ぷよねこ減量日記 2009/5-2016/1

旧ぷよねこ減量日記です。2016年1月に新旧交代してます。

2012/7/11 おまえには心ってもんがねえ

先日、日米の名優が他界した。
奇しくも二人とも享年九十五、大往生でした。
アーネスト・ボーグナインと山田五十鈴、僕が勝手に共通のイメージとして抱いているのは存在の骨太さ。
そして、申し訳ないが「そうでしたか、まだご存命でしたか」という感想。
かつて輝きを放ち、第一線を退いて穏やかに余生を過ごされていたということだろうか。
(本人にとっては不本意であったかもしれない)
もちろんプライベートなことは知らないが理想の人生のたたみ方のように思う。


『北国の帝王』(1973年 ロバート・アルドリッチ監督)は大好きな映画だ。
見たのは大学生の頃、金沢の映画館だった。
夏休みの上映会で名作二本立て、併映は『冒険者たち』だったと記憶する。
     

 
それまでに何度か銀幕で彼の顔は見たことがあった。
一度見たら覚えますよね。
名前と顔が一致し、アーネスト・ボーグナインの名前を刻み込んだのは『北国の帝王』だった。
(リー・マーヴィンはサミュエル・フラーの傑作『最前線物語』でした)
強烈な映画でした。
リー・マーヴィン「列車にただ乗りしてやるぜ」
アーネスト・ボーグナイン「ただ乗りは許さねえ」
見ている僕らにとって両者とも“何の得にもならなりそうもない”ことで命のやりとりをするのだ。
意地とプライドだけ。
命がけのチキンレース、いや「男気ジャンケン」なのだ。
でも、二人とも本気なので緊迫感は半端じゃない。

無慈悲な車掌シャック役のアーニー、こいつが残酷で震えるほど怖かった。
リー・マーヴィンと斧やハンマーで殺し合う死闘を見ながら呼吸が荒くなった。
当時、20歳そこそこだった僕は思った。
この二人、けっこう年寄りなのに滅茶苦茶タフ、爺さんたちケンカ強えええええええ!
考えてみればこの映画の設定では二人とも50そこそこのはずだけど若い僕にとって彼らは老人に思えた。
50そこそこ?
今の自分じゃないか…。


意地と誇りの闘いに異物が迷い込む。
一攫千金、野心の塊のような若い男スモーク(キース・キャラダイン)。
自分の名前を売りたいがためにあらゆる手段を使うという姑息で礼儀知らずの若者。
古い価値観の闘争に新しい価値観がまぎれ込み邪魔をする。
当時の映画によくあるパターン。
このスモークがヘマをして鬼車掌シャックに追い詰められ殺されそうになる。
間一髪で助けたのはリー・マーヴィン。
殺しあいの末、生き残ったリー・マーヴィンが若者に言う。
「二度と近づくな。おまえには心がねえ!」

      


山田五十鈴の舞台は凄かったという。
残念ながら見たことがない。
凛とした反骨。
元NHKのプロデューサーのブログに追悼のエントリーがあった。
「反骨の女優 山田五十鈴さん逝く」 http://nagata-kozo.com/?p=8934


   左翼の俳優・加藤嘉と2度目の結婚をしたとき、「アカくなった」と揶揄されたが、
   彼女はまったくひるまず、こう言い放った。
   「貧困を憎むということがアカというのなら、
    私は生まれたときから、アカもアカ、目の覚めるような真紅」


園遊会か何かで今の天皇に「おいくつになられました?」と聞かれ、
にっこり微笑んで「女優に年齢は関係ございません」と答えた。
「女にトシを聞くものじゃありませんよ」とばかりに。
生涯女優、年齢は関係ない、は彼女の信条だったのでしょう。
口ごたえとも誤解されかねない言葉、天皇だろうが首相だろうが媚びることなく毅然と言い放つ粋。
『幕末太陽傳』で左平次(フランキー堺)が自分を亡き者にしようとした高杉晋作(石原裕次郎)に向かって切った啖呵を思い出した。


  「どうせ旦那がた、百姓、町人からしぼりあげた金で、
   やれ攘夷の勤王のと騒ぎ立ててりゃそれで済むだろうが、
   こちとら町人はそうはいかねえんだい!
   てめえ一人の才覚で世渡りするからにゃ、へへ、首が飛んでも動いてみせまさあ 」


こういう態度をカッコイイと思う価値観が少ずつ失われているように思う。


去年、シネヌーヴォで高峰秀子特集があった。
古本カフェ「ワイルドバンチ」の店主から『流れる』だけは見ておいた方がいいと言われていたことを思い出す。
僕は成瀬作品では『浮雲』を見ただけだった。
山田五十鈴、杉村春子、田中絹代、岡田茉莉子。そして高峰秀子。
幸田文原作『流れる』は未見、DVDを予約しておこう。
予告編 http://www.youtube.com/watch?v=iiqZC5zpTf0
  



…昼過ぎから会議、夕方抜けだして内科クリニックへ行く。
薬をジェネリックにするも期待ほど安くならず。
少ずつでも減らしていく方向で主治医と話し合う。
そのためには体重をあと3キロは落としたい。


パンダの子供が死んだと動物園から記者会見の生中継が入る。
僕にはこのニュースの価値がまったくわからない。
白浜でもパンダは繁殖してるのに上野ばかりが話題になる。
もうパンダはニュースじゃないと思うのだが。


いまだ今回の大津のいじめ自殺事件をこれほどメディアがとりあげるに至ったかがわからない。
学校や教育委員会の不手際は今に始まったわけじゃないし。
今までも小さくだけど新聞にいじめ自殺の記事は絶えず載っていた。
知ってる人教えて下さい。