2013/7/16 深呼吸の必要(未)


  


映画のタイトルです。
おそらくこのタイトルでは興行的に期待出来ないだろうけど、僕はいいと思う。
役員会議なんかでお伺いを立てたら、意味がわからん、とすぐさま却下されそうだ。
深呼吸の必要」(2004年 篠原哲雄 監督)をDVDで見た。
正確にはDVDを動画ファイルにコンバートして iPad で見た。


         



2004年にはまだロングブレスダイエットなんて言葉はなかったと思う。
映画の中に主人公の香里奈が深呼吸をするシーンが3回ほどある。
これがいい。
伸びやかな長い手が沖縄の空に大きな弧を描く。
あまり気持ちよさそうなのでポーズボタンを押して僕も深呼吸してみた。
  


深呼吸の必要、のオリジナルは長田弘の詩の題名。
読んだことはない。

深呼吸の必要

深呼吸の必要


こんなストーリーです。


     沖縄のとある離島に、さとうきびをただひたすら刈り取るアルバイト“きび刈り隊”に応募して来た都会暮らしの5人の若者
     ひなみ、修一、加奈子、大輔、悦子が降り立った。「言いたくない事は言わなくてもいい」。
     これが、彼らが1ヶ月余り寝泊まりする平良家の唯ひとつのルール。
     果たして、それぞれに“言いたくない事情”を抱えていた5人は、早速、バイトの常連・田所の指導の下、
     広大な畑の約7万本のさとうきびを刈り始めるが、2月とは言え沖縄の厳しい陽差しの下での慣れない仕事は辛く、
     かつて平良家の隣に住んでいた美鈴と言う強力な助っ人の参加があったものの、
     先輩風を吹かせる田所への反発もあり、一向に作業の能率は上がらない。
     そんな中、大事件が起こった。
     嵐の晩、港へ出掛けた田所が運転を誤って脚に大怪我を負ってしまったのだ。
     離島ゆえに医者はいない。とその時、実は医者であった修一が執刀を決意した。
     手術は成功した。そして、このことで絆を深めた7人は力を合わせ、期日までに全てのさとうきびを刈るのであった。


                                             (Movie Walker の紹介文より)



上記の紹介文、間違ってはいないのだけど映画のイメージとは遠く感じてしまう。
こうして読むと安っぽいテレビドラマシリーズのようなんだけど実際にはもっと淡々とした印象がある。
大事件とか、秘密の告白合戦とか、恋愛沙汰とか、そういう派手でワチャワチャした展開はない。
紹介文を読んだだけなら僕はスルーしていただろう。
MASOONさんがたまたまBS1で放送してたのを見て紹介してもらったのだ。
そもそもMASOONさんも川本三郎の「映画は呼んでいる」を読んで見ようと思ったとのこと。
こういう旧作との出会いも悪くない。
ちなみにMASOONさんの沖縄もの映画ベスト3は「ナビィの恋」「夏の妹」、そして「深呼吸の必要」だそうな。
「ナヴィの恋」は僕も大好きな映画だ。栗田ひろみの「夏の妹」は未見。


さて「深呼吸の必要」です。
僕からもお薦めです。
プールへ行ったあとのようなさわやかな気分になれました。
もちろん感性には誤差があるので消化不良だと不満を訴える人もいるでしょうけど。
僕は食べ物は濃厚系ですが感情表現やメッセージはほどよく薄味が好みなのです。
実にシンプルな映画で、舞台は沖縄の離島、ロケ地は宮古島と沖永良部らしい。
映画の、おそらく8割以上のシーンは彼らが働くさとうきび畑と寝泊まりする農家で撮影されている。
ちょっとしたドキュメンタリーに近い。
映画はこんなふうに普通に撮ればいいんだ、と思う。
シナリオがいいのだろう。
自分が必要な人間だと思わせるシナリオは秀逸 。
おそらく島へやって来た5人は誰にも必要とされていないと失望していたのだと思う。
少しずつ少しずつ自分を必要だと思わせるエピソードや台詞が重ねられていく。
それが自然なのだ。
もちろん突っ込みどころは沢山あるけど、僕はそういうことに寛容だ。
香里奈や谷原や長澤まさみが出てるのに色恋沙汰が全く無い。
いや実際にはあるのかもしれないが、目線とか表情だけでアクションには至らない。
観客の想像にまかせている。
思わせぶりな演出さえ無い。 
青春映画としてはかなり珍しい。
こういう抑制された感じは嫌いではない。


主演は香里奈さんだけどあまり主演という感じはしない。
物語の語り手でもない。
どちらかというと5人の中では一番地味な娘だ。
別の意味でおおげさに地味なのは長澤まさみだけど、香里奈はあまり主張しないという意味で地味。
彼女はをスクリーンで見たのは「しゃべれどもしゃべれども」だった。
調べると2007年の映画、彼女にとってこの「深呼吸の必要」がデビュー作のようだ。
こういう激しい感情のない主役ってのは意外に難しいんじゃないかな。
演出がいいのだろうか、肩を張らない演技が自然でいい。


農家の手伝いを援農と呼ぶらしい。
ヒロの知り合いの娘さんが援農のバイトで全国各地をまわっていると聞いたことがある。
冬は南大東島さとうきび、夏は長野や群馬でレタス、みたいな援農渡り鳥。
映画に登場する大森南朋も北海道から沖縄へと援農で一年を過ごしている。
石垣島のミネーロもいわば自分の農場を持たない援農プロレタリアだ。


思い出した。
農家に寝泊まりして収穫を手伝うといえば僕にも経験があるぞ。
学生時代、夏休みにスイカのバイトをした。
金沢の海沿いに砂丘地帯があり、広大なスイカ畑が広がっていた。
援農という言葉はまだなかったと思う。
重労働だったけど3食つきでお金も貯まった。
1978年くらいだったろうか。
ある農家に2週間ほど泊まりこんだ。
夜明けに起きてスイカを収穫し、炎天下の昼間は休んで夕方また働く。
いっしょに住みこんだのは大学の寮の後輩で会津の農家のせがれだった。
彼が屈強でよく働いた。
(続く)




バイトたちが島に着いたとき、おじいが言う。
「遠いとこ、よく来たね。ありがとう。」
そりゃ香里奈長澤まさみが来たら嬉しいだろ。
と、終止じいじい目線の僕でした。