ぷよねこ減量日記 2009/5-2016/1

旧ぷよねこ減量日記です。2016年1月に新旧交代してます。

2012/2/7 スプリセル

スプリセルという薬がある。
ばあばあ(義母)が一日2錠飲んでいる。
ばあばあは去年の夏 緊急入院した。
白血球が異常に増えていたのだ。
急性リンパ性白血病だった。
一ヶ月入院してステロイド系の投薬、人工透析などの処置をした。
白血球の増加は収まり退院した。
今は一人で何でも出来るまでに回復、たまにグランドゴルフへ行ったり旅行も出来るほどになった。
市営住宅に一人で暮らしている。
ことし3月で84歳になる。

入院当初のころ。
高齢者ゆえ抗がん剤などの化学治療は無理だと判断された。
完治は出来ない。
二次治療としてグリベックという症状を抑える薬はある。
スイスのノバルティスファーマ社の分子標的薬、21世紀になって生まれた新薬だ。
しかし、ばあばあは難治性のフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病だった。
グリベックは効果が薄いのだという。
フィラデルフィア染色体陽性の白血病の治療手段は移植しかない。
抗がん剤+グリベックで生存期間を延長させてドナーを探す方法が唯一の手段だった。
80代で移植は出来ない。
お手上げ状態、余命3ヶ月から半年、と医師は言った。
今までならば、と。

2009年1月、つい2年前のこと。
フィラデルフィア染色体陽性の白血病に効果のある新薬が認可された。
アメリカのブリストルマイヤーズという製薬会社が開発したがんの分子標的薬。
日本では2011年から大塚製薬が提携、国内で販売するようになった。
それがスプリセルだった。
http://www.gsic.jp/medicine/mc_01/sprycel/index.html
   
  

一日2錠飲み続けている。
いまのところ治療はこれだけ。
通院も一ヶ月に一度でいい。
ただ、スプリセルは抗がん剤ではないので完治するわけではない。
生存期間を延ばすためには継続して飲み続けなければいけない。


認可されて間もない新薬で安くはない。
保険なしだと一錠あたり約1万円!
後期高齢者だから1割負担で約1000円。
一日あたり2000円の負担となる。
月にして60000円。
年間の薬代はおよそ72万円。
薬代だけで72万、年金生活者が楽に払える金額ではない。
公的保険のないアメリカでは恐ろしく高価になるだろう。


それでも今のところ副作用も少なく生活出来ている。
無理をしなければ前述したようにグランドゴルフも旅行も出来る。
月に一度、中之島の住友病院へヒロと義理の姉と3人で通院する。
診察終わりでロイヤルホテルでちょっと贅沢なランチを食べるのを母娘ともに楽しみにしている。
本来なら要介護でもおかしくない高齢、しかも難治性の白血病患者。
発症が3年早かったら?と想像してみる。

しかい、“救いの薬”はあった。
今、なかった時の絶望を想像するのは難しい。
奇跡の薬だ。
怪傑スプリセル、正義のヒーローのような響き。
開発してくれた科学者たちを尊敬します。


「ロレンツォのオイル」を思い出した。
息子の難病の治療法を両親が執念で発見した映画。
ニック・ノルティとスーザン・サランドンの名演に心打たれた。
映画のようなことが(ちょっと違うけど)身近であるなんて想像もしなかった。

ロレンツォのオイル/命の詩 [DVD]

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思えば、白血病なんて映画やドラマの世界の病気だと思っていた。
去年、全員が知り合いではないけれどぐっと身近になった。
ばあばあ、めざましテレビの大塚さん、たまたま聞きに行った浪曲師の幸いってんさん。
ばあばあはスプリセル、大塚さんは抗がん剤、幸いってんさんは移植で治療を続けている。
自分が白血病にならないという保証はまったくない。
遺伝でもないし、因果関係も不明、体質との関連もわかっていないらしい。
明日、突然に体調が悪くなり血液検査したら白血球が異常に増えているかもしれない。
自分ならどうするか?
50代半ば、治療の選択枝があるだけでも幸運なのだと思う。


…今日はニュースデスク勤務。
2月は前半にデスクが集中している。
後半はヒマだということ。
確定申告や企画書、やらねばならないことはある。
肘の回復とともに運動もちゃんとやっていこう。
寒さに怖じ気づいているのも情けない。
ポンコツではあるがせっかくの健康体、十全に使わないのは罪だ。
あいかわらず天への感謝が足りない。
人は“無い”時、“失った”時の絶望を想像するのが苦手なようだ。