ぷよねこ減量日記 2009/5-2016/1

旧ぷよねこ減量日記です。2016年1月に新旧交代してます。

2009/6/4 あこがれの『VIGORE』に会う。

起床は9時前、曇り空、梅雨入りしたかのような空気感。
去年の梅雨入りはいつ頃だったろうか?
梅雨前線が日本列島を覆っている。
梅雨入り宣言しないのは日曜あたりが晴れる予報だからと言う。
それは梅雨の晴れ間でいいんじゃないの?
ということで勝手に、「梅雨入り宣言」しよう。
あとで気象庁が「近畿地方は6/3頃に梅雨入りした模様」と訂正するに違いない。


…補正予算とか公的資金投入って、つまり金を刷りまくってるだけでしょ?
モノが足りなくならない限りはインフレにならないように計画はしてるのだろうけど。
経済の予測ってわかっててもハズれまくってきた歴史だし、
たとえ正しいことを説く学者がいても、実際に経済を動かすわけではない。
すでに世界経済は暴走しても誰にも止められない神みたいな存在になってるのでは。


…午後から京都へ行く。
西宮駅前のチケットショップで昼得チケットを買う。
JR西宮〜京都が560円。(通常は890円もかかる)
阪急なら西宮北口〜河原町、全線可能チケットを買えば400円以下で行ける。
ただし、梅田が十三で乗り換えなければいけない。
今回はJRで行く。


京都駅から地下鉄烏丸線の北の終点「国際会議場」まで乗る。
地上に出ると木々の緑が目に飛び込む。
比叡山が間近に見える。
雰囲気の良さそうなレストランや珈琲店が点在する。
『VIGORE』(ヴィゴーレ)は駅からすぐの場所にあった。


『VIGORE』(ヴィゴーレ)はオーダーメイドのフレームで自転車を組んでくれる店。
中途半端な自転車好きの僕は、いつかは『VIGORE』 と思い続けてこの歳になってしまった。
出会いは一冊の本だった。
  


松山猛の『僕的京都案内』(日本交通公社)。
手元にある本は初版で、この本を昭和59年(1984年)に読んだはずだ。
1984はロス五輪の年、僕は26歳。
(お、1984はジョージ・オーウェル、ついで言えば「1Q84」haruki murakami)
この本で「進々堂」やカレーの「ジャワ」、今はなきエスプレッソの「ちきりや」を知った。
レストランや喫茶店の他にも老舗の数々が松山猛の紹介文とともに載っていた。
そこで見つけたのが「カタオカ自転車」だった。


  ヴィゴーレというブランド名を見たとき、はじめはイタリアあたりのメーカーかと
  思ったが、おやじさんに聞くと、オリジナルのフレームだというので驚いた。


府立大学の近く、下鴨にある自転車専門店だった。


  そのヴィゴーレ車は、イタリアやフランスの本格派に負けぬ、洗練されたフォルムを
  持っている。僕はパリのグランダルメ通りにある、自転車専門店をそのたたずまいに
  思い出してしまった。  (中略)
  初代が東京オリンピックの前年にはじめ、現在は二代目のおやじさんということだ。
  そのおやじさんの雰囲気が、まるでイタリアの専門店にいそうな感じなのである。


実はこの本で知る前に僕はヴィゴーレのロードレーサーを京都の街で見かけていた。
たいていは店の前に停めてあるものだった。
きれいな自転車だな、と思った。
だから、地元京都の小さな店で作っていると聞いて嬉しかった。
その当時、僕がどんな自転車に乗っていたかは忘れてしまったが、欲しいと思った。
本にこう書いてあった。


  ロードレーサーのカンパニョーロモデルで約40万円と、かなり高級なモデルもあるし、
  パーツをもう少し安い物で組めば、街乗り用の、美しいヴィゴーレが、10万円くらいで
  組んでもらえる。


年収300万もなかった頃だったから10万の自転車は決して安くなかった。
それでも、無理すれば買えないことはなかった。
カタオカ自転車へ行ってヴィゴーレを買おう、と決心した。


数年後、僕はカタオカ自転車へ行った。
正確には何年のことだったかは憶えていない。
まだ月収が20万あるかないかだったから20代後半だろうか。
意を決して財布には内金として払おうと5万円ほど入っていた。
もちろんクレジットカードなんて持っていない。
当時、京都に住んでいたセルジオが道案内を兼ねて同行してくれた。
カタオカ自転車は植物園の南側にあった。
間口2間ちょっとの小さな店だった。
レーシングウエアを着た常連たちが店の前にいて入りづらい雰囲気だった。
店のスタッフはオールバックにした小柄なおやじさん一人だった。
勇気を出して声をかける。
ロードレーサーが欲しい、いくらくらいかかるものか、どんな種類があるのか…。
おやじさんは答えてはくれたものの愛想がいいわけではなかった。
典型的な京都のへんこタイプ。
僕は怖じ気づいてしまった。
他に修理の客が来ておやじさんはその客に対応する。
また、来ますわ、と言って店を出ようとした時、おやじさんが言った。
ちょっと肥え過ぎやな、と。
え…?
ロード乗るならあと10キロくらいは減らさんとあかんなあ。


僕はその頃、おそらく70キロ台後半だった。
生まれて初めて激しく太り始めた頃で太っていることをまだ自覚できていなかった。
そうやなあちょっと痩せんとな、とセルジオに笑いながら言って、僕は落ち込んだ。
セルジオはその時のことを憶えているだろうか。


結局、ヴィゴーレには乗れないまま、僕は何台もの自転車に乗った。
ランドナーというツーリング用の自転車でイギリスやアイルランドを旅した。
同じランドナーで沖縄本島一周もした。
90年代にはマウンテンバイクが流行り、アメリカの西海岸や道東を走った。
カタオカ自転車のことは忘れていた。


2005年5月半ば、たまたま一人で京都へ行った。
錦市場の「ぢんとら」で唐辛子を買ってイノダで珈琲を飲んだ。
イノダの本店の前にヴィゴーレが1台とまっていた。
あ、と口に出したまま、しばらく見とれてしまった。
濃紺のフレーム、鮮やかな白のロゴ、クラシックなフォルム。
大きなサイズのフレームだった。
外人が乗っているのかもしれない。
持ち主に無断で写真を撮った。

  


その日の「ぷよねこ減量日記」
http://diary.cgiboy.com/d01/shiohiro/index.cgi?y=2005&m=5#14



ネット検索してみると、カタオカ自転車は『VIGORE』(ヴィゴーレ)と店名を変えていた。
宝ヶ池に移転し、店主も若い三代目に代替わりしていた。
ホームページも充実して、主力はもちろんあの美しいロードレーサーだった。
いつか店に行ってみよう、あのヴィゴーレに触れてみよう。
最近、GIANTのロードレーサーを整備して乗り始め、自転車はロードだ、と再認識した。


話は元に戻る。
宝ヶ池の『VIGORE』を訪ねた。
店の前には数台のロードレーサーやMTBが並んでいる。

  


ためらわず店に入る。
三代目の小柄な店主に話を聞く。
人あたり良く親切にいろいろと答えてくれる。
時代は変わる。
僕だって20代の若僧ではない。
クラシックなフォルムでちょっとした小旅行にも行けるロードレーサーが欲しい、と言う。
まだ買う時期は決めていない。
いくらかかるか、どんなオーダーの方法があるのかを知りたい。
 

店の前にあった1台に試乗させてもらう。
モスグリーンの渋いカラーリングのもの。
ヴィゴーレに初めて乗る。
マジ感動でした。
なに、これ?
バランスがいいのだろう。
自然と前に進む。
ペダルを踏むとすうーっと加速する。
全くブレのないきっちりした組み上がり。
クロモリ(素材)のフレームの柔軟さ。
ちゃんと整備されたロードレーサーに乗るというのは何と気持ちいいことだろう。


試乗した『VIGORE』はコレ。

  


『VIGORE』はサイズをちゃんと測ってくれる。
フレームのサイズ、クランクのサイズ、ハンドル幅、ステム(ハンドルへのつなぎ)など。
大事なんですよねサイズは。
僕が試乗したロードは小さな450という小さなサイズ。
身長は167だけど、手足が短いのでこれくらいがちょうどいいのです。
このサイズだとサドルも上げられるので見映えもいい。
 

フレームの色はあのイノダの前にあった濃紺にしよう。
サドルは革製、バーテープは茶系か黒…なんて自分で想像する。
オーダーの値段を試算してもらう。
ペースが168000円(税込)、僕の要求するオプションをつけると20万弱になる。
ちょっと深呼吸。


僕が兵庫県から来たというと、メールでやりとりしましょう、とのこと。
じゃあまた来ます、と名刺を渡して店を辞す。
http://www.vigore.co.jp/


うきうきして宝ヶ池を歩く。
子供のときのような気分。
20万円か。
生活のあとさきを考えなければそれくらいの金はある。
純粋な贅沢品だよな。
仕事がなくなりつつある今かよ、というい内なる声も聞こえる。
でも、いい気分だった。
先代のおやじさんを思い出す。
肥すぎやなあ、あと10キロ減らさんと。
65キロになったら考えよう。
いや、65キロになったらヴィゴーレを注文するのだ。
宝ヶ池の駅から叡山電鉄に乗って出町柳へ出た。


以下は行動記録。
叡山電鉄の出町柳駅前の『大山そば響』で割語そばを食べる。
17時半、遅い昼食あるいは早い夕食。
食後はJazzの『ラッシュ・ライフ』か、Clasical Music の『柳月堂』で珈琲でもと思うが、
ビールを飲んでしまいそうな時刻だったのでロッテリアで買い、京阪電車カフェとする。
久々にYTVに寄り天満経由で帰宅。
百田尚樹『永遠の0』を読む。
あの『ボックス!』の作家の2006年のデビュー作。
読み進むほどに面白くなっていく。
東野圭吾の『容疑者Xの献身』なんて読まずにこれを読んでおけばと後悔する。