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2016/1/29 天満 de「う」吞み

ラズウエル細木の「う」という漫画がある。
呉服屋の若旦那 藤岡椒太郎がひたすら鰻を美味しく食べ続ける。
それだけの話なのにコミックが4巻も出ている。
僕は4回以上読んでいて今回5度目を読み終えた。
バカですね。
世の中にはもっと大事なことがあるのに、と自分でも思う。

 


「う」を読むと当然のことながら鰻が食べたくなる。
でも、実際にうな重を食べにいったことはない。
うな重なんて10年以上食べてない。(ひつまぶしは何度かある)
今日、嫁は友だちとランチに行く。
彼女は鰻が苦手で我が家の外食に鰻という選択肢はない。
雨降りだけど、これがチャンスとばかりに独りで鰻を食べに行く。
天神橋商店街の慶応3年創業の老舗「魚伊(うおい)」
酒友の阿部さんに紹介してもらった店。


午後2時の天神橋五丁目。
一階のカウンターにひとり座る。
二階のテーブル席には中国人観光客の若い女性が二人。
店の前でも中国人グループが興味深そうに店を覗いている。
中国でも鰻は人気なのだろうか。


うな重(上)とう巻きのセットを注文する。
この店は、というか鰻屋はほとんど炭火焼きだ。
待つ時間がう吞みの醍醐味だと漫画にあった。
滋賀の地酒「松の司」の熱燗とう巻きで待つ。 


焼きたての蒲焼きは旨い!

大阪風の蒲焼きは腹開きで蒸さずに直焼き。

パリッと香ばしい。

うなぎってこんなに美味しかったのか、とため息が出る。
この店は嬉しいことにワンカップ地酒がある。
「奥播磨」の冷えたので蒲焼きを食べる。
お酒2合とうな重の上(+う巻き)で4050円。
ひとり鰻、年に二回くらい許されるだろうか。


鰻と言えば…
四国に半年ほど住んでいた頃のことを思い出す。
今から25年ほど前、世の中がバブルに沸いた時代。
四国東通 営業部長のTさんが昼飯によく鰻屋に連れて行ってくれた。
高松の郊外、小さな川沿いにあった店。
Tさんは五十代だったか。
数年後、癌で亡くなってしまった。
この歳になってわかるけどTさん奮発してたんだな。
(領収書が切れたのかも)
まだ若かった僕は鰻は好きだったもののたいして有りがたみを感じもせず、

平然とご馳走になっていた。
いまTさんが亡くなったのと同じくらいの年齢になってうな重の美味しさと価値を知る。 


ほろ酔い。
まだ雨が降っている。
天神橋商店街を北へ。
うな重を食べながら行き先は決めていた。
まず「タイムリー」で珈琲豆を買う。
焙煎を待ちながらサービスのブレンドコーヒーとゆで卵。
雨の天七を眺めながら豆が焼けるのを待つ。


     

 

ブックカフェ「ワイルドバンチ」へ行く。
最後に行ったのはいつのことだったろう。
日記によると2012年の7月、鞴座のライブを聴きに行ったとき以来だ。
3年以上、そんな前だっけか?
もしかしたら記述がないだけかもしれない。
去年7月に店主の庄内さんが病死した。
ホームページで10月に再開したことを知った。

 

店主がいなくなった店へ行くのは緊張する。

庄内さんがいない景色が想像出来ないのだ。

もしかしていたりして、なんて思う。

いたらどうしよう。


店は変わってなかった。
ちょっとさっぱりと小ぎれいになった感じはある。
カウンターに店を引継いだ庄内さんと同年輩の白髪の人と

カウンターの中に40〜50代くらいの男性スタッフがいた。
ギネスを注文する。


余計なことかも、と思いつつバックパックからラグビーマガジンを取り出し二人に見せる。
おそらくラグビーマガジンにワイルドバンチと庄内さんのことが載っているとは知らないだろうと。
二人とも驚いて順番にコラムを読み始めた。


「その雑誌、さしあげます」
庄内さんを知る人に読んでもらいたかった。
「二冊ありますから」なんてね。
(コラムを読んだ人にはわかりますよね)


庄内さんのことをいろいろ話す。
・ラグビー好きなのは仲間も知ってた。シーズンには花園に誘われたけど誰もいかなかった。
 カンテキ(七輪)持って見に行くんや、とも言ってた。おおらかな時代の話。
・藤島さんとはなにやら難しい哲学みたいな話をして楽しそうだった。
・気に入った本があると「それ、やるわ」と言われたことがあるとか。
 自称弟子のそのスタッフには、商売なんやから絶対売らないとアカン、と言ってたのに。


ラグマガのお礼にとギネスはご馳走になる。
久々に“本好きの先輩の本棚”で猟書。
古本の森で見つけた3冊を買う。
虫明亜呂無「ラグビーへの招待」(平凡社カラー新書)
マイク・モラスキー「日本の居酒屋文化」(光文社新書)モラスキーは庄内さんイチオシだった。
良い居酒屋には必ず規律(ディシプリン)が存在する。
常連でも無かったけど庄内さんには映画や本をいろいろ教えてもらったなあ。

成瀬巳喜男作品では「流れる」は必見だとか、斉藤耕一監督の「無宿(やどなし)」は

ロベルト・アンリコの「冒険者たち」だとか云々。

坪内祐三「まぼろしの大阪」(ぴあ) これは著者サイン入り。
半額にしてくれて1500円、端数とって1000円にしてくれた。
端数って…。
ありがとうございます。