ぷよねこ減量日記 2009/5-2016/1

旧ぷよねこ減量日記です。2016年1月に新旧交代してます。

2013/6/26 どしゃぶりバタヤン

僕が物心ついた時、すでに田端義夫田端義夫だった。
ギターを水平に抱きかかえて飄々と歌っていた。
誰もあんな歌い方をする人はいなかった。
謡曲全盛の昭和30年代、大人も子供も同じ歌をくちずさむ時代にその人はすでに大御所だった。
幼稚園児の僕も、♪ 赤いそてつの 実もうれるころ と歌っていた。
バタヤンの前にバタヤンなく、バタヤンの後にバタヤンなし。
田端義夫は唯一無二の存在だった。


   オース!


      


『オース!バタヤン』@リーブル神戸 
月初めに梅田のテアトルに行ったが満席立ち見だったバタヤンのドキュメンタリー映画を見る。
急きょ神戸での上映が決まったらしいが、朝10時半からの一日一回限り。
立ち見はしたくないので前日にネットで予約しておく。
ところが今日は朝から大雨警報発令。
雨の日はヒロの機嫌が悪い。
予約してなかったら中止にするところだが二人して出かけましたよ。
てなわけで、どしゃぶりバタヤン、です。


大雨もあってか満席ということはなかった。
5割ほどの席が埋まっていたが神戸は大阪ほどではなかった。
年齢層は…おそらく僕らが最年少かもしれない。


     昭和の初め、紅ショウガで飢えをしのいだ少年は、栄養失調で片目を失明したものの、姉が歌う『赤とんぼ』に光を見出し、
     4,000人のオーディションを勝ち抜いてスター街道を突き進む。
     戦争中は“歌い方が軟弱”と憲兵の弾圧を受けて大阪に逃げ延びるが、3度の空襲に遭遇。奇跡的に一命を取り留めたものの、
     戦後はヒット曲に恵まれず、ドサ回りで辛酸を舐める。
     ところが、やがて天下のツキ男の本領を発揮し始め、突然の大ヒットに加えて、ラスベガスのカジノで大当たり。
     さらに、ブルースマンとして日本で初めて電気ギターを持って歌うスタイルを確立する。
     戦前、戦中、戦後を駆け抜けたその人の名は、バタヤンこと田端義夫
     浜村淳の名調子に乗って第2の故郷、鶴橋で繰り広げられる驚愕のステージ。
     歌に燃え、女に燃えてバタヤンの人生万華鏡がスクリーンに花開く笑劇の音楽ドキュメンタリー。



    


鶴橋の出身小学校の体育館での素朴なステージ。
関係者の証言や昭和50年代のステージ(テレビ番組のビデオ映像)で構成されていく。
テーマ別に、女、歌、戦争、ギター、ラスベガス、などなど。
バタヤンがたっぷり見られたのは良かったのだが映画のつくりが雑で残念だった。
僕ら夫婦は何度も中座のワンマンショーへ行こうと試みてチケットがとれなかったファンなので大画面でのステージが見たかったが肝心の歌が物足りなかった。
ヒロは「大利根月夜」の  ♪ もとをただせば侍そだち 腕は自慢の千葉じこみ  ってとこが聞きたかったのにカットされていて地団駄を踏む。
いっしょに見た老人たちも同じ感想ではなかったか。
わかってへんなあ、と思っていたに違いない。
浪曲のかけ声ではないが、“たっぷり!” と歌が聞きたかったのが本音。
ま、それはNHKのBSプレミアで見ることにしよう。


ナット・キング・コールの「モナリザ」を弾き語りで歌う。
田端義夫のイングリッシュを初めて聞いた。
この歌がいい。
今風に言えば、素晴らし過ぎ。
不意に涙が出た。
この「モナリザ」を聞けただけも1000円払った価値があるというものだ。
続く「島育ち」にも落涙。
僕は島育ちが大好きです。
歌詞に出てくる 奄美大島に多い加那という女性名に萌えます。
バタヤンの歌声や旋律には懐かしい昭和の夏を感じる。


娘さんが言う。
父の歌う童謡とかジャズっぽい歌がいいんですよ、と。
そうなのだ。
僕も以前に「こころね」というアルバムから早春賦をiTune Storeで買った。
バタヤンの早春賦、いいですよ。

こころね

こころね


そして、心にぽつんと波紋を残したのは戦争体験の話。
「戦争はいかんよ。夫婦戦争は、うまくいけば新しい嫁さんをもらえるかもしれないけど」
バタヤンは自分より3つ年若の詩人竹内浩三の詩「骨のうたう」に曲をつけて歌った。
竹内浩三は同じ三重県出身、24歳で戦死した。
同郷同世代への思い。
田畑義夫も両目が見えたら戦場で死んだかもしれない。
ひょんと死ぬ、というリアルさ。


  戦死やあわれ/兵隊の死ぬるや あわれ
  遠い他国で ひょんと死ぬるや
  だまって だれもいないところで/ひょんと死ぬるや
  ふるさとの風や/こいびとの眼や/ひょんと消ゆるや
  国のため/大君のため/死んでしまうや/その心や

               (竹内浩三「骨のうたう」より)


鎮魂の思いをこめて歌う。
バタヤンの声が心に染みる。
立川談志が「バタヤンは下層階級に人気がある」と言った。
下層階級は中国大陸でアリューシャンビルマでフィリピンで南方の島々で真っ先に死んでいった人々だ。
それでもバタヤンは言う。
「いい時代に生まれたと思いますよ。戦前、戦中、戦後を生きてきたんだもの」
バタヤンの歌には苦労を突き抜けた塩っ辛い味わいがあるという。
戦争を知る世代。
この映画を見た年配の方がブログに少し前の歌壇に入選した歌を引いていた。
(この歌の作者は90歳の歌人


   戦争の 体験もなき若者が 憲法変えて 派兵くわだつ  若林義文


「なんで人間同士殺し合わなきゃいけないんだ。戦争はいかん」
バタヤンの言葉が重い。


…映画を見終えて久々にヒロと外食。
昔よく行った生田筋の洋食の店『もん』へ行く。
8年ぶりくらいだろうか。
定番の豚カツ定食とオムライス。
店の人もシェアするのをわかってくれてて小皿や味噌汁を2人分サービスしてくれる。
脂身のないヒレの豚カツは絶品です。
カラリとした揚がり具合、滋味溢れる肉質はどんな豚カツ専門店にも負けない。
オムライスは…ちょっと卵焼きが厚いかも。
こんなんだっけか。
オムライスは「グリル一平」の軍配を上げたい。

   


バタヤンを見て昭和な洋食というのは正しいコースという気がする。
下層階級が街へお出かけ、奮発してレストランで食べる、というイメージ。
そのあたり、僕もヒロも同じように育ってきたのでよくわかる。
たまの贅沢の洋食、それだけに量も多い。
腹一杯になる。
腹ごなしに元町のアーケードを端から端まで歩く。
雨はときおり強くなる。
足を濡らしたくないので革の登山靴を履いてきた。
登山靴でアスファルトを長時間歩くのは辛いな。


3時過ぎに局へ顔を出して明日からの福山出張の準備をする。
帰宅する頃には雨は止んでいた。
阪神西宮駅ABCマートで欲しかったオックスフォードタイプの革靴(茶)が型落ちでダンピングされている。
サマーセールでポイントも2倍なので即購入、3000円割引で4990円だった。
筋トレの日だがアスファルト歩きに疲れてプールにする。
疲れていても水中ウォーキングは気持ちいい。
いや、疲れている時にこそ水の中に入りたい。


…「あまちゃん」を見る。
誰かのツイートに反応する。


  @shioshiohida  そうでした。あの時はアルプスの山やアルムのおんじやペーターやユキちゃんらが出てこなくなってさみしいなあと思ったんだけど
  見てるうちにフランクフルト編も面白くなってきたんだ。クララは出てくるのかな? 
  RT @puninpu: 要はあれだね。東京編はハイジにおけるフランクフルトだね。


眼鏡堂は「あまちゃん」見られないけどボストン出張、チャールズ川沿いをジョギングしたそうな。
激しくジェラシー。