ぷよねこ減量日記 2009/5-2016/1

旧ぷよねこ減量日記です。2016年1月に新旧交代してます。

2011/8/8 ササキさんの夏休み

宮城のコメ農家の佐々木さんが甲子園にやってきた。
佐々木さんの携帯の着メロは『栄冠(は君に輝く)』だ。
そういえば何度かあのメロディーが鳴るのを聞いたことがある。
56歳 農業キャリア25年 プロのファーマーにして元身体障害者野球 日本代表選手(2006年)
甲子園はあこがれの聖地だと言う。
佐々木さんにとって初めての甲子園だ。


この夏、宮城を制した古川工業は佐々木さんの母校ではない。
僕が、古川工業は地元ですよね、とメールすると、
「そうです。隣町の学校で全員地元の子供達です。まさか東北に勝つとは予想外でした。」
と返信が返ってきた。
エースの山田君のお父さんは佐々木さんの所属するみどり農協の職員だ。
ナインの出身中学はどこも近所にあって名前も場所も知っている、そんな感じ。
河北新報で応援ツアーの募集を見た。
農業仲間を誘ったが農薬散布の予定が入ってたらしい。
草野球のチームメイトは市の職員で市長選が終わったばかりで忙しい。
なら、やめとこう、と思っていたら奥さんに、チャンスだから行ってきたら、と言われた。
一人で応募して夜行バスに12時間、今朝甲子園に着いた。


3日連続の甲子園出勤。
9時半、ライトスタンド裏のショップ前で佐々木さんを見つける。
前の試合が続いている。
ひとまずライトスタンドへ案内し、5月の田植え以来の再会を生ビールで乾杯する。
唐津のピッチャー打てねえかもな、とちょっと弱気。
子供たちキンチョーしねえといいけど。
なんだか学校の先生みたいだ。
古川工業ナインの出身中学に松山中がある。
これ『一ノ蔵』の町ですよね、と僕。
三本木中学、これは『伯楽星』の蔵がある。
あ、鳴子中学、温泉町の学校だ。
応援団にTシャツ、メガホン、キャップが配られる。
団扇に校歌の歌詞が載っている。


 実り豊かな 大崎に
 栗駒の峰 仰ぎ見る


大崎平野はササニシキの故郷、栗駒は先日僕らが登った名峰だ。


作新と福井商業の試合が終わり1塁アルプスへ移動する。
バス30台でやってきた古川工業の応援団はエンジのTシャツ。
スクールカラーでもないのにエンジなのは楽天カラーだから、と佐々木さんが解説。
ノック練習の古川工業、あ、外野ノッカーが空振りしてる。
大丈夫かな。


初回、唐津商業が打者一巡の猛攻…!
2点、また2点、走者一掃で3点…。
応援団が声を出す前に一挙7点を奪われる。
呆然、12時間もバスに揺られてきたのに…。


佐々木さんも生ビールを飲みながらタメ息。
まだ初回、でも7点は凹むよなあ。
古川工業、先頭バッターは163センチの畠君(不動堂中)、さあ行こう!
初球、どよめきが起こる。
唐津商業のエース北方のストレートは152キロの球速表示。
ええ!
週刊朝日の紹介にMAX149キロとあったが自己記録更新だ。
ヤバイぞ。


古川工業のブラスバンド、野球部を応援するのは初めてなのだとか。
地方予選はコンクールと重なって球場へ行くことは出来なかったらしい。


2回にも2点を奪われ9-0となる。
その後、少しずつコツコツと返していくがビッグイニングが生まれない。
佐々木さんは合流したセルジオと農業の話をする。
今年はコメの育ちが良く、9月半ばあたりに刈り取りが出来そうだとのこと。
去年、ササニシキを刈ろうと思ったところに秋の長雨があった。
背の高いササニシキは倒れてしまう悔しい思いをした。
今年は台風が心配だ。


5回終了。
グランド整備の時間に大会歌が流れる。
ライナービジョンに合唱する高校生の映像が映し出される。
佐々木さんが静かに映像を見つめている。


   若人よ いざ まなじりは 歓呼にこたえ


   いさぎよし ほほえむ希望


目が潤んでいるように見えた。
見終わって、これは毎試合流れるの? と僕に聞く。
佐々木さんが言う。
「ああ、夏に一週間くらい休みとって毎日甲子園に来たいなあ」


健闘空しく敗れた古川工業、というか初回の7点さえ無ければ勝っていた。
宮城ではどこにも負けずに甲子園にやってきたのに悔しいね。
いろんなものを背負い込んでの甲子園初戦だった。
初出場校には荷が重かったかもしれない。
でも近所の子供たち、4点獲って頑張った。
アルプスは総立ちでナインを讃える。


応援バスの出発は13時半。
小一時間ほどあるので佐々木さん、セルジオといっしょに「ららぽーと甲子園」へ行く。
エアコンの効いたフードコートで涼みながら地鶏の親子丼と生ビール。
(フードコートは各都道府県の応援団が集まりな何だかオリンピックみたいな雰囲気)
負けたけど、迷ったけど来てよかった、と佐々木さん。
満足してセルジオと応援バスの待つ浜駐車場へ戻って行った。
このあと応援団は箕面スパーガーデンで汗を流したあと、12時間かけて宮城へ戻る。


…出勤時間に少し遅れて局へ入る。
今日もニュースデスク、ビールのアルコールは汗ですぐに消えた。
ヒロからばあばあが入院することになったとメールがある。
白血球が増えているのだとか。
ちょっと心配。