ワールドカップが始まって間もない頃、内田樹先生がTwitterでつぶやいた。
ワールドカップから学ぶこと。
その一、世界の基本単位は国民国家である。
その二、人間のパフォーマンスを高めるのは、負けてるときにも楽しめる能力である。
その三、落ち込むと負ける。図に乗ると負ける。考え過ぎると負ける。
考えが足りないと負ける。ワールドカップは深いです。
昨日のブラジルとオランダの試合を見て、W杯の深さを思い知った。
今大会、ドゥンガのブラジルは勝つためにのみに存在するチームだった。
内田先生が言う、負けているときにも楽しめる能力、に欠けていた。
負ける理由は星の数ほど存在する。
美しくても負ける、美しくなくても負ける。
攻撃的でも負ける、守備的過ぎても負ける。
秩序があっても負ける、奔放でも負ける。
勝った!と思っても負ける、負けた!と思っても負ける。
負けるはずがない、と思っても負ける、負けるかもしれない、と思えば負ける。
負ける理由は確固として存在する。
ノムさんではないが負けに不思議の負けなし。
23時キックオフ。
スペクタクルに満ち、人間ドラマにあふれ、90分まったく眠くならない試合だった。
愛国心がないと言われようが日本戦はサッカーの試合としては退屈だった。
何度も居眠りしてしまった。
(当の本田も第3者として見たら日本戦は退屈だったと言ってたので間違いではないだろう)
ブラジルは完璧だった。
オランダも頑張ってたが彼らに勝機はないと思えた。
スペースを与えない守備というのはこういうことかと知った。
ロッベンがボールをトラップして一瞬迷えば周囲はブラジルの選手に囲まれていた。
ゾンビみたい、と思った。
「ロッベンサンドイッチだ」
Twitterでオシムがその様をこう表現した。
そして先制点。
速攻!
敵陣中央の花道を一発のパスで通してゴール。
オシムが「こんな試合であんなど真ん中を通されるとは(気に入らない様子)」とある。
1-0で前半終了。
点差以上にブラジルが圧倒した。
後半、オランダは大変だ。
攻撃に出て、さらに追加点をとられる恐怖と闘いながら攻める。
当然、リスクを冒さなければ勝ち目はない。
僕らもそう思ったし、ドゥンガもブラジルイレブンもそう読んでいたと思う。
今日はブラジルの日、そう思った。
後半開始、オシムは言った。
「オランダは開始早々アグレッシブに攻めて点が獲れるかが後半の鍵だ」
「オランダは今日が決勝戦のつもりでやらないと次節出場停止だ」
そして、ブラジルの追加点はオランダのオウンゴールかも、と予言した。
攻めるブラジルも、2点目は獲るのは自分たちだ、というイメージで試合を進める。
しかし、結果は逆だった。
ブラジルがミスで自殺点…。
あまりに完璧だったブラジル。
100点満点だったブラジルにこの自殺点はまったくイメージ出来ていなかった。
それが選手たちの表情にはっきりと表れていた。
ドゥンガ監督は試合後コメントした。
「悲しいし、つらい。誰も負ける準備などしていない」
落ち込むと負ける。
図に乗ると負ける。
考え過ぎると負ける。
考えが足りないと負ける。
ドゥンガのブラジルが消えるのは悲しい。