日本カーリング選手権 2006/3/3

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(松本ホテル花月にて)
6時過ぎに起床。
きれいな大浴場で朝風呂を浴びる。晴れて松本盆地を囲むアルプスが見渡せる。
松本のホテルに泊まってこんな贅沢な気分が味わえるなんて思わなかった。
さあ、遅れている仕事を片づけてしまおう。 
発注メールは書けたがこのパワーブックに送るべきアドレスがない…。

松本城へ寄り道して駅レンタカーへ歩く。
残念ながらアルプスに雲がかかってきた。
9月に行ったロイネットのあるビルの「すかいらーく」で朝食。
前回は変な席に案内されたので今回は意を決して窓際の席に陣取る。
こういう店には携帯電話で傍若無人に話す男が必ずいるよなあ。
ここにもいたよ。
彼の感性には、携帯で大声で話すことがマナーに反しているという、
という意識は全くないのだろうなあ。
おお、何だか説教し始めたぞ。
お恥ずかしいことに、関西弁だし。

…今回のレンタカーはMatsudaのデミオ。
12時間で6700円(スタッドレスタイヤ着装)
このナビが長野道(高速)に乗せよう乗せようと誘導する。
宿の人に聞いたら三才山トンネルを抜けたら軽井沢まで1時間半だという。
ナビを無視して山越えする。
峠の樹氷がはっとするほど美しい。
店主か日帰りで来るという旨の電話が入る。
一路、軽井沢駅へ向かう。
残念、浅間山は雲に覆われている。

11時過ぎに軽井沢駅に着く。
東京から来た店主と立ち食い蕎麦の昼食。
会場のスカップ軽井沢へ向かう。
1998年 思い出の長野オリンピック カーリング会場であります。
(実際には練習会場だったらしい。競技会場は同じ公園内にある風越公園アリーナ)
日本の若きスキップ敦賀クンの涙するシーンを思い出します。
長野五輪から8年、なんだか遠い昔のような気がする。

アリーナやテニスコートなどの総合施設 「軽井沢風越公園」、
スカップ軽井沢は公園内に、つつましく控えめに在った。
五輪マークがなければ何かの倉庫のような地味な建屋。
ここで、今まさにブームとなっているカーリングの日本選手権が開催中なのだ。

店主「お、カーラーたちが煙草吸ってますよ」
玄関で選手たちが灰皿を囲んで煙草を吸っている。
アスリートらしからぬ、おっさん然とした雰囲気を漂わせている。
地域の草野球大会に借り出された会社の仲間のようだ。
とても日本の頂点を決める大会とは思えない。

素人っぽい(好感の持てるという意味)プレス受付を済ませる。
一日3試合行われるうちの2試合目が始まろうとしている。
報道陣は見渡すところ僕らしかいない。
大会は3日目、まだ予選だからだろうか。
観戦する客らしき人々も…ほとんど見あたらない。
チーム関係者がちらほら。のどかなゆるーい雰囲気です。
毎年、但馬ドームで開かれる障害者野球の日本選手権に似た感じだが
障害者野球の方は報道関係者や地方からの応援団で結構賑わう。
でも、目の前のこれは、オリンピック競技の日本選手権なのだ。
カーリングブームとは言われても実際のところ、これが現実だ。

決勝になれば報道陣や観客は集まるのだろうか?
僕もいろいろなマイナースポーツの会場を見ているので
ある程度の想定はしていたが、現実は想定を越えていた。
これまでオリンピック代表が決まる年以外は、ひっそりと行われていたのだろう。
(他にもそんな競技はあるのだろうけどね)

日本選手権は今年で23回目。
パンフレットによると1984年(ロサンゼルス五輪の年)から始まっている。
第一回の会場は真駒内アイスアリーナ、優勝はレッドパジャマという北海道のチーム。
第18回の女子優勝はシムソンズ、一昨年の優勝はフォルティウス、今回のトリノ代表だ。

さっそく試合観戦。
とはいっても観客席はほとんどない。
縦位置に3段の仮設のスタンドがあるだけ。
その最後列はコーチ席となっているが、ほとんどのチームが選手兼任だから人もまばら。
4つのシートで同時に試合開始、主審とかがいるわけではないので
選手同士が挨拶して勝手に試合は始まる。
あれ、もう投げるの?って感じだ。

注目したのは現在二連覇中の常呂協会とその前に4連覇しているチーム浅間の対戦。
男子もまた常呂町と長野の二大勢力が競い合っている。予選では屈指の好カードだ。
常呂協会のエースは28歳になった敦賀信人、
日本でカーリングと言えば彼しか思いつかない。
その彼が8年前に涙を流した同じ舞台でスキップを務めている。

以下、実際のカーリングの試合を観ての感想…

意外に展開が早い。
テレビ中継ではゆったりと感じられるが制限時間があるために
素早く、次なるターゲットを決めなければならない。
うーん、これはどーするのかな、なんて考えているともうストーンが滑っている。

テレビでは映像を選択してじっくり見せてくれるからだろう。
(たとえば天井カメラを長く見せてくれる)
現場では見るモノを自分で選択しなければいけない。
材料は多いが判断材料にするほど見る目が養われていない。
これは他のスポーツでも言えること。

知ってはいたのだが、生で見ると44メートルはけっこう長い。
よほど習熟しないと距離感がつかめないだろう。
ヒットさせるショットより、置くショット(ドロー)は緊張を強いられる。
予想以上に神経を消耗させる。

ウォーコールも、イエスコールも、声のでかいスキップがいて
隣のスイーパーはうるさいだろうなあ、自分らのスキップコールが聞こえないのでは?
敦賀クンは淡々とコール、しかし、ここぞと言うときには激しい。
さすが名スキップ、タクト裁きもメリハリが効いている。

これも知識として知ってはいたのだが、
エンドごとにハウスが入れ替わる。
縦位置で見ていると(そこしかスタンドは無いのだが)偶数エンドしかハウスがめ見えない。
ずっとこっち側のハウスでやってよ、と思う。

カーリングは氷上をストーンが滑る「音」の競技だ。
大量点差でギブアップした試合でストーンを一カ所に集めるときにもの凄い轟音となる。
ジャンボ旅客機が通過しているかのよう。

コーチ席にノートパソコンでスコアをつけている選手がいる。
カナダから取り寄せたスコア用のソフトで瞬時にしてその選手のショットの成功率も出る。
彼はずっとイアホンで音楽を聴いたり、携帯メールをしながらスコアをつける。
選手との交信なのかな、とも思ったがその様子もない。(それは禁じられている)
チームメートが日本選手権を戦っているという緊張感は無い。
決して体育会ではない、文化祭系だ。

もう一人のコーチ役の眼鏡をかけた人に話を聞く。
(話しかけた時には彼がコーチだとは知らなかった)
話しているうちに、ああ、この人常呂町のコーチなんだあ、とわかってくる。
おお、対戦中のコーチと雑談なんてしてしまった。
ラグビーやサッカーでは考えられない。

その常呂協会のコーチ平間さんが言うには、
目の前で試合をしている常呂協会が4月ボストンで行われる世界選手権へ出場するという。
オリンピックを見ても世界との差を感じた、
カナダなどはショットの正確さ、ウエイトジャッジ、さらにスイープ力が格段に違うという、
(それでも稀に勝てることがあるのがカーリングの魅力でもあるらしい)
世界選手権出場が決まって、チームはカナダへ合宿に行った、
すでに中国や韓国が合宿を張っていた、
彼らは二ヶ月間の合宿、日本はみんなの仕事の都合を合わせてようやく2週間、
中国や韓国の選手に、あれ、もう帰っちゃうの、という感じで見られた、
この二国ともカーリング強化で選手はカーリングだけすれば良いという、
ついで台湾も選手を集めているが、これはカナダ在住の台湾人ばかりのチームらしい、
練習環境は日本より数段に恵まれている、
ボストンの目標は?
日本はまだ2回か、3回しか出たこと無いんですよ、
12試合するので、一つは勝ちたい、出来れば2勝、3勝…。

目の前の試合は第9エンドにチーム浅間に1点を取らされた形となった常呂協会が
最終エンドに2点とられて危うく逆転負け?という展開。
ここでトリノ五輪でも見たでっかいコンパスのようなメジャーが登場する。
常呂協会のストーンがナンバーツーと判断されてタイブレークに突入。
第11エンド、常呂がミスショットが連発する。
さきほどメジャーで測った際にセンターに穴が空いてしまったらしい。
まあ、これは両チーム同じハンディということで試合続行。
敦賀クンのラストストーンも届かずチーム浅間が勝利。
予選1位を確実なものにする。

常呂協会は朝の試合で東京農大にも敗れているので不覚の連敗!
終了後、敦賀さんに話を聞く。
結婚して子供もいる敦賀さん、冬は朝から牡蠣の加工などの仕事、
カーリングの練習は夕方4時過ぎから、
夜はさらにカーリング教室やジュニアの指導もしている。
かなりのハードスケジュールです。
仕事の都合で彼はカナダ合宿には行けなかったとか。

インタビューが終わったあと、平間コーチと話をする。
敦賀さんは合宿行けなかったんですねえ、
そうです、
スキップが参加しないと練習に支障はないですか?
スキップはオーミヤがいますから、
え ???

そうなのだ。
勉強不足です。失礼しました。
この日本選手権には出場していないがボストンの世界選手権に出場するチーム、
スキップは近江谷好幸という47歳のベテランの選手だそうだ。
近江谷という名前は僕でさえカーリングの記事で目にしたことはある。
オーミヤと読むというのは知らなかったが…。
(あとで調べると長野五輪のセカンドだった選手で、日本カーリング界では有名な人、
 あの有名なシムソンズのコーチとしてソルトレイク出場、娘さんもカーリングの選手。)
日本選手権になぜ近江谷さんが出場していないのかを聞くのを失念した。(ドジ)
もしかしたら…カーリングの役員をしているのでトリノに行ってたのかも?

とにかく、敦賀クンは近年スキップでなく「チーム近江谷」のサードを務めているそうです。

勉強不足で申し訳ありません。
そんな僕にも平間さんたちはやさしく教えてくれました。
居直れば、そんなカーリング事情も含めて聞きたかったのですが。
日本選手権の本番のときに申し訳ない。

でも、青森で来週開催の女子の日本選手権。
あのトリノ代表の5人、「フォルティウス」も出場予定らしい。
こっちにはもっと何も知らない東京の記者やリポーター、
傍若無人のテレビカメラがお邪魔するかもしれません。

軽井沢で日本カーリング選手権の現場を見た総評。
みんながガツガツしなくとも、カーリングのようなのどかな競技もあっていいじゃない、
と僕なんかは思ってしまうのですが…。
オリンピック競技になってしまった以上、のんびり、牧歌的ではいられないのだろう。
トップクラスが向上していかないと底辺も拡がらない。
経済活動と同じで、すでに動き始めてしまったのだ。
競技母体を進歩、拡大、再生産していかないと未来もない。
楽しんでやっている環境の現状維持も困難になる。
好きな仲間だけで、やりたいようにやるから、は通用しなくなってきている。

カーリングに関わる人々が
今後、いかに戦略的に未来を見据えて強化費を集められるか、
強くなる環境をゲット出来るかあるいは政治的に動けるか、にかかっている。
カーリングの選手は別に仕事もあるし普通の人だ。
オリンピックはほとんどがそんな選手の競技の場だった。
金メダルを獲って帰国しても、翌週からは通常勤務に戻っていくのが普通だった。
いつからか新たな商品価値が見いだされ、メダルを獲るためだけに
ステートアマやプロフェッショナルが席巻する大会となってしまった。
トリノ代表の小野寺や林は青森のカーリング場の職員で練習時間には恵まれているだろう。
他の二人も比較的自由な学生、だから出場権を得られたというのもある。
忙しい漁師の敦賀さんはこれからカーリングの競技選手としてどうなるのだろう? 
スキップをはずれるに当たってカーリングを続けるに当たって、
いろんな悩みがあったのだろうなあ。


そんな目線とは別に思うこと。
スカップ軽井沢みたいなシートで試合やってみたいなあ。
カーリングはやっぱり自分でやった方が楽しいのかもしれない。
あるいは、カナダのパブあたりで世界トップの対戦を
地ビールでも飲みながらテレビ観戦してみたいなあ。
出来れば小林さんの解説付きで。

…スカップ軽井沢からの帰り、雲が払われ浅間山が全容を現す。
店主と軽井沢駅の南にあるアウトレットモールで珈琲を飲み松本へ戻る。
上信越道と長野自動車道で帰るがさすがに距離が長い。
運転は苦手なのでけっこう疲れました。

宿のお風呂で疲れを癒す。
この「深志の湯」いいよ。
肌がすべすべする。

本日も「山女や」へ日参。
客同士の会話で、この店予約なしではなかなか座れない、と有名な店のようだ。
一人なのでカウンター席の隙間にもぐりこめたのだ。
今夜も星空。