ぷよねこ減量日記 2009/5-2016/1

旧ぷよねこ減量日記です。2016年1月に新旧交代してます。

10/1/8 ドカンと叩きましょう!


「ドカンと叩きましょう!」とN医師は言った。


去年の暮れに大腸カメラの生検結果を聞きに西宮病院へ行った。
アメーバ腸炎で回腸あたりの腸壁が荒れている。
2回の投薬治療をしたが結果が思わしくない。
もし年を越して下腹部がうずくようだったら3回目の投薬をします、とのことだった。
年末から新年にかけてしくしく痛むような違和感は消えなかった。
年越しして今日、再び病院へ行く。


おそらく量が足りなかったんだと思います。
いろいろ症例を調べると肝臓が冒された患者さんにはドカンといってます。
この際、いっきに叩きましょう。
N医師の判断はアメーバ原虫との全面対決だった。
武器はフラジール内服薬。
これまで一日2錠で10日間だった。(合計20錠)
今回のせん滅作戦では朝昼晩3錠ずつの一日9錠。
10日間で合計90錠の大量投下だ。
陸軍で言えば前回までが中隊規模(200人)の上陸作戦なら、
今回はいっきに一個旅団、いや一個師団(10000人以上)の総攻撃。


何とも勇ましい。
でも、大丈夫だろうか。
アメーバ原虫に勝てるだろうか。
旧日本軍のように玉砕なんてことにならないだろうか。


N医師の決断は下った。
明日から10日間断酒。
望むところだ。

  

今日は同時にヒロも眼科医院へ行く。
強膜炎による左目痛はステロイド内服薬で緩和されてきた。
医者に、マシになったがステロイドより眼球注射を先にやるのが常道だ、と言われたらしい。


…今日は2010年初ニュースデスク。
予定されていた項目がボツになりユルーい勤務。
でも、平日はフロアに人が多いので落ち着かない。


19時過ぎで勤務終了。
セルジオとfatfat氏が呑むというので合流することに。
メールで指定された西天満『しょうか』という店に行く。


カウンターだけの小さな店。
牛モツの串焼きをつまみに麦焼酎のお湯割りを飲む。
小ぶりの串が酒のつまみとしては具合がいい。
他に客がいないので落ち着く。


飲むほどにfatfat氏が新年から怪気炎。
とは言っても景気のいい話ではない。
いまどきの50代にそんな話があるわけないか。
景気のいい話をする50代もいるのだろうか?
内田樹先生もWEBに書いていたなあ。


 「世界同時不況」などという言葉を使うから、まるで世界中の人が金融危機
 「被害者」みたいな話になっているが、もちろん、この事態に先だって、
  このような事態をつくりだすことで「大儲け」した人間はゴマンといる。
  
  たまたま彼らはそのあぶく銭をとっくに使い果たしてしまっているので、
  賭場にいる全員が「しけた」顔をしているというだけである。
      「内田樹の研究室」http://blog.tatsuru.com/2010/01/06_0850.php


もちろんfatfat氏はそんなあぶく銭を手にした人ではない。
酔うほどに語られる。
なんだか赤裸々な打ち明け話である。
下ネタに近いといえば近い。
氏は物事を控えめに表現するタイプではない。
「過剰の人」なのだ。
勢い余ってこぼれ落とす人なのだ。
こぼれ落ちるネタをまた手で掬いながら話はさらに赤裸々になっていく。
僕らもブレーキはかけない。
なんせ酔ってるから。
過剰を増幅させるのも楽しいのだ。


2010年、西天満の居酒屋のカウンター。
僕らが生まれ育った時代から見ればSF映画のような西暦の新年に、
50を過ぎた男が3人、安酒を飲んで恥ずかしい話をしている。
スガシカオが書いている。


  あのころの未来に ぼくらは立っているのかな
  すべてが思うほど うまくはいかないみたいだ
  このままどこまでも 日々は続いてゆくのかなぁ
  雲のない星空が マドのむこうにつづいてる
                 「夜空ノムコウ



実際にはこの歌みたいにさっぱりしたものではない。
脂がほどよくのっている。
なんせ過剰な人だから。
過剰だがそのくせ臆病。
歳をとることは臆病になることだ。
僕も身に染みる。
臆病が染みこんでいる。
本当は不安でいじけて女々しくてくよくよしてるのに、
歳を重ねて言い訳を覚えたので多弁さで真実を覆い隠している。


「若いってすばらしい」という歌を聞いたばかりだ。
思えば本当に素晴らしいのかは疑問だ。
若いってよくよく思い返してみると実は面倒なことばかりじゃないか。
若いってすばらしい?
僕らはやっかいな面倒ごとのいくらかを終えてしまったから気楽に言えるのだな。
解決したわけではなく先送りして単に期限切れになっただけなのだけど。
生臭い、ある意味で冒険的なもろもろを断念して平穏な境地にたどりつけた。
僕が若かった頃に素直に歌えなかったのは、若いってすばらしいと決して思わなかったからだ。


このあと『アフター・アワーズ』へ流れる。
ここにも過剰の人がいた。
レイモンド・カーバーの短編集が酔った頭を通り過ぎていく。
原題は"Will You Please Be Quiet, Please?"という。

頼むから静かにしてくれ〈1〉 (村上春樹翻訳ライブラリー)

頼むから静かにしてくれ〈1〉 (村上春樹翻訳ライブラリー)


と、ここまで書いて思う。
世の同世代の人の大半はこんな脳天気なわけじゃないな、と。
この夜に集まった3人には子供がいない。
勝手に人生の黄昏を感じて自己陶酔しているに過ぎない。
(失礼、僕だけかも)
でもまあ、それくらいの自由はあるということだ。
どうにもキレの悪い文章で申し訳ない。
さあ、2010年の目標を決めよう。
薬もドカンと飲まなきゃいけんし。



…一昨日は吉永小百合倍賞千恵子を貼り付けた。
思い出せば小学生の僕はこの人にあこがれていた。
そう、1968年の秋、メキシコオリンピック、平凡と明星。
小6のアイドルは加藤沢男と酒井和歌子だった。