2012/2/18-19 『海洋天堂』と『ハーモニー』

週末は「にしのみやアジア映画祭」へ行った。
映画祭と言っても新作の映画コンテストじゃなく名作の上映会です。
もう17 回目になるそうな。
僕はこの上映会で韓国の『太白山脈』を見て、かの半島の過酷な現代史に打ちのめされた。
チベットを舞台にした『キャラバン』にも圧倒された。
今年も4作品の上映、2 作品が観られる割引チケットが1300円。
一本650円と夫婦50割引より格安なのだ。

          
        


『海洋天堂』英語の題名は「Ocean Heaven」
あの『少林寺』のジェット・リーがカンフーアクションを封印して臨んだ意欲作。  


   『海洋天堂』は、2010年の中国・香港映画。47歳の水族館職員・ワン・シンチョン(王心誠)は、
   自閉症と重度の知的障害を持つ21歳の息子・ターフー(大福)を男手ひとつで育ててきた。
   ある日、シンチョンは自分が癌に侵され余命わずかであることを知る。自分の死後のターフーの生活を案じたシンチョンは、
   ターフーを連れて海で心中を試みるが、泳ぎの得意なターフーに助けられてしまう。
   命をとりとめ考えを改めたシンチョンは、ターフーを預かってくれる施設探しに奔走し、
   残されたわずかな時間で服の脱ぎ方やバスの乗り方といった生活の術をひとつひとつ彼に教え始める。
   そんな親子の姿を、隣人のチャイ(柴)や水族館の館長ら周囲の人々は温かく見守り支えるのだった。
   そして、ついに最期の時が近づいてきた…。


       


『レインマン』以来、映画の一要素となった自閉症というハンディキャップ、
末期ガンという『ある愛の詩』に見られる古典的な死へのカウントダウン、
さらに母のいない父子という『クレーマークレーマー』的な日常描写。
泣ける要素のアソート(詰め合わせ)のような映画だった。


以下、感想をつぶやくと、


・冒頭、青い海に小舟が浮かんでいる。
 海とは似つかわしくないシャツにジャケット姿の父と無邪気に微笑む息子。
 父が「じゃあ、そろそろ行くか」と二人は海に飛び込む。
 青い世界を父と子は沈んでいく。
 両足に鉄の錘(おもり)が繋がれている。
 やがて、「海洋天堂 Ocean Heaven 」 のタイトルが浮かび上がる。
 はて?
 これはラストシーンなの?
 この美しも静かな二人の最期から回想するという構成なのだろうか?
 誰もをそう思わせるが…。
 

 この冒頭のシーンで映画は大きなポイントを稼いでいると思う。
 香港映画で数々の名シーンを撮ったクリストファー・ドイルのカメラだ。
 『世界の涯て』の明け方のバラ園のシーンが強烈に印象に残る。
 とにかく、海の青さに心を奪われた。


・父ワンの死期が近づく。
 会場からすすり泣く声が聞こえる。
 鼻をすすりあげる音があちこちから聞こえる。
 お葬式、残されたターフー。
 僕がもうダメだと思ったのはそのあとだった。
 一人で暮らし始める描写。
 朝起きて、着替えして、バスに乗り、仕事場の水族館でモップがけするターフー。
 父が何度教えてもなかなか出来なかったあれこれを淡々とこなしひとりぼっちで暮らす。
 何の説明もない。
 全てがわかる。
 スクリーンからは久石譲の音楽が流れている。
 僕は思わず唇を噛みしめ嗚咽をこらえた。
 そして、水族館の公衆電話の呼び鈴が鳴る。
 誰からのコールなのか?
 ひょっとして…。
 わあ、もうダメだ。


・日本でリメイクするとしたらと配役を考える。
 主人公のワンは内藤剛志がいい。
 『森崎書店の人々』の人のいい叔父さん役はハマリ役だった。
 ストレートに考えると香川照之。
 いったん香川で想像すると彼以外は考えられなくなる。
 世話をしてくれる隣人の中年女性は余貴美子で決まりか。
 香川ならもう少し若くて夏川結衣でもいい。


・父子の住む街がいい。
 海と石畳と街路樹。
 ロケ地は青島らしい。
 青島ビールの街。
 かつてのドイツ租借地。
 グーグルの空撮写真を見るとまるでヨーロッパの街のようだ。
      
 映画では小さな街のように描かれているが実際は人口700万の大都市。



…西宮アジア映画祭の2日目。
韓国映画『ハーモニー』とイラクなどの合作『バビロンの陽光』の上映。
どっちにしようか迷うがヒロが『バビロン』はwowwowですでに録ってあると言う。
韓国に軍配が上がった次第。


最近トシのせいでドライアイだ。
目が乾いてヒリヒリと痛んだりする。
涙成分の目薬を何度もさす。
されど、しばし目薬要らず。


韓流は手加減なし、ですね。
涙腺を刺激する要素を詰め込んである。
あ、この件ではもう十分泣かせていただきました、と遠慮しても容赦なし。
もういっぺん泣きなさいとばかりにたたみかける。
マウントポジションになり両肩をフォールされてなお許してくれない。
さすがの僕も決壊必至。
いつのまにか呼吸が乱れ荒くなっていた。



・韓国や中国の映画を見るときの問題がひとつある。
 役者が誰かに似ているのだ。
 誰だっけか、日本の俳優? 僕の友人?
 考え出すとストーリーに入っていけない。
 それが誰だってわかったとて、だから何? なのですが。
 主人公は『シュリ』のヒロイン、彼女も誰に似ているぁと思いつつ答えが出なかった。
 心優しい若い女性看守は木村多江似だった。
 もう一人の厳格な看守が誰だったか?
 ずっと考えていた。
 見終えてヒロに聞いた。
 辻元清美だった。
 「うち、へこたれへん!」


・韓国の女子刑務所がこんなに自由なのかは知らない。
 音痴が短期間でソロをとれるほど上手くなるかは疑問だ。
 荒唐無稽、あくまでフィクション、そう思っても感動してしまう。
 安っぽいぞ、とブレーキをかけても強烈な洗脳で泣かされてしまう。