前々から見たかった映画を神戸へ見に行く。
『昼下がり、ローマの恋』@リーブル神戸
ポイントが貯まっているので無料で見られるが水曜日は性別問わず1000円、払って見ることにする。
およそ70人くらいと意外にも混んでいた。
やはり1000円のサービスデー、普段は20人前後なのにね。
イタリア映画を見るのは去年1月の『シチリア・シチリア』以来だ。
若い頃、少なくとも80年代まではイタリア映画はもっと身近だった。
デ・シーカ、アントニオーニ、ヴィスコンティ、フェリーニ、ベルトリッチ、ロッセリーニ、オルミ、
それ以降も、タヴィアーニ兄弟、エットーレ・スコラ、ジュゼッペ・トルナトーレ、ロベルト・ベリーニら。
一番好きな映画はベルトリッチの『1900年』とスコラの『マカロニ』だ。
イタリア人監督じゃないけど『イル・ポスティーノ』もいい。
『1900年』は映画館で2度見た。
1900年生まれの二人の男の生涯を描いた5時間を超える超大作、でも全然飽きなかった。
デ・ニーロ、ドパルデュー、サザーランド、女優陣も素晴らしくドミニク・サンダ、
アニダ・ヴァッリ、そしてステファニア・サンドレッリ!
『マカロニ』は3度見た。
サントラのLPを買って毎日のように聞いていた。
主演はマストロヤンニとジャック・レモン。
イタリアにやってきたアメリカ人とイタリア人のコンビは今回の映画と同じ設定だ。
ジャック・レモン主演のビリー・ワイルダー作品にも似たような人物設定があったような。
『昼下がり、ローマの恋』という眠い邦題だが原題はたぶん「3つの恋愛マニュアル」という意味だろうか。
ネット情報によると『イタリア的、恋愛マニュアル』という映画の続編らしい。
上映時間が2時間でエピソードが3つ、主人公は同じアパートの住人なので少しずつカブって登場する。
狂言廻しの少年(多分、恋のキューピッド)がいて、それぞれの物語にサブタイトルがある。
最初が「青年の恋」(だったかな?)、次が「中年の恋」、最後が「熟年の恋」です。
どれもイタリアンテイストな大人のいい女が登場します。
たとえば、モニカ・ベルッチとか。
どのエピソードも女の方からかなりエロティックな誘いをかけてくることが決まりになっているようです。
女の映画じゃなくおじさんのための映画。
真っ当な男ならかなりの確率で幸福な時間を過ごせる。
映画を見て良かったと思うはずです。
「青年の恋」の舞台はトスカーナの田舎町。
主人公が仕事で出張、フィアンセと毎晩ノートパソコンのスカイプでテレビ電話をする。
舞台は思いっきりイタリア映画的だけどこういう小道具で21世紀の話だとわかる。
弁護士の青年と悪魔的な魅力の人妻との火遊びのような恋。
初夏のそよ風のようなさわやかな喪失感がどこか懐かしい。
「中年の恋」の主人公はローマのニュースキャスターの男。
若造りしているが実はズラ男(どこかで聞いたような)、物語の中で強制的にカミングアウトします。
一転してホラー映画のテイスト、ドキドキさせて飽きさせない。
この映画のメイン料理はキャスティング的にも最後の「熟年の恋」でしょう。
男は元ボストン大学教授、おそらく65歳くらいのアメリカ人(出自はイタリア)という設定。
引退してイタリア人の友人が管理するアパートで余生を過ごそうとローマに移住してきた。
女はその友人の娘、設定は40歳。しばらくパリの有名企業で働いてローマへ帰ってきたが、実はストリッパーで借金まみれ。
ロバート・デ・ニーロとモニカ・ベルッチ!
二人を知ってる人は、いやモニカ・ベルッチを知ってるおじさんは、絶対見たくなるでしょ?
この映画に関してはノーマークだった。
巡回購読しているブログ「特別な一日」でレビューがアップされていたのが見ようと思ったきっかけ。
思えば『50/50』『最高の人生をあなたと』もそうだった。
言わば「“特別な一日”コレクション」あるいは「“特別な一日”座からの招待状」だ。
ブログのタイトルにされている『特別な一日 Una giornata particolare 』もイタリア映画のタイトルらしい。
マストロヤンニとソフィア・ローレン主演、しかも、エットーレ・スコラ監督作品。
残念ながら未見、何とかしていつかは見たいと思う。
「いくつになっても人間ってやつは」と題された映画レビューは素晴らしい。
http://d.hatena.ne.jp/SPYBOY/20120227/1330340276
モニカ・ベルッチが目の前に現れたら、引退していようがいまいが人格もポリシーも変わるのはしょうがない(笑)。
そこがいいんだよ! 人間だから。
色紙にしたくなる(笑)。
締めの文章が奮ってて、思わず拍手したくなった。
この映画はとにかく、登場人物が生き生きしてるのが印象的。
いい加減だったり、間抜けだったり、頑固だったり、うそつきだったり、適当だったりするけど、みんな自分に対して正直だ。
終盤 『幾つになっても恋はできる』というモノローグがでてくるが、デ・ニーロは67歳、モニカ・ベルッチは47歳、
そういう年代のラブストーリーを当たり前のように作ってしまうところが、ヨーロッパ映画の良いところ。
愛だの恋だの命だのって、チャラチャラしたお子ちゃまのロマンスなんて見てられるか(笑)。
この年代だったらこう、こういう職業の人はこう、男だったらこう、女だったらこう、という風に人を枠にはめない、
大げさに言うと人間っていうものを限定しないところが大好きだ。
ま、普段 自分のことになると、なかなか、そうは思えないんですけどね(泣)。
仮にも人生にモニカ・ベルッチに匹敵する女性が関わってくることがあれば僕は想像するだけでいい。
イタリア的人生やイタリア式恋愛とはかけはなれた我が身の草食的日和見人生を思い知る。
人生讃歌の映画を見た後でなぜか哀しい思いをする…。
映画でローマやトスカーナの空気を堪能した。
とりたてて意識はしてなかったのにローマには3度行った。
21歳、28歳、32歳のときだ。
前の2回はトレビの泉にコインを投げた。
32歳のときは、もういいや、と投げてなかったように思う。
あれから20年以上が経つ。
再びローマに戻ることが出来ないのはそのせいだ。