2012/7/10 村上春樹の箴言

新刊エッセイ『サラダ好きのライオン 村上ラヂオ3』を味わいながら読んでいる。
村上春樹の小説やエッセイを読んで、ふむふむ、そうだよな、と思うことは多々ある。
なかでも僕が日常を暮らす中で箴言として心に抱いているのはこれだ。


   女性は怒りたい理由があるから怒るのではなく怒りたい時に怒るのだ。


もちろん、だから…無駄な抵抗はしないほうがいい、と続くわけですが。
この言葉に僕は何度 救われたことか。
最初に読んだのは人生相談のようなコラムだったと思う。
過去にこの話について何度か書いている村上氏が今回の新刊でもまた書いていた。
自分に言い聞かせるように。
これにはくすっと笑ってしまい、いっきに親近感が増した。
ノーベル賞候補の小説家もけっこう苦労してるんですね。
   

   



今回のはこの教訓に関してコンパクトにまとまっていて実にためになる文章なので抜粋して貼りつけておこう。
ブルテリアしか見たことがない」というタイトルのエッセイ。
サマセット・モームの短編小説の登場人物の台詞(タイトルと重なる)についてふれた後、こう続けている。


   僕もまだ一人の女性としか結婚したことがなく、「ブルテリアしか見たことがない」無知蒙昧な一人ではあるけれど、
   それでも厚かましく僕なりに、女性全般について長年抱いている説がひとつあります。
   それは「女性は怒りたいことがあるから怒るのではなく、怒りたいときがあるから怒るのだ」ということだ。
   男が怒る場合、そこにはおおむね「こうこうこうだから怒る」という筋道がある。(それが適切であるかはともかく)。
   でも、女の人は、僕が見たところ、多くの場合そうではない。
   普段はとくにめくじら立てるでもなく、穏やかに見過ごしていることでも、
   それが怒る時期にたまたまあたっていれば怒るし、それもかなり真剣に怒る。
   俗にいう「地雷を踏んだ」みたいなことになってしまう。
   結婚した当初は、何が起こっているかのさっぱり理解できなかったのだが、
   回数を重ねるうちに「そうか、そういうことなのか」とおおよその仕組みがわかってきた。 
   相手が怒っているときには防御を固め、おとなしくサンドバッグ状態になるしかない。
   自然災害に正面から立ち向かってもまず勝ち目がないからだ。
   賢明な水夫のようにただ首をすくめ、何か違うことを考えながら、無法な台風が過ぎ去るのを待つ。


                              (村上春樹『サラダ好きのライオン 村上ラヂオ3』16頁)



地雷を踏む〜首をすくめ耐える〜事態が一段落したらまた普通に暮らす。
これが共同生活を平穏無事に送るための実用的な知恵なのですね。
村上さんもそうなんですか、僕もそうです。
世界にたったひとりでも有名人の理解者がいることは救いでもあります。
実は今日も地雷を踏んでしまいました。
理由なんてありません。
少なくとも僕はそう思っています。
嵐ほど激しくはないけど今回は梅雨の空模様のような感じでじめじめしてます。
みんなそうなんですよね、と思ったがそうじゃない人もいるらしい。
なにそれ?と全く理解出来ないという人とは飲めないなと思う。


今回のエッセイでは特にこの部分に発見がありました。
>それもかなり真剣に怒る。
そう、ちょっとハッタリで脅しをかけているって感じじゃないんですよね。
本気で怒っているみたいなんです。
だから冗談はまったく通用しない。
くれぐれも要注意です。


前にも書いたが『雑文集』という本のなかにも同様の主旨の文章がある。
氏の友人であるイラストレータ安西水丸さんの娘さんの結婚式でのご挨拶。
(実際には村上氏は欠席して誰かに代読してもらったらしい)
ハルキさんは挨拶は短いのがいいとのポリシー。
本人もこれ以上短くするのは難しいと書いている。
短いので全文のせちゃいます。


  かおりさん、ご結婚おめでとうございます。僕も一度しか結婚したことがないので、
  くわしいことはよくわかりませんが、結婚というのはいいときにはとてもいいものです。
  あまりよくないときには、僕はなにかべつのことを考えるようにしています。
  でも、いいときにはとてもいいものです。いいときがたくさんあることをお祈りしています。
  お幸せに。
                              (『村上春樹 雑文集』より)


村上春樹 雑文集

村上春樹 雑文集


共同生活における軋轢の問題は村上さんの心に重い影を落としていることがうかがわれます。


もう一人、阪神間在住の賢人 内田樹さんにも僕が心に刻み込んでいる箴言がある。
良質のユーモアと真理を指摘する一文。


  人生はミスマッチである。私たちは学校の選択を間違え、就職先を間違え、配偶者の選択を間違う。
  それでもけっこう幸福に生きることができる。
     
                   (内田樹『こんな日本でよかったねー構造主義的日本論』より)


これは迷える現代人の大いなる救いだと思う。
7勝8敗の力士が不幸であるとは限らない。


地雷を踏んだ日はこんなことを書いて爆風が止むのを待っている。



…梅雨の晴れ間が続く。
午前中は筋トレ、体重は2010年以来の70キロ台になる。
午後から北口のヒロ珈琲へ豆を買いに出る。西風が強い。
夕方、嵐が小康状態となったのでヒロとスシローへ行き二人で14皿食べる。


DVD で映画『ゼブラーマン ゼブラシティの逆襲』(三池崇史 監督)を見る。
お目当ては悪役のゼブラクイーンを演じた仲里依沙。
http://www.youtube.com/watch?v=4svHeqM-QQo
    


ダンスも歌も、谷間を強調したボンテージも、全部ひっくるめて才能あるなあ。
ま、難しいことは考えないで(当たり前ですが)90分見てました。