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クライミング初体験記 2006/4/13

雨が降りそうな陰鬱な空。
7時半過ぎに起床、今日は午前中に予定がある。
体重70.25キロ。

…9時に自宅を出る。
西ノ宮駅から塚本駅まで15分ほど。
駅のロータリーから歩き出す。
雨がぽつりと落ちてくる。
居酒屋、美容院、交番、コンビニが並ぶ路地を歩く。
淀川区塚本、○○鉄工所、○×溶接所、××工作所、
アセチレンの光と音、工業油の臭い、「貸文化住宅」ありますの張り紙、
日当たりの悪い○×サニーハイツ、銭湯の看板…、
ボクシングジムの似合う風景を15分ほど歩く。

シティ・ロック・ジムは新幹線の高架沿いにあった。
前が駐車スペース、倉庫のような建屋の外壁は10メートルのクライミングウォール。
中に入って受け付けを済ませる。
レッスン料(レンタルシューズ代込)で4200円也。
屋内にはSF映画のセットのような人工壁。
怪物の体内に潜入したかのようだ。
ジェーン・フォンダが主演した宇宙映画「バーバレラ」を思い出した。
平日の午前中とあってクライマーは少ない。
フランス人らしき外人が数人、若い男が二人ほど。
あと70歳近いだろうという職人風の老クライマーが壁に取り付いている。

 

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足袋のようなクライミングシューズを履いてレッスンが始まる。
インストラクターはちょっと向井万紀夫さんみたいな髪型、
小柄だが鋼のような身体の30代の男だ。
最初は器具の説明、ザイル、ハーネス、カラビナ、確保器等。
次にハーネスを付ける、ロープの結び方を覚える、エイトノット。
ロープで安全を確保して室内の壁を登る。
トップまで登り、手を離して確保(ビレイ)の練習。
反対に僕が確保者(ビレイヤー)になってインストラクターが落ちてみせる。
次に外壁、10メートルに登る。
高所恐怖症の人には絶対に無理だろう。
トップがちょっとオーバーハングしているのが怖い。
登ってみてください、と言われ登り始める。
決して楽ではないが何とか完登する。ちょっと嬉しい。
確保器で懸垂下降で下りる。

クライミングは(特に初心者は)すぐに腕がパンパンに膨らむ。
僕の二の腕も血管が浮き出て超人ハルク状態になる。
これは乳酸が溜まってしまうからでレスト(休憩)しなければいけいない。
室内のマットに坐り20分ほど手を休める。
だからクライミングは1時間では3回か4回しか登れないのだ。
普通は2時間か3時間やってきますね、とインストラクター。
うーん、時間がかかるのかあ。

休みながらいろいろと話を聞く。
日本のフリークライミング事情、何だか取材しているようだ。
インストラクターは中貝次郎さん、日本でも有数のクライマーらしい。
去年はフランスに遠征してガンガン登っていたそうだ。
こちらの素性も明かして平山ユージと安間クンら10代の若手との力関係を聞く。

「うーん、はっきり言うとユージから見れば安間クンらはハナクソみたいなものですね」
結論を言えば、そうらしいのだ。
確かに今の中学生や高校生は凄いしテクニックもある。
いわゆる大会、コンペ、たとえば、
ジャパンカップや日本選手権で惜しいところまで行くだろうし、
ある大会ではユージに勝つことも不可能ではないけれども、
この世界ではそれでユージより上とは誰も認めない。
(これまで何度か国内大会でユージを敗った選手もいた)
短期決戦ではそうだが、年間を通しての総合ではまだ誰も勝てない。
それでも当然ながら安間クンらにとってユージに勝つということは大きな意味があるのだが。

しかし、ユージは越えられない大きな壁だ。
「ユージも16歳くらいのころから凄かったが、スケールが違う。
 彼の場合は16歳、17歳で世界のトップのクライミングをしてましたからね」

平山ユージの凄さは…
単身フランスへ渡った。
世界中の岸壁を登り、数々の未踏のルートを征服した。
たとえば、ヨセミテのサラテルートのオン・サイト。
(これは世界でも無茶苦茶凄いことらしい)
それともうひとつは大会(コンペ)にも強かった。
競技ではセッティング一つで選手に有利不利になる。
ホールドの位置を変えればいいのだ。
体格が違う自国の選手に勝たせるためには
ヨーロッパでは露骨にそんなセッティングをしてくるらしい。
(そこが五輪種目になるための障害の一つでもあるらしい)
そのヨーロッパのコンペで平山ユージは勝ち続けた。
ゆえに尊敬を集めるサムライとなり得たのだ。

それともう一つ、
このクライミングの世界ではコンペだけやっているクライマーは尊敬されない。
やはり、自然の壁をリスクを冒して登る勇者が尊敬を集めるのだ。
「ユージは本当にいい奴ですよ」と中貝氏は言った。

20分ほど休憩しレッスン再開。
今度は10メートルの外壁をピンク色のホールドだけを使って登る。
最初は快調、しかし7メートルくらいの高さで行き詰まる。
つかむホールドに手が届かず何度も持ち替える。
両手のポジションや足のポジションを変え何度もトライする。
その間は壁に張り付いたまま、当然つかむ腕が消耗する。
手足それぞれのポジションがパズルのようなもの。
頭を使え、答えを見つけだせ。
しかし、消耗は激しい。
確保されているとは言え7メートルの上空、静かな恐怖。
次のホールドをつかむために何度も墜落する。
腕がパンパンで全く動かなくなる。
もう何度も死んだ。
ようやく降ろしてもらう。

両腕は乳酸が溜まりまくり、パンプ(PUMP)という状態。
これは30分以上は使い物にならない。
また、話を聞く。
「腕力じゃないですね。懸垂が何回出来ても登れないですよ。
 ぶら下がる能力の方が大事です。それよりバランス、身体の柔軟性、考えること」

他のクライマーは自分自身のルートで何度もトライしている。
静かなスポーツだ。ジムにはロックミュージックが静かな音量で流れている。
クラシックやエンヤの方が似合うのではないだろうか。

話の続き。

日本選手権を見に行ったら面白いですか?

いや、一般の人が見てもぜんぜん面白くないですよ、たぶん。
クライミングをやってる人じゃないと観戦しても退屈ですよ。

解説者が必要ですね。

そう、マラソンも誰かが実況、解説していないとつまらない。
淡々としてますからね。
クライマーが何を考えて、次は何を狙っているかを解説しないと。

カーリングに似てますね。
カーリングも現場で見るとなかなか集中出来ない。
いい解説者が不可欠ですね。

テレビの取材はよく来ますけど、? ですね。
紹介のされ方はいつも女性のフィットネスに最適、トレンド、みたいな。
テレビ関係の人が競技を知って貰うのは嬉しいです。

その後は屋内の人工壁でトラバース。
上に登るのではなく横移動。
実は自然の岸壁ではこのトラバースが必要とされる。
10メートルほどの横移動。
それほど難しくはないのだが、手がホールドをつかめない。
結局、時間切れ。
まずはこのビギナーズ・トラバースが目標だ。

「最初のうちは週に2回くらいはやった方がいいですよ、
 筋肉が出来てくるまでは週一ではなかなか出来ない。」

帰りは十三へとと歩く。
十三公園の桜が満開だった。
北野高校の前を通り十三大通りへ。
「大阪王将」で餃子を食べる。
阪急十三駅前の立ち飲みに心誘われながら梅田へ。
さあ、ニュースデスクだ。

…ニュースデスクを終える。
年寄りになるとお菓子の袋がうまく破れなかったり、
瓶の蓋が開けられなくなったりするらしい。
今はそんな状態。握力が半分以下しかない。
次はいつ行こうかな?
でも筋トレにはなるが有酸素運動にはならないね。