ぷよねこ減量日記 2009/5-2016/1

旧ぷよねこ減量日記です。2016年1月に新旧交代してます。

09/7/9 ky (キー)Live@ワイルドバンチ

       
     

昼に雑用を済ませ、夜はジャズのライブ。
贔屓の仲野麻紀さんのフレンチテイストあふれるジャズを聴く。


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8時半起床、空はどんより。
今日も走り出すのが10時過ぎと遅くなる。
走り出すと陽も射すようになりなおさら暑くなる。
この季節、ジョギングがちょっと苦行になる。


あさって、東淀川のアイリッシュパブで『鞴座(ふいござ)』のライブがある。
僕のティン・ウィッスルの先生でもある金子鉄心さんのグループだ。
アルバムがiTune Storeで買える。
『鞴座の夜』と『ふいごまつり』、ともに1200円と格安。
ケルトユダヤ、ジプシー系とヨーロッパのトラッド音楽をミックスしたラインナップ。
やってみたい、と思う曲がいくつもある。

     



…昼から溜まっていた雑用を済ませる。
市役所でヒロの地方税課税証明を取る。
これは健康保険の調査に必要なもの。
今回の確定申告でちょっとミスをして配偶者控除が受けられなかったのだ。


a.u.ショップでばあばあ(義母)の携帯電話の修理。
突然に電源が入らなくなったらしい。
診てもらうと単なるバッテリー切れだった。
おそまつ様。


小腹が空いたので新梅田食道街の蕎麦屋へ行く。
繁華街の蕎麦屋らしからぬ風情がある。
こっそりとひっそりと巷の物影に潜んでいるような店。
店のことはA部氏から聞いてはいたが夜は閉まってしまうので行けなかった。
入ると梅田とは思えないひっそり静か落ち着いた空間。
60代半ば(70過ぎだろうか)、じいさんが一人でやっている。
客は僕一人。
音楽もテレビも流れていない。
もりそば800円を注文。
メニューにエビス小瓶400円がある。
追って注文。
板わさや山芋などのつまみは350円と安い。
鴨汁なんかもあって心惹かれる。
本格的に飲むつもりではないので我慢する。
蕎麦が旨い。
つゆも濃い。
じいさん、やるな。
なかなかの手練れ。
そば湯はどろりと濃厚。
大満足。
1200円きっちり払って出る。
釣りはいらんぞ。


…夜はジャズのライブ。
デスク3連投のあとはライブ3連投なのだ。
まず今日はジャズ、明日はアイリッシュ、あさってはワールドミュージックまぜこぜ。
人生は楽しい。
遊びをせんとや生まれけむ、だ。


今夜の道連れは元報道A部氏。
ライブ前に天満『肴や』に立ってプレヒート。
定番のサッポロラガー中瓶。
万願寺唐辛子や新れんこんの金平やら牛肉のはりはり(水菜)やらで飲む。
ほろ酔いで天六ワイルドバンチ』へ徒歩10分。


店の前でサックスの仲野麻紀さんとギターのヤン・ピタールさんがくつろいでいた。
ここは控え室がないのでいつも出演者が表で煙草を吸ったりしている。
3月のライブでもドラムスの小山彰太さんが一人ぽつんと隠居老人のように座っていた。


ky(キー)というサックスとギターのユニット。
本来。このkyはイタリア人(?)のパーカッションとトリオらしい。
今回は地元天六でドラム教室を開いている安部泰聖さんというパーカショニストが加わる。


サックスの仲野麻紀さんは3月に違うユニットで聞いた。
場所も同じ@ワイルドバンチで、かなりフリー色の強い演奏だった。
演奏よりも彼女の持つ雰囲気に一目惚れしてしまった。
海外で仕事をしている有能な通訳さんみたいな感じなのだ。
(よくわかりませんね)


19時開演。
客は40人くらいか。
開演直前に明らかに場違いな感じのおばちゃん軍団が8人ほど入っていきた。
え?ジャズだよ。番組の公録じゃないよ。
おばちゃんたちは垢抜けないがそれなりによそ行きの装い。
ちょっと温泉旅行にでも出かける感じ。
おそらく天六パーカッショニストの親戚か近所の人だろう。


前半はサックスとギター。
フレンチとラテンと東欧ジプシーミュージックの融合。
前回と違って彼女のサックスもソフトで聞きやすい。
ヤンは若い頃はフラメンコの伴奏をしていたらしい。
エフェクターをつけたギターとウードと呼ばれる民族楽器を演奏する。
ウードはブズーキや琵琶に似たエジプトの楽器らしい。
エリック・サティをレパートリーにしている。
ジムノペティ』と並んで有名な曲を演る。
うーん、なんだっけか、コレ。
記憶飛びは茶飯事となりつつある昨今、忘れて音を楽しむ。
(帰宅後、調べて判明。『グノッシェンヌ』でした。)
仲野麻紀が2曲ほどフランス語で歌う。
これもサティの曲。
ファンの僕には嬉しい余興。
僕の横に座った場違いなおばちゃん軍団もフレンチな空気にうっとりしている。
今月14日はパリ祭だ。
関係ないけど。

ライブでも聴いたサティの『グノシェンヌ』の動画を見つけました。
ヤンが弾いているのがウードというエジプトの楽器。

     http://www.youtube.com/watch?v=OvJlA08PlKA
     
  

後半、天六のパーカッションが加わった。
長身、長髪、革の黒いパンツ。
気の弱い桑名正博みたいな風貌。
仲野麻紀が、後半はフリージャズ、主にインプロビゼーションで行きます、と言っていた。
最初の曲はパーカッションのソロ。
ドラムセットから始まる。
突然スネアの音が沈黙を破る。
ドン! 
ギャ! 
隣のおばちゃんがニワトリを絞め殺したような悲鳴を上げた。
ドンときてギャである。
思わず笑ってしまう。
それが悲喜劇の発端だった。


こう書くと何か面白い展開が待ってそうだが話は単純。
実にトホホだったのである。
過度に緊張しているのか、自信がないのか、とにかく音が前に出てこない。
腰が引けているのです。
太鼓の音もくぐもって湿ってスカッとしない。
モゴモゴと言い淀んでいる引き籠もりのようだ。
ドラムセットの背後にいろんな鐘の類が吊ってある。
それを順に叩いていく。
自信が無さげなせいか動きが挙動不審。
正直、見ていて可哀想になる。
おばちゃん軍団(同行のA部氏はオモニトリオと命名)がふたたび登場。
くすくすと笑い出す。
番組収録の笑い屋じゃないんだからね。
ドラマーが背後の鐘をひとつ鳴らすごとに笑いのテンションが上がる。
3人とも顔を真っ赤にして手を口に押し当てて笑いをこらえている。
笑い声が手の隙間からこぼれ出す。
パーカッションの音より効果的にこぼれ笑いが客席を包む。
おばちゃんの周りの人にも笑いが伝染する。
A部さんも口に手を当てている。
苦しい。
息が苦しい。
ドラマーは真剣に演奏を続けている。
こ、これがインプロビゼーションか。
こ、これがオーディエンスとの一体感なのか。
彼の紡ぎ出す音がおばちゃんのツボと共鳴してしまったのだ。
笑いのツボに。
恐るべきグッド・バイブレーションが生まれてしまった。
図らずも。
今やおばちゃんは何をしても笑う。
鐘を叩いても、ハイハットをブラッシングしても、スネアを蹴っても。
ドラムの演奏は続く。
苦じい。
は、はやく終わってくれ。


その後のことはあまり記憶にありません。
ただアンコールした時に仲野麻紀が「みなさん本心ですか?」と
いたずらっぽい、いや、ちょっと意地悪な言い方をした。


天六の気鋭のドラマーはすごく真面目な人なのでしょう。
音と真摯に向き合っている人なのでしょう。
テクニックもきっと確かなのでしょう。
ただちょっとkyの二人とは合わなかったのだと思う。
現代音楽とか伝統芸能とかもっとスタンドアローンな立場で演奏すべきだと思う。
テクニックの問題ではない。
彼の芸術は孤高なのかもしれない。


ライブ終了後、打ち上げに誘われるがこっそり抜け出す。
仲野麻紀やヤン・ピタールとは話してみたかったけど、
気まずい雰囲気を察知して脱け出すことを決意。
『よしむら』までいっきに天神橋商店街を縦断する。


ライブの余韻でちょっと飲み過ぎた。
終電近くまで飲んで、「つるまる」でうどんを食べて帰る。
禁をいくつも犯してしまった。
すべてをライブとおばちゃん軍団のせいにして帰途につく。


ライブ終了後、kyのミニアルバム(1000円)を買う。
聞くとミニアルバムではなく12曲も入っている。
7/14にリリースする「無口なうたとおしゃべりな音楽」という新譜だった。
日記を書きながら静かな音量で流す。
このCDが良かった。
ライブより数段良かった、というのは失礼だろうな。
仲野麻紀の達者なフランス語を聞きながら微睡む。