ドアを開けたら六甲山が笑っていた。
緑萌える山を俳句の季語で「山笑う」という。
こんな日は年に数回しかない。
お山に行きたいね、とヒロが言う。
ごめん、今日も明日も仕事だ。
初夏、文字に書きたい季節。
はつなつ、声に出したい季節。
外科クリニックからの帰りに夙川から海まで散歩した。
海沿いのニセアカシアの花が満開。
初夏の日差しでいっきに開花が進んだのだろう。
ことしは当たり年のような気がする。
あたりに石けんのような清潔感ある香りが漂う。
初夏は匂う花が多い。
海岸にフレンチラベンダーが咲く。
紅いハマナスが咲く。
月見草も咲く。
かなしいかな今日も明日も仕事です。
かぜとなりたや
はつなつのかぜとなりたや
かのひとのまへにはだかり
かのひとのうしろよりふく
はつなつのはつなつの
かぜとなりたや
(川上澄生「初夏の風」 1926年)
「初夏の晴れた空に夢のしたたりのように、あちこちに咲き迸るマロニエの花」
(岡本 かの子/母子叙情 より )
人生下り坂、急ぐことはない、
あわてて転けたりしないでね。