exblog.jp/15946044/
いわく、“今年見た中でNo1だったのは「マネーボール」と「わが母の記」でしたが、入れ替わりました。”
いわく、“映画館を出るときの気分がとてもよかったです。”
これまで岩佐氏が95点以上つけたオススメ映画を見てきてほぼ9割は正解でした。
じゃあ、見てやろうじゃないか、とエラそうに腰をあげた次第。
で、冒頭に書いたように二度泣かされてしまいました。
“泣ける”映画とは紹介してなかったので不意の涙でした。
でも、気持ちいい感情でした。


冒頭でジョージ・クルーニーがつぶやいている。
「ハワイでの生活はパラダイスだろってみんな言うけど、
 酒飲んでサーフィンしまくってるんだろって羨ましがる奴もいるけど、
 とんでもない。
 サーフィンなんて15年もしてない。
 最近、妻がボート事故に遭い、意識は戻らないだろうって言う。
 子供たちは妻にまかせっきりだった。
 その上、150年間受け継いできた一族の広大な土地を売る問題もある。」

     


母親をちょっと特殊なケースで失うことになった家族。
父(ジョージ・クルーニー)と17歳と10歳の娘。
ありがちなことだが全てを母親まかせにしていた父は呆然となる。
それでも父親として頑張ってみるのだけれどこれが全く通用しない。
原題は「子孫たち」という意味。
今は見かけは白人(ハレオ)だれど2世代前は原住民の血を受け継いでいる。
先祖は美しきカウアイの土地を所有し、それは一財産なのだけれど悩みの種でもある。


考えてみればアメリカなんだから当たり前なんだけど、ハワイにも普通に白人が働いて何代も住んでるんだ。 
イメージではポリネシアの原住民や小錦みたいなサモア系や日系人をはじめとするアジア系ばっかだと思っていた。
でも、やっぱりアメリカ国内でもハワイって特別なんだと思った。
「いいなあ、ハワイに住んでるなんて毎日楽園じゃないか」って感じ。
主人公は不動産専門の弁護士で高収入でハワイ諸島を仕事で飛び回って土地も所有し家にはプールが当たり前のようにある。
誰もがうらやむような生活、もちろん僕だってそんな暮らしがしたい。
でも、人の幸せってのはそれだけじゃないんだなって映画を見て思った。
いろいろ面倒なことがあるんですよ。
以前に、fatfatさんがこの日記にコメントしてくれた.
「これからの時代は金有る無しやない。連帯か孤独かやで。」
この映画のメッセージはまさにこれなのだ。


岩佐さんが書いてるようにジョージ・クルーニーも渋くてカッコイイ男じゃなく新境地でいい。
17歳の娘役の子がちょっと美人でこれもいい。
脇役がいい。
僕の助演賞候補は3人いる。
嫁さん(意識不明の重体で寝たまま)のお父さんがいい。
血はつながっていないはずなのにジョージ・クルーニーにまゆ毛が似てる。
最愛の娘がとんでもないことになってしまって爺さんは義理の息子や孫に当たり散らす。
おまえと結婚しなかったらこんなことにならなかった。
お前がケチらずに娘のボートを買ってくれてたら事故に遭わずに済んだ。
この孫娘は美人だけどお前に似て性格は悪い、みたいことをグチグチと言うクソジジイだ。
そりゃ爺さんにしてみりゃやりきれないと思う。
自分の嫁さんは認知症だし、娘はこんなになっちゃうし。
同情するけど憎たらしい。
でも後半、この爺さんに泣かされた。
それは映画を見てのお楽しみ。
アメリカも日本もこのあたりの感情の機微は同じなんですね。
    


もう一人は高校生の娘の男友達シド。
家族でもないのになぜか一緒に行動する。
こういう奴っていますよね。
で、こいつが真っ当な大人から見れば典型的なバカ、絵に描いたような愚か者。
そのくせ自分以外は全部バカなんて思ってるいまどきの若者だ。
父ジョージ・クルーニーとしては、なんでよりによってこんな奴が娘の友達なんだ? って思う。
当然だよ。
僕だってそう思う。
最初の挨拶でなれなれしく肩を抱いて「よう、アニキ」なんて言う。
ジョージ・クルーニーは「二度とするな!」と警告するがへらへらして全く効かない。
シドはそんな奴。
刺青や鼻ピアスしてないだけマシか。
コイツがどういうわけかくだんの爺さん(義父)のとこにまで着いてくる。
認知症の義母をバカにしたような無神経な台詞を吐いて爺さんに殴られたりする。
しょうもない奴。
だけど、一緒にいるうちに、ちょっと待てよ、って思うようになる。
こいつイイとこあるじゃん。
ここでも評価の逆転が起こる。
最低な奴、どうしようもない奴って思わせといて…。
    


もう一人は妻の浮気相手の嫁さん。
名前は確かジュディ、そう、“青い目のジュディ”だ。
幸薄そうな雰囲気が男心をそそるのだ。
彼女が一人で病室に見舞いにくる。
昏睡状態の夫の浮気相手に話しかける。
ちょっと見てられなくなる。
不憫に思う。
そこがまたいい。
アン・ヘッシュって女優がいたけど彼女を儚げにした感じ。


二度落涙、涙が出たのはどうしてか?
他人事には思えない。
身につまされたからだ。
いや、妻に浮気されたってポイントじゃないですよ。
緩和治療を続けているシリアスな病状の身内がいることです。
いくら高齢でも簡単には割り切れないことは多い。


監督はアレキサンダー・ペイン。
ジャック・ニコルソンの『アバウト・シュミット』の監督だ。
そういえばこの映画も老いた妻が急死、その妻が浮気してたって話だった。
憶えてる名台詞がある。
妻と暮らしてる頃の老いたジャック・ニコルソンのモノローグ。
「時々、朝目覚めて思う。隣に寝ているこの婆さんは誰だ?」
これには笑った。
いつか僕もそう思うのだろうかって。
『サイドウェイ』という映画も誰かに勧められたけどまだ見ていない。


舞台はずっとハワイイ。
オアフ、ビッグアイランド、カウアイ。
映画にはずっとカフェのBGMのようにハワイアン・スラックキー・ギターが流れている。
それが効果的、シリアスな場面も乾いた美しい音色が世界をイージーにしてくれる。
     
    

1997年にハワイ島に一度だけ行ったことがある。
もう15年前だ。
免許とりたてて日本国内では一度も運転したことないのにハワイならいいだろうと一人でドライブ旅行した。
ハワイ島をヒロを起点に一週間かけて反時計回りに一周した。
はじめての自動車旅行、あれは楽しかったなあ。
HMVなどのCDショップでスラックキー・ギターのアルバムを何枚も買って帰った。
ケアリ・レイシェル、ハパ、イズラエル・カマカイオレ、 山内雄喜、などなど。
ウクレレの名手ハーブ・オオタのCDも買った。
今でも夏になると聞いている。

これが『ファミリー・ツリー』のラストカット。
いいんですよ、この固定カメラの長回しが。
 
ハッピーエンド?
前途多難?
とにかく、この映画の主人公(ジョージ・クルーニー)はいろいろ背負っていて大変なのだ。
斉藤佑ちゃんじゃないけど、“持ってるんじゃなくて背負ってます ”なのだ。
半分くらいは自分で巻いた種ではあるけどまあ人生ってそういうものだから。
娘さんがいるお父さんにはぜひとも見て感想聞きたいな。