ぷよねこ減量日記 2009/5-2016/1

旧ぷよねこ減量日記です。2016年1月に新旧交代してます。

2011/8/20 威風堂々

長い旅の果てに、
二つのチームだけが、
たどりつくことができる場所。
全国高校野球選手権大会 決勝 光星学院(青森)vs 日大三高西東京)。


この夏、最後の試合でヒーローになった背番号9、守備位置で威風堂々。


甲子園まで2マイル。
決勝戦をライトスタンドで見た。
夏の決勝を生で見るのは初めての体験だった。
試合前、守備練習をする両チームを見ているだけで目頭が熱くなった。
よくぞここまで来たな、と感無量になる。
“特別な夏”のフィナーレのこれは特別な試合。
外野スタンドからでも選手たちが発するオーラを感じることができる。
不思議なことに、それは大勝負の前の張り詰めた緊張感ではなく、
ゴール後のビクトリーランのような清々しさなのだった。


7月、青森の駅前ホテルで出会った光星学園の父兄の上気した顔を思い出す。
兵庫県決勝での東洋大姫路加古川北の2日に渡る死闘を思い出す。
『福島の特別な夏』で読んだ聖光学院のエース歳内の快刀乱麻を思い出す。
勝てば校歌のかわりに「栄冠」を歌うことになっていた相双連合の無念を思い出す。
そして、島根のジャイアンの巨体を、広島のせんとくんの涙を、聖光ベンチの18番を思い出す。
いま、ノックを受ける選手たちを見ながら、僕の頭の中にエルガーの『威風堂々』が流れる。
http://www.youtube.com/watch?v=Y9-5nVkqdy8


いま、全国を単純に二分することが出来る。
光星学院につながる水脈と日大三高につながる水脈。
一度も負けていないのは日本全国で今この場所にいる2チームだけ。
その他全ての高校は、どちらかの高校に敗れた高校に敗れた高校に敗れた……高校となる。
ノックアウト形式の勝ち抜き戦、
選手権(チャンピオンシップ)は戦国時代を思わせるぞっとするようなシステムだ。


青森大会無敗で甲子園に来た光星学院は、先ず熊本を制してきた専大玉名を下した。
徳島を制してきた徳島商は茨城の覇者 藤代に勝つ。光星学院はその徳島商を1点差で破る。
この時点で光星学院は青森、熊本、徳島、茨城を傘下に治め次なる敵と相対する。
実際にはそんなものを背負い込んで闘ってるわけではない。
見ている者の思い入れ、高校野球ファンの勝手な想像に過ぎない。
そんなふうに僕はこの一戦の価値をドラマチックにしたいだけなのだ。


うす曇り、浜風とは逆の微風。
光星 秋田投手が第一球を投げる。
ストライクのコールと同時にサイレンが鳴り響く。
青森 対 西東京、その実、浪花ボーイズ vs 京浜ボーイズ、
やんちゃな野球少年たちの、この夏 最後の試合。
被災地への思いだの、優勝候補大本命だの、
大人の思惑なんて忘れて、思いっきり暴れてやれ、と思う。


以下、僕のつぶやき(ツイッター風)で試合を追います。


 初回、光星学院の攻撃、3人とも外野へ大飛球を放つ。
 日大三高のエース吉永は三連投で疲れているとの情報、惨劇の予感。
 しかし、外野手の守備位置がいい。三者凡退なのだ。


 その直後の日大三高、ファーストゴロがイレギュラーしてヒットになる。
 ツキは日大三高か。


 2回、光星学院 6番金山がレフト線へ大飛球! で、でかい!
 ファウルになったが3塁アルプスの上段、なんでコイツが6番なんだ?


 3回の日大三高、ツキがある。
 光星学院にとっては不運な打球が多いような気がする。
 内野守備もいつもと違うような気がする。


 ツキがない、と書いたら日大三高にバックスクリーンに3点本塁打
 強力打線にヒットが続く。来るのかビッグイニング
 


 先制スリーランの高山がライトの守備位置につく。
 1塁アルプスから大歓声! なんて起こるはずないよな。
 それにしてもデカイな高山。


 甲子園に満員通知が出た。


 光星学院、1番澤がヒットで出塁するも、キャッチャーのけん制球でアウト!
 さわああああ…!


 ライトの守備位置に澤がつく。心なしか帽子を目深にしてるような。
 さわあ、胸を張れ!


 光星学院の内野、悪送球やファンブルが多い。
 県大会で一つもエラーしなかった内野なのに…重圧か。


 光星学院チャンス!日大三高の内野がマウンドに集まる。
 こら! 高山、 守備位置でしゃがむな!


 なーんてつぶやいたら、その高山がレーザー捕殺!
 まいった。


 ちゃんと野球できてるのは日大三高光星学院はいつもと違う。
 ちゃんとやろう、これだな。
 高校野球終わったら僕もちゃんとやろ。


 5回終わりはがビジョンに注目。
 この夏最後の「栄冠は君に輝く


 7回、ここまで耐えてきた秋田が連打される。エースがついに決壊。
 光星びいきのライトスタンドも沈黙せざるを得ない。


 澤くん、辛いなあ。


 小走りに高山くんが守備位置につく。
 回を追うごとに181センチの身体がさらに、そして確実に大きくなっていく。


 優勝するという準備と覚悟が日大三高にはあって光星学院には無かったのかもしれない。


 光星学院のレフト交代で天久くんが守備位置につく。
 石垣島出身の2年、よくぞ15歳で青森へ来た、と思う。
 ちばりよ!


 光星無念、僕もそろそろ甲子園を辞さないといけません。最後まで諦めるな!


 帰りがけ、記念グッズのショップで全出場校ネーム入りのスポーツタオルを買った。


 ヒロからメールが入る。
 甲子園からの帰り道、関西スーパーで買い物を頼まれる。
 「アスパラ100円、ピーマン88円、まきばの空(牛乳)168円、水2リットル1本。」


 (ここからはテレビの前)
 9回、光星学院、ツーアウトランナーなし。優勝まであとひとり。
 代打は荒屋敷くん、数少ない青森出身者、青森大会出場なし。
 最後はこいつで、と仲井監督は決めていたのだろうか。
 白いユニフォームの背番号12が打席に入る。

 
  

 
  


  


 
…午後から出社、ニュースデスク
雨中のサッカー2試合と高校野球決勝の3項目。
奇しくもパリーグ斎藤佑樹田中将大が勝利投手となった。
最後に粘られはしたがマー君の気迫は鬼気迫るものがあった。


朝は甲子園、午後からは仕事の長い一日が終わる。
京橋周辺は黄色のTシャツであふれている。
深夜1時過ぎ、タクシーで帰宅。

2011/8/20 甲子園

西宮も急に涼しくなりました。
数日前まで毎日見かけた県外ナンバーの応援バスも姿を消し淋しくなりました。
嫁はバスを見るたびに「かわいそうに、あの高校負けちゃうよ」と言います。
自分が見た学校は必ず負ける。
悪い兆候のようにそう思いこんでいます。
負けない高校はたった一つなのにね。


この夏の甲子園を積極的に楽しみました。
自宅から2マイル、自転車で10分ちょっと。
スタンドへ足を運ぶこと8回。
開会式(左翼席)、聖光学院-日南学園(一塁内野席)、静岡-習志野(右翼席)、
古川工業-唐津商業(アルプス席)、日本文理-日大三高(一塁内野席)、
金沢-習志野(左翼席)、智弁学園-横浜(右翼席)、
そして、決勝の光星学院-日大三高(右翼席)
身内が出場しているわけでもないのに全出場校の入ったタオルまで買ってしまった。



毎日、巻き起こった奇跡、その興奮、歓喜、落胆はその都度この日記に書きました。
現場で試合を見て感動するにはちょっとしたテクニックがあるのだということも知りました。
遠いライトスタンドから感情移入するには背番号9の選手に思いを重ねること。
アウトをとるたびに、ランナーが出るたびに、彼の気持ちが動くのがわかるようになる。
1アウト、ランナー3塁、バックホームに備える彼の鼓動に僕の心臓が感応する。
フライが来るか、1-2塁間を抜けてくるか、 呼吸が荒くなる。
さあ、来い!
僕は気合いを入れる。


表現は悪いけど、僕らファンは感動にただ乗りしてるのです。
決して、もう、自分が当事者になることのない哀しさを宿し、
砂まみれの少年たちに感情を共鳴させているに過ぎない。




「甲子園」というフォークソングがあります。
おそらく20年以上前のアルバムに入っていた曲。


  喫茶店のテレビでは夏の甲子園
  準決勝の熱気が店のクーラーと戦ってる
  
君は、男はみな野球好きね、と笑い
  大観衆の声援聞くだけで私は暑さがつのるわ
  
負けた人は今これを観ているのかしら

  それともまた来年を夢みているかしらとソーダ水
  多分君は知らない
  「この次」なんて言葉に
期待しない男は案外多いって事をね



  「ホームラン!」と突然テレビが叫ぶ

  また誰かの夢がこわれる音がする
  
僕はふと君との来年を思う

  故郷ゆきのチケット
二枚握りしめたままで


  


青春のドラマですね、と解説者
  
文字だけのニュース速報が海辺の事故を伝えている
  
君は、女はいつも男が演じるドラマを
 
  手に汗握り、見つめるだけなんて割に合わないわ、と溜息

  3000幾つの参加チームの中で
  たったの一度も負けないチームはひとつだけ

  でも多分君は知ってる 
  敗れて消えたチームも 
負けた回数はたったの一度だけだって事をね



  「あと一人!」と突然テレビが叫ぶ

  君は僕を見つめ涙をこぼしてる
  
背番号14の白いユニフォームが
  
彼の青春の最初で
最后の打席に入ったところ


                        (さだまさし「甲子園」)


   また誰かの夢がこわれる音がする


八幡商業の遠藤選手のバットが残した快音と歓声と悲鳴がよみがえります。


   背番号14の白いユニフォームが彼の青春の最初で最后の打席に入ったところ


決勝の9回ツーアウト、光星学院の代打 荒屋敷選手の12番が目に浮かびます。


ことし一度も負けなかったのは日大三高でした。
畦上主将が、高山選手が、鈴木捕手が甲子園に描いたアーチを目の当たりにしました。
強打の10点打線、彼らはどこよりもちゃんと野球をしたチームでした。
僕も、ちゃんと、自分の人生をやりましょう。
明日から、ぷよねこは通常営業です。