Fix You 君を直してあげる 2009/2/4  

2018/5/5「春一番」コンサート会場に初めて言って思い出した日記。

映画「ヤング@ハート」を観て号泣寸前になった日のこと。

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7時過ぎに起床、晴れて暖かい。

冬があたたかいというのは嬉しいことではない…と毎日のように思う。

このグローバル恐慌と同じで、いつか破綻が確実に来るのでは。

個人的に言えば、僕だって同じようなものだ。

今のところは大丈夫、今のところは…。

 

朝食は作りおきのハヤシライス。
今日は一人で映画のモーニングショーに行く。
1月は5本、2月はすでに5本見た。
映画三昧。

 

…またJRが遅れている。
向日町駅周辺で濃い霧が発生したためらしい。

心斎橋のビッグステップにある「シネマート心斎橋」。
何年ぶりかに行く映画館、記憶をたどると…10年近く行ってない。
前に来た時は「シネマート」ではなくて「心斎橋パラダイスシネマ」だった。
きれいなミニシアターで、それは今も変わらない。

水曜日は「レディースデイ」で女性は1000円。
モーニングショーの入りは女性中心で15〜20人くらいか。

今日の映画は昨日の『バンク・ジョブ』と同じく町山氏の「コラムの花道」からの筋。
ドキュメンタリー映画『ヤング@ハート』です。昨日と同じイギリス映画。

 

WEBの紹介文から引く。
「米・マサチューセッツ州の小さな町ノーサンプトンのコーラス隊「ヤング@ハート」。
平均年齢80歳の年金生活者のおじいちゃんとおばあちゃんたちで構成されている。
歌うのはクラシックやポップスのスタンダードではなく、ロックやR&Bの曲ばかりだが、
驚くべきことに彼らはその曲を完全に自分たちのものにしている。
コンサート前の6週間、彼らに密着し、リハーサルの様子やプライベートを追う。
感動を呼ぶ彼らのパフォーマンスはどこからくるのだろうか。」

登場人物は、“お茶目な花形スター”アイリーン(92歳)、“音痴な歌好き”スタン(76歳)、
“6度のガン治療に耐えた超人”ジョー(83歳)、“孫が23人の曾曾ばあちゃん”ドーラ(83歳)ら
彼ら彼女らを率いるのは、息子のような年齢の“厳しい指揮者”ボブ・シルマン(54歳)。

 

108分が終わる。
不覚にも泣いてしまった。
というか、後半は泣きっぱなしだった。
もうどうでもいいや、と言う感じ。
涙が頬を伝って流れるにまかせた。
どうせ真っ暗だし、と。
まさにストーンズの『As Tears goes by』(涙流れるままに)そのままだ。
どうして泣けるんだろ。
悲しいわけじゃないのに。
ジャクソン・ブラウンにも『Here Come Those Tears Again』って歌があったなあ。
また、涙がこぼれ出してしまった、とあの切ない声で歌う。
映画と何の関係もないけど。
不幸な出来事は起こらない。
どちらかというと笑ってしまうおとぼけ(老人ボケ?)シーンの連続。
泣くような映画だと思ってなかった。
だから不覚の落涙。

 

インタビューと練習風景とホールでのライブで構成されている。
ヤング@ハートのメンバーが歌うのは、指揮者のボブ・シルマンが選曲したレパートリー。
クラッシュ、トーキング・ヘッズ、ラモーンズ、ボブ・ディラン、ソニック・ユース、
ブルース・スプリングスティーン、ジェームス・ブラウンなどのロックやR&Bミュージック。
(この選曲のセンスがいいのかも)

 

一人一人の老人をじっくりと描くことはない。
ずぶりと感情移入させるような構成にはなっていない。
短いエピソードや若い頃の白黒写真が挿入されるくらい。
でも、インタビューがいいのだ。
92歳のおばあちゃんアイリーンが言う。
「わたしがいなくなっても悲しまないでね。
 七色の虹に腰をかけて、みんなをずっと見てるわ」
かわいくてチャーミングなのだ。
エンドクレジットの最後に、撮影終了後にアイリーンは亡くなった、と知らされる。
『今、アイリーンは七色の虹に座って僕らを見ている』と字幕が出る。
泣かせる、決して悲劇でもなく不幸ではないけど…。
人は悲しいから、不幸だから泣くのではないんですよね。

 

涙の話ばかりで恐縮だが、最初にどばーと涙が出たのはこんなシーンだ。
メンバーはバスで刑務所の慰問コンサートへ出かける。
晴れた気持ちのいい日だ。
バスの中で悲しい知らせが届く。
いっしょに行くはずだったメンバーの一人が容体が悪化した。
今朝、家族から訃報が届いた、と。
『ボブ・サルヴィーニは天国へ行きました』
塀の中、青空の下で野外コンサート。
コンサートの最後のナンバーは『Forever Young(いつまでも若く)』
クラシックのように朗々と一人のおばあちゃんが歌い始める。
ボブ・ディランのとはまったく別の歌のようだ。
賛美歌だろうか、と思う。

 

 神様があなたをいつも祝福して下さりますように
 あなたの望みがすべて叶いますように
 あなたはいつも誰かのために尽くし、そして皆もあなたを助けた

 

もう一人のじいさんが歌う。

 

 君が星へとどくハシゴをかけられますように
 そして、そのハシゴを一歩ずつ昇っていきますように

 

いい歌だ。
今までノリノリで楽しんでいた囚人や看守が息を飲む。
あれ、なんだこれ? と思っていたら涙が出ていた。
コーラス隊が控えめにリフを入れる。

 

 Forever young Forever young
 May you stay forever young

 

な、なんじゃこりゃ? 涙が頬をつたう。
スクリーンでは入れ墨をした男が泣いている。
さらに歌詞を伝える字幕が追い打ちをかける。

 

 君がいつも勇敢で、強く、そして潔くありますように
 いつまでも若くありますように
 
他の客が鼻をすすりあげる音がした。
それで、ちょっと冷めた。

 

そのコンサートから1週間後、もう一人のメンバーが天に召された。
ジョーというコーラスの主要メンバーで宣伝ポスターの中心に写っていた爺さんだ。
平均年齢80歳、永遠の別れは日常なのだ。

 

映画のクライマックスは町のホールでのコンサート。
フレッドという80歳のじいさんの歌った『Fix You』という曲がたまらない。
これには、なんと言うか、すすり泣く声が出そうになった。
フレッドは80歳、うっ血性心不全を患い、今は酸素吸入器をつけている。
しばらく休んでいてグループには久々の復帰だった。
刑務所の慰問の日に亡くなったボブ・サルヴィーニとは親友で、
復帰を祝うナンバーとしてこの『Fix You』を二人のデュオで歌うはずだった。
親友が死んで落ち込むフレッドだったがコンサートには一人でも歌うと決意する。

 

自宅のパソコンで『Fix You』のPVを見ながら練習する。
僕はこの歌を知らなかったが、すごくいい歌だ。
コールド・プレイというイギリスのグループの曲らしい。

 

ピアノのイントロが始まる。
フレッドの酸素呼吸器のプシュという音が断続的に入る。
(ダイビングしながらリポートする時のような音)
歌が始まる。
フレッドのソロだ。
バリトンで声量がある。


こんな歌詞だ。(町山智浩訳)

 

 一生懸命頑張っても、力及ばない
 欲しいものをやっと手に入れたのに、必要なかった
 死ぬほど疲れているのに、眠れない
 何をやっても裏目に出る

 

 そして涙が君の頬を流れ、
 取り返しのつかないものを失い
 誰かを愛しても報われない
 これ以上の不幸があるだろうか?

 

歌にフレッドの心がこもっている。
これが歌の力になってぐいぐいと聴く者の心にしみこむ。
また涙がこぼれてしまう。
フレッドは泣いていない。
淡々と歌う。
感情の表現はすごく地味で抑制されている。
でも、友を失った哀しみが伝わってくる。
もう涙がとまらない。
(いいかげんにしろって?)
そこでコーラス隊、あくまで控えめに。

 

 でも、光が君に帰り道を示すだろう
 そして君の骨に命を吹き込むだろう
 僕が君を直してあげるよ
 (and I will try to fix you)

 

フレッドが囁くように歌う I will try to fix you は良かった。
亡き親友のボブに、僕が直してあげる、と歌う。
字幕では「癒してあげる」となっていた。
Apple Music Storeでもyoung@heart soundtruckで検索すれば試聴出来る。
ロックミュージックやR&Bの歌詞も彼らが歌うとなにかしら別の意味が出てくる。
目からうろこが落ちた思い。

 

笑い、思いっきり泣かされた。
つまり、いい映画だ。
恥ずかしながら流れ出た涙の量は僕にしたら最多記録ではないか。(涙もろい歳でもある)
5ブラボー。
そういえば小西氏のブラボーシネマでも5つ星だったなあ。
40歳以上なら激涙必至。(年齢制限に確証はないけど)

 

この映画はもともとイギリスのテレビ番組だったもの。
金をかけなくても泣ける番組は作れるんだ。
僕も、頑張ってみよ、と少し勇気をもらう。

 

面白かったのは爺さん婆さんにもいろいろタイプがあるということ。
グループを率いるボブ・シルマンから歌う曲が入ったCDを渡されて、
『これどっちが表だっけ?その歌はどっちに入ってんの?』

なんていう爺さんもいれば、
酸素呼吸器のフレッドのようにパソコンで動画を見たり、

遺言を録画したりする老人もいる。

 

…昼飯は同じビッグステップにある店でトマトラーメンなるものを食べる。
ガーリックが効いてイタリア風中華麺といった感じ。
けっこう病みつきになるかも、という味。

 

空は青空、御堂筋を北へ歩く。
途中、本町通りのスターバックスで読書。
今野敏『果断 隠蔽捜査2』を読了。
これについては明日にでも書こう。

 

…東映の試写室で『マダガスカル2』(吹き替え)を観る。
まさに映画三昧の日々です。(仕事してんのか?)
このシリーズの1はボストンからの帰りの機内で見た。
こうして大きなスクリーンで見るとそのCGアニメの素晴らしさに驚く。
しかし、3分の1くらいは眠ってしまった。
『ヤング@ハート』を観て映画の感性を使い果たしてしまったのだろう。

 

…『果断』を読み切ってしまったので読むものがない。
ブックファーストで新書を3冊。
カン・サンジュン『悩む力』、越智道雄と町山智浩の対談『オバマ・ショック』
この2冊は集英社新書。
それと浜矩子『グローバル恐慌』(岩波)を買う。
不安産業で金融不況ものが売れているらしいが、岩波新書ならレベルは高いだろう。
僕らの世代には岩波信仰があるのだ。

新梅田食道街で立ち飲みのおでん屋。
『グローバル恐慌』を読みながら熱燗とおでん2種。

また長い日記になってしまった